〔更新履歴:12/9用語訂正〕
今回は、気分が乗らないときのガッテン頼みでいこう。
(A) 関連する大衆の誤認誘導効果を有する報道の類型
今回紹介する放送内容に関連するのは、
・ある病気(現象)は冷えが原因であることをことさらに強調して報道するパターン
及び
・ある病気(現象)は老化が原因であることをことさらに強調して報道するパターン
で、ここでの「ある病気(現象)」とは、骨折(あるいは転倒)を想定している。
前者については、下痢などの症状を「節電反動冷え」として紹介した報道に関する以前の記事(ココ)で触れたパターンに、後者は、骨粗しょう症の報道に関する以前の記事(ココ)で触れたパターンに類似しているといえるだろう。
(B) 放送内容
NHKの同番組のサイトから、
40代からすでに危険! 転倒死をホントに防ぐ
2012年12月05日放送
http://www9.nhk.or.jp/gatten/archives/P20121205.html
年間7000人を上回る人が命を落とす転倒事故。その死者数はいまや交通事故を上回っています。
ためしてガッテンでもこれまで何度も転倒を取り上げており、その原因として「筋力低下」や「注意力低下」などを指摘しました。今回、転倒事故の原因をさらに詳しく調べてみると、思いもよらない意外な原因が見つかりました。
その手がかりとなるのが「女性」「歩く」という転倒とは結びつきそうにない2つの言葉。しかし、私たちが転んでしまうメカニズムと深く関係していたのです。できれば誰もが遭いたくない 転倒事故。そのホントの原因をお伝えします。
これは、上記URLの記事の冒頭部分なのだが、この放送内容の背景として、最近転倒が増えているとも理解できる次の指摘がある。同記事から、
街頭でみなさんにお話を聞くと本当にたくさんの方が筋トレやストレッチ、ウオーキングなどの転倒対策を していました。でもそのわりには「全く転ばない」と答えた人は非常に少なく、むしろ転ぶ回数が最近増えていると答えた方がほとんどでした。
上記記事を読んでみて個人的に理解したところでは、このような転倒は、メカノレセプターの機能低下に由来するもので、それは主に
(a) 足の冷えによるバランス力の低下
(b) 加齢による歩行時の足の高さのバラツキ
(c) 2つ以上の動作を並行して行う「ながら」状態下での、歩行時の足の高さのバラツキ
に原因があると指摘していたようだ。
ちなみに、「メカノレセプター」というのは、全身にある感覚受容器で、関節の角度や筋肉の収縮の情報を脳に送っているものであり、例えば、足の裏では、足の裏にかかる圧力の情報を脳に送ってるらしい。
(a)については、足裏の温度が低いと、メカノレセプターからの情報が脳に伝わりにくくなり、バランスをとるのが難しくなるらしい。「女性に多い冷え性の人は足裏が冷えやすく転倒しやすいので気をつける 必要があります」と指摘している。
(b)と(c)については、メカノレセプターの情報が脳にうまく伝わらないと、歩行時の足の高さにバラツキが生まれ、知らず知らずのうちに足が下がって転倒してしまう、ということのようだ。(b)は、加齢によってメカノレセプターからの情報が脳に伝わりにくくなる場合で、また、(c)は、「ながら」状態だと、脳がメカノレセプターからの情報の処理に専念てきなくなるので、メカノレセプターからの情報が伝わりにくくなる場合ということらしい。
(C) コメント
以前の記事(NHK番組「ためしてガッテン」 (2) ビタミンD欠乏症 2012/11/5)で紹介した放送内容では、高齢者の転倒について、「足腰フラフラ病」と称しつつ、
ビタミンD不足 →筋力低下 →バランス能力の低下 →転倒・骨折
という流れで、ビタミンD欠乏症が原因であるとするものがあった。
この放送内容が想定していたのは、主に養護施設に入居しているような高齢者だろうから、高齢者以外の人々の転倒・骨折を説明できるものではなかったので、今回の放送内容に繋がっているのかもしれない。放送内容のタイトルからすれば、40歳代の中年の転倒・骨折までを説明することを意図したものであろう。
転倒が何故起こるかについては、姿勢制御の問題であり、姿勢制御には、体性感覚、前庭系(いわゆる耳の三半規管)、視覚の3つの感覚が主に関係するとされている。メカノレセプター(機械受容器)から得られる感覚は体性感覚の一つであり、それぞれウィキペディア日本語版から、
機械受容器
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A9%9F%E6%A2%B0%E5%8F%97%E5%AE%B9%E5%99%A8
体性感覚
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%93%E6%80%A7%E6%84%9F%E8%A6%9A
今回の放送内容では、転倒が増加している旨の指摘があったようだが、実は、3.11後の現状において、転倒が増えているかどうかは、直接的にはよく分からない。ケガがない転倒が多くを占めるだろうから、なかなか調べることが難しい面がある。
しかし、骨折が増えているらしいことからみて(過去記事は前出のココ)、骨折の主因は転倒であろうから、転倒自体も増加している可能性もあるだろう。「おくだ鍼灸整骨院」のサイトから、
骨粗鬆症について考える
http://www17.ocn.ne.jp/~okuda1/html/kotusosyousyou.html
はじめに
最近、骨粗鬆症と診断され心配される方が多く見受けられます。多くの人は、骨折を心配されますが、大腿骨頚部骨折、前腕骨骨折、足関節外果部骨折や椎骨圧迫骨折などが、高齢者に多く発生しますが、なにも骨粗鬆症だからといって、わけも無くむやみやたらに骨折するわけではありません。
最も大きな原因は、「転倒」によるものです。
つまり、高齢者の骨折の多くは、体の柔軟性や反射神経、防御反射の低下も大きな要因になります。その他にも転倒時のタイミングと転倒方向の体重の係り具合が大きな要因ですので、むしろ総合的に考えるべきでしょう。・・・
[中略]
なぜ転倒するのか?
一般的な原因は脚が上がっていないことでしょう。・・・
転倒の問題としてメカノレセプターの機能低下も問題視されています。・・・
メカノレセプターは、全ての関節構成体に含まれていますが、二本足歩行のために、部位的にみると、足の裏や膝の関節に非常に多く含まれており、脊椎椎間関節や仙腸関節周囲では重心コントロールを行うように、上肢では緻密で複雑な動作を感知できるように進化発達しました。
足の裏のレサプター→膝のレセプター→情報の入力→中枢神経系統→情報の出力→各部の筋肉、関節を制御し瞬時の適切な姿勢制御とし重要です。
このメカノレセプターが機能低下した状態になってしまうと、重心移動を含め、歩行時の瞬時の反応が遅れるわけです。・・・
最近の骨折の増加(あるいは転倒の増加)について、その原因を身近な「冷え」や「加齢」にしてしまい、他の要因が入り込む余地を残さないようにしたいとの意図があったのではないかと感じられるのだが、単なる思い過ごしであろうか。
今のところ高齢者、中年と扱われてきたようなので、若者や子供が残っているような気がする。このあたりを説明するため、近いうちに何らかの企画がまた出てくるのかもしれない。