コロナウィルス騒ぎが何であれ、どこかの国の、誰かの話ではなく
地球に住む全員が、同じことに直面しているということは、今までに起きたどんなこととも違っている。
誰も経験したことがないことが起きているのだから、
その先に広がっている景色もまた、誰も見たことがないものなのだろう。
ロックダウンになり、毎日家にいて何か月も過ぎたとき、
私はもう以前の生活には戻らないような気がした。
職場に戻ることはなく、どんなものかわからないが、まったく違う世界が始まるのじゃないかと思っていた。
だからひと月前に職場が再開したとき、少し戸惑った。
なんだ、あの日々に戻るのか。
あの日々が嫌いだったわけじゃなく、ただ私は、何が始まるのか期待していたのだ。
けれど、蓋を開けてみれば、前と同じなんかじゃなかった。
その場所は確かに3月まで私が働いていた場所で、そこにいる人達も同じ顔触れだけれど、何かが違う。
私自身、3月の私とはまったく違っている。
このひと月、まったく顔を合わせていない同僚たちがたくさんいる。
会うのはいつも同じ人ばかりで、
他の人たちはスケジュール表に名前だけがあって、まるで別の次元にいるような感じ。
1日に何万人という人たちがハワイに訪れ、
私は週末を指折り数えながら仕事をし、毎週海に行き、細々と作品を創り、
月に1度、ギャラリーを回って作品を補充していた日常という舞台に、
突然、緞帳が下ろされ、そのまま今に至っている。
私は観客席にいて、次のシーンを待っている。
再び、舞台が現れたとき、私は何を観たいだろうか。
また同じストーリーを観たいだろうか。
私は観客でもあり、俳優の一人でもあり、監督でもあるのだから
どんな第2章にするのかは私次第。
ハワイシアターの舞台の合間のインターミッションは、ロビーの2階に用意されたバーで
ワインを飲みながらおしゃべりをしたりする。
私は今、そのインターミッションにいる。
休憩を楽しみながら、次の展開のシナリオを描き、幕が開くのをワクワクして待とう。