昔、私が料理好きで家庭的だと勘違いして生きていた時代(つまり前の結婚時代ですな)、私のメンターは栗原はるみさんだった。
家を建てた時も、栗原さんちのように窓を大きくとって、庭にガーデンセットを置いたり(蚊にくわれるので1度しか使わなかった)、和食器を集めたり、
信じられないが、発酵器まで買ってパンを焼いたりもしていた。(自動パン焼き機はまだなかったと思う)。
その頃買ったたくさんの栗原さんの料理本のうち、
『ごちそうさまが聞きたくて』
『もう一度、ごちそうさまが聞きたくて』
の2冊は、家出や離婚や幾度もの引っ越しを経て、ハワイにも持ってきた。
20年前の料理本で、ページが取れているところもあるが、なんとなくこの2冊は手放しがたい。
といっても、その中で私が作るのは「茄子のとろとろ」だけなのだけど。
メニューがマンネリ化して、何か目新しいものを作ろうと、何度かその本を広げてみるのだが、いつも途中で見るのをやめてしまう。
それには理由がある。
たとえば、「さばそぼろ」。
新鮮なサバを用意して・・・・
新鮮なサバなど手に入らないからダメ。次!
「タコの香味サラダ」。
茹でタコなどないからダメ。次!
「高菜チャーハン」。
高菜漬けなんてあるわけがない。次!
「なまり節とさやいんげんの煮物」
なまり節、見たことがない。次!
「さやいんげんとつみれの煮物」
生いわしなどどこにある? 次!
「いわしとみょうがの酢味噌」
イワシはない。
みょうがはあるが、とっても高いからダメ。
「豚肉の梅肉蒸し」
豚肉はある。梅干しもある。しかし、たっぷりの白髪ねぎ、のところでダメ。
ハワイで白ネギを買おうとしたら、あなた、もう高いの高くないの。
1本800円ぐらいはする。次!
「春巻き」
春巻きの皮が手に入らないからダメ。
そんな具合で、料理しようという意欲がことごとくそがれてしまう。
日本食のスーパーはあるし、たいていのものは手に入るけれど、ここはやっぱり外国なのだなあと思う。
お料理上手なら、あるものでアレンジして作ることもできるのだろうが、私じゃだめだ。
1992年発行のこの2冊。
ボロけてきているし、作れそうなものは少ないけれど、そっと本棚に戻した。