昨日、一人の男性が私のレジに来た。
年齢は30代半ばか後半、肌の色は浅黒く、頭は剃ってある。
身長は170ちょっとぐらい、小柄だが無駄のない体形をしている。
俳優のユルブリンナーに似ている。
ユル ブリンナー
彫りの深さも頭も肌の色もこんな感じ
「もうこの辺にしておかないと、ここでは買うのをやめられなさそうだから」
そう言って笑った。
大きな両目が、並々ならぬ力をたたえている。
その男性は、一人でハワイに来ているようだった。
「どのぐらいハワイに住んでいるの?ここは好き?」
「10年ちょっとになるかな、日本以外に住むことになるなんて考えたこともなかったけど、ハワイは大好き。あなたはどこに住んでいるの」
「僕はロサンジェルス。I live in my dream(僕は僕の夢を生きているんだ)」
「夢?」
「そう。アメリカに来て、僕は夢を叶えた。僕にとっては大きな、大きな夢をね。だから毎日が、毎瞬間が、祝福なんだ」
夢を生きている、と言ったあたりで突然、私の両腕に鳥肌が立った。
「ハワイは素晴らしいところだね、あんまり素敵だから、この近くに家を探しているんだよ」
「ちょっとちょっと待って。見て!すごい鳥肌!!!なんで?」
彼は私の腕を見て、微笑んだ。
「そうだね。そういうことって、あるよね」
腕の鳥肌は、行ったり来たりして止まらない。
「日本人の、あなたの友達で僕に紹介してもらえる人はいないかな。日本人はすばらしいよ」
「え、あなた独身?ガールフレンドはいないの?」
「いえ、僕は独身だよ。彼女もいないよ」
「世の中の女性は盲目なのかしらね・・・」
彼が去ったあと、同僚のジェニファーがやってきた。
「ねえねえ、なんで鳥肌たってたの?」
「彼はロスに住んでて、夢を生きてるんだって聞いたら急に鳥肌立ってさ、止まらないんだよー、なんでだろ。なんとか光線出してたか!」
「あはは!!彼ね、フロアにいたとき見たけど、He is centered(彼はブレてない人よね)」
「なんの夢か聞かなかったけど、アメリカンドリームを達成したんだろうね。ヨガなんか似合う人だよね」
「ヨガね。ピッタリ!でも案外IT関係なのかもよ」
オーラなんてものは私には見えないし、特別の意味があるとも思っていないけれど、
彼を包むエネルギーがオーラなのだとしたら、それはとても強い光。
あの鳥肌は、なんだっただろう。
ブレまくってオロオロ生きている私が、ブレてない人の光線を浴びたからだろうか。