ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

韓国の老人長期療養保険でのモデルプラン

2009年04月25日 | 社会福祉士
 韓国には老人長期療養保険制度ができる前にケアマネジメントを導入するべきかどうかのシンポジウムに参加するため、何回か訪れた。その時の政策側の意見は、日本と比べてGDPが8分の1の国に見合った制度しか作れないという財源問題をあげていた。これに合わせて、ケアマネジメントの導入も当時どの程度経費がかかるか試算をされていたが、そのようなコストがかかり過ぎるものの導入は難しいと、ネガティブな評価であった。その試算額は忘れたが、日本での現実の介護保険でのケアマネジャーに使われている割合より、はるかに高いものであった。

 私は、ケアマネジメントの機能として利用者が適切なサービスを利用し、在宅での生活を支えることが基本であるが、さらにその結果として、今後予想される施設入所を抑制し、病院が不要な入院者を地域に戻すことで、老人長期療養保険だけでなく医療保険の財源抑制に寄与できることでの効果を含めて、試算すべきでないかと主張した。その際に、韓国ではケアマネジャーは置かないが、モデルプランを利用者に渡すことで、ケアマネジメントの代用をしたいということであった。

 そのためこのモデルプランとはどのような代物で、どのような工夫をしているか興味津々であった。今回の韓国訪問では、高齢者長期療養保険制度についての現状や問題点を理解することで、成果を得たいと思っていた。特に、「標準長期療養利用計画書」と呼ばれているモデルプランの中身を確認し、ケアマネジメントの代わりにどの程度役立っているかを理解しておきたかった。

 それで、多くの関係者に尋ねてみたが、要介護認定の決定で、国民健康保険公団の職員が本人にもっていくから一枚の用紙のことであることが分かった。その中には、決定した要介護度、どのような給付の種類、内容が記述されている程度の書類が送られてくるようである。今日の朝に、現物を拝見できることになっている。

 これでは、利用者の生活を支えることはほど遠く、せめて、訪問系のサービスを利用したい場合はAパターン、通所系のサービスを利用したい場合はBパターン、通所系と訪問系をミックスした利用はCパターン、とサービスをミックスして利用できることをサポートするものと思っていた。さらに、このような身体的な問題があるときには、●●サービス、心理的な問題があるときは●●サービスが有効ですといったことが書かれていれば、セルフ・ケアマネジメントの視点を取り入れることになると思っていた。その意味では、期待はずれであった。

 ただ、韓国では何も老人長期療養保険制度のもとで、全く経験のない国民健康保険公団の職員がケアマネジメントに手を出すよりも、韓国では多くのコミュニティ・センターがあり、そこには社会福祉士等のソーシャルワーカーや看護師を配置しており、ここをベースにして、ケアマネジメントを行っていくことの方がベターであると思っている。このことについては、今日の午後、元厚生労働大臣をし、ハンリン大学を今年退職した車先生と、日本の介護保険と韓国の老人長期療養保険を比較し、両者の問題点や課題について鼎談をすることになっているが、このことも論点の1つになるであろう。


 後日談

 当日「標準長期療養利用計画書」を頂いた。ある意味、どのサービスを使い、お金をいくら払うのかの記載部分がある。その意味では、勿論ニーズ・オリエンティドではなく、サービス・オリエンティドであり、マネー・オリエンティドの計画であるとは言える。

 ただ、韓国での夜の最終日の懇親会で、国民健康保険公団で計画書を本人にもっていっている職員にお会いしたが、彼女は言うには、この用紙以外に「サービス内容の一覧表」も持参し、サービス情報の提供をしていることであった。ただ、彼女によると、職員間の能力に大きなばらつきがあり、彼女の職場で、多くは従来事務作業を行っていた職員が多く、社会福祉士1級をもっている者は14名の職員の中2名であるとのことであった。