ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

ケアマネジャーの担当ケース数?(『ストレングスモデル 精神障害者のためのケースマネジメント』から①)

2009年04月17日 | 社会福祉士
 先日、チャールズ・ラップとリチャード・ゴスチャ著、田中英樹監訳『ストレングスモデル 精神障害者のためのケースマネジメント(第2版)』(金剛出版)の書評を依頼され、2000字足らずの原稿を書いた。

 私自身は、この著書にも二人の著者にも大変お世話になっている。それは、以下の4点であり、著書や著者から学んだことを、数回にわたって綴ってみることにする。

①私自身ストレングスモデルの基本を学んだのは、本著の初版の訳書(江原敬介監訳)であった。

②ラップとゴスチャの両氏にはカンサス大学で大変お世話になり、ゴスチャのワークショップを受け、ケースマネジャーとの同行訪問や、グループスーパービジョンにも参加させていただいた。

③私のもとでドクターを取った福井貞亮君がラップ教授のもとでリサーチ・フェロー(有給研究員)としてご指導を頂いている。

④私が大会長をお引き受けした2003年の第2回日本ケアマネジメント学会大会(大阪市国際交流センター)で、特別講演とシンポジウムのコーディネーターをゴスチャさんに依頼し、お引き受けいただいた。

 今回は、④の時のことで、ケアマネジャーの適切な担当ケース数について書くことにする。

 介護保険が始まって3年目に入った2003年に大会を大阪で開催したが、ゴスチャさんには講演で、当然「ストレングスモデル」のケアマネジメントについて話をして頂いた。その後のシンポジウムのコメンテーターとしての彼のコメントを思い出す。私がシンポジウムのコーディネーターを担当したが、介護保険制度が始まった3年以上立っていたが、日本でのケアマネジャーの際限のない担当ケース数が気になっていた。シンポジウムの最後に、ゴスチャさんから、ケアマネジャーの担当数は30~40ケースに限定すべきであるとのコメントを頂いたことをはっきりと覚えている。

 学会の前に2003年4月から最初の介護報酬改正のもとで進められていたが、要介護度に関係なく同じ介護報酬単価(850単位)になった改正の時である。その後の2回目の2006年からの介護報酬改正で、ケアマネジャーの担当ケースは35ケースを標準とすることになり、40ケースを超えると減算する仕組みが出来上がった。この改正には、ゴスチャさんの発言が影響を与えたのではないかと直感したことがある。同時に、この時に要介護1と2は1000単位、要介護3,4,5が1300単位と格差をつけることになった。そして、今回の介護報酬改正につながっていった。

 ある意味では、大阪市国際交流センターでゴスチャさんの発言が、結果的に2回目の改正に活かされたことになった。私は、ケアマネジメントの仕組みとして、州により部分的に異なるが、カナダのシステムが良いと思っていたが、ただケアマネジャーの担当ケースが100ケースを超えており、モニタリングが十分できないことを以前にみていたので、35ケースを標準とすることになったことについては、介護報酬改正を評価した。

 ただ、ゴスチャとラップの本著書では、精神障害者という対象についてではあるが、ストレングスモデルのケアマネジメントでは、1ケアマネジャー当たり12ケースから20ケースを推奨している。(287頁)日本の介護保険では、現実のケアマネジャーの担当数は2007年に実施した介護サービス事業者経営調査では、平均担当ケース数は26ケースであった。

 35ケースという基準、26ケースという現実、アメリカの精神障害者へのストレングスモデルで推奨される12~20ケース、今後日本での最適な担当ケース数については、実証的な研究が待たれる。それは、利用者のQOLを高め、結果として施設入所を抑制することにもなる適切な担当ケース数である。