ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

新たな「要介護認定方法」についての評価

2009年04月08日 | ケアや介護
 ブログを春休みしている間に、介護報酬や要介護認定方法が改正され、追加の緊急経済対策で、介護従事者の待遇改善にお金をつけることが検討されている。また、社会福祉士等の国家試験の合格発表も行われた。これらについて、順次コメントしておきたい。

 要介護認定方法については、3月24日に「認定調査員テキスト2009改正版」を出して、解釈の明確化を行った。これで既に4月1日からスタートしたことになる。

 最終的に、テキストで変更されたことは、以下の3点である。
①「介助の方法」の16項目が、全て「自立(介助なし)」「できる(介助なし)」を「介助されていない」と文言を変えた。

②「移乗」「買い物」「金銭管理」についての解釈について、「移乗」では、「寝たきりであって、体位変換が行われていれば「全介助」、「買い物」では、代金の支払い不足、未払い等があり、精算や契約解除等を行わなければならない場合は「一部介助」、「金銭管理」は、所持している金額以上の契約を行って、後で精算や契約解除等を行わなければならない場合は「一部介助」とすることになった。

③「洗顔」と「短期記憶(面接調査の直前に何をしていたかを思い出す)」で特記事項が追加された。「洗顔」の現状で明らかに介助が不足している場合の特記事項、「短期記憶」での本人の発言と家族等の発言が食い違う場合を書き加えている。

 テキストも修正され、調査員に周知徹底を図れば、認定調査員の調査内容のバラツキを少なくすることに資することは確かであろう。同時に、上記のテキストの修正による文言訂正や、「移乗」「買い物」「金銭管理」の解釈の明確化、「特記事項」の追加は評価できる。ただ、②と③については、元のデータを修正して入力し、プログラムの係数を変えることが必要であるが、そこまでは遡れていないと思われる。これについては今後の課題であろう。

 この結果、認定調査員が「特記事項」を書き込むことができ、それを認定調査会が適切に評価できるかどうかが課題となる。これについては、今後の調査員や委員会研修が重要な意味をもっているといえる。

 但し、今回の要介護認定方法の変更は、要介護認定の本質に関わる問題を露呈している。それは、以下の通りである。

 今回の解釈の明確化が必要とされた項目は「介助の方法」であり、「介助」については、「介助の不足等により介助されていない」場合の調査員が客観的な判断をする際に、家族がいなかったり、家族がいても介護していなかったり、家族が過度に介護している場合には、本人の状態が同じでも大きく異なってくる。また、ある種の介助では、住環境が整っているかどうかで、「介助」の内容が異なってくる。これらは、利用者の社会環境的な要因により、介護されていないレベルが異なることになる。これらの要因を含めて「介助されていない」ことを調査することで良いのかという社会からのコンセンサスが必要となる。とりわけ、今までの要介護認定では、家族の介護は認定の際に評価しないことになっていたため、基本的な認定方法の転換にもで及ぶことである。

 また、本人の自立意欲が高い場合、依存的な場合、介助への要求水準が高いか低いかで、介助の現状は変わってくる。こうした本人の精神心理的な要因も含まれて、「介助されていない」水準が調査されることになる。

 以上のようなことは、今回の認定調査では、特記事項に記述されることになり、認定調査会での判断に委ねられることになる。そうした場合に、家族や住環境、さらには本人の意欲等の違いをを無視して、実際の介助の不足でもって一次判定している結果に対して、どのような判断をしていくのかの認定調査会の仕事が大きくなる。心配するのは、その時に判断基準が、家族の介護力を評価しないとしながら、既に一次判定では取り込まれていることである。

 私個人の意見であるが、要介護認定に「介助の方法」を持ち込んだことがこうした混乱を生んでいるが、これは要介護認定の本質を議論する、さらには介護保険の本質を明らかにするうえで、意味がある。