ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

シルバー産業新聞で連載をスタート

2009年04月14日 | ケアや介護
 シルバー産業新聞で「介護保険10年 ケアマネジメントいまとこれから 白澤教授の快刀乱麻」という連載を4月から始めることになった。シルバー産業新聞は唯一大阪発信の業界紙であり、介護保険は地方分権を旗頭にして始まったが、実質は中央集権的要素が強いと思っている。そのため、大阪を本社にする事業者は、情報収集の点からすれば、不利な位置にあり、東京オフィスを開設して努力をしている。一方、地方ならではの情報や考え方を発信していくことは、本誌が得意とする部分であって欲しい。月に1回ということもあり、お引き受けすることにした。

 第1回が4月号に出ているが、再掲しておく。

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 ケアマネジメントは「自立の支援」という理想の理念をもって始められたが、その行く末について混迷している。快刀乱麻とは、もつれた事柄を、もののみごとに処理することとされるが、本連載でケアマネジメントは暗いトンネルから出て行く光明を見つけ出さすことができるであろうか。ご一緒に考えることで、光を見つけ出していきたい。

 第1回 介護報酬改正 サービスの質に関わりなく格差が生まれる
 四月から始まった介護報酬改正では、40を超える加算が作られ、それに3%のアップ分がほとんど使われた。そのため、個々の事業者は、加算を取ることに血まなこになっており、それは利用者への質の高いサービス提供を目指すこととは必ずしも一致しているようには思えない。

 居宅介護支援事業については、ほとんど全ての事業者が赤字状況を継続しており、今回の介護報酬改正の内容が生命線的な意味をもっている。実際には、介護報酬単価は従来通りで、「認知症」や「独居」の利用者に対する加算が新設されたことに加え、従来の「特定事業者加算(Ⅰ)」に加えて、敷居を低くすることで取りやすくするため「特定事業者加算(Ⅱ)」が新設された。この追加された加算には、事業所内の連携や研修、さらには利用者との連絡体制を整備することが条件であり、サービスの質を高める要素が入っているが、取得上のポイントは常勤・専従の介護支援専門員2名以上と、主任介護支援専門員が配置されていることが条件であり、1事業所に3名以上のケアマネジャーがいなければ取れないことになっていることである。

 前回の改正で新設された特定事業者加算(Ⅰ)の場合は、ほとんど全ての事業者にとって高嶺の花であったが、今回の特定事業者加算(Ⅱ)については多くの居宅介護支援事業所が取れるよう努力するであろう。現実的には、3分の1程度の事業所は取得可能であろうことを考えると、居宅介護支援事業者間での経営上での格差が生まれてくることは間違いない。
その際に、一定の規模がなければ加算が取れず、小規模事業者は不利であることは間違いない。そうすれば、今後は小規模の事業者は集合離散していく運命になるのであろうか。ここに、ケアマネジメントの質の高さというよりは、事業所の大きさにより、格差が生じてくることになる。一方、小規模の居宅介護支援事業者故に、利用者に対するケアマネジメントの質が低いことが実証されてはいるわけではない。

 この加算については、今まで進めようとしてきた方向とは逆方向に転換してしまったのではないかと思う。前回の介護報酬改正では独立型のケアマネジャーに加算をつけるような議論があった。これは、独立型のケアマネジャーを増やすことで、中立公正を担保していくことを考えていたからである。この独立型は、ほとんどが1~2名で細々と事業をしているのが現状であり、今回の特定事業者加算(Ⅱ)をとるのが難しい。

 経営的な視点からいえば、まずは出来る限りの事業所がこの特定事業者加算(Ⅱ)を取得することにチャレンジしていただきたい。同時に、独立型や小規模の居宅介護支援事業所は、生き残るために、合併や合同事務所の創設といった方策も考えていただかざるを得ない。介護報酬は事業者の生殺与奪の力をもっていることを認識し、慎重に決めていただきたいと願うと同時に、介護報酬でこのように事業所が振り回されることは、至極残念なことである。

 加算の新設は以上のような歪みをもたらすだけでなく、介護保険制度をより分かりにくい、複雑なものにしている。さらには、サービスの利用者や被保険者にサービスなりケアの質が高いゆえに、介護報酬が高くつくことの説明ができる材料が揃っていることが、加算新設の条件であるが、多くの加算にはそうした条件が整っている分けではない。その意味では、基本となる介護報酬単価をアップすることで、事業所の経営の安定を図ることが一番良かったのではないかと考えている。その場合には、事業所の増収がガラス張りになり、介護従事者への給与アップにも寄与できたのではないかと考えている。
 
 さらに将来的には、居宅介護支援事業の介護報酬は、抜本的な改革が求められる。具体的には、ケアマネジャーは個々の利用者に対してだけでなく、地域での活動等の多様な業務に従事しており、常勤ケアマネジャーを基礎にし、基本給プラス1ケース当たりの介護報酬単価をミックスすることの議論が必要である。