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群馬の田舎から情報発信!

『町長選挙』(奥田英朗)

2006-05-21 10:29:52 | 読書日記
 トンデモ精神科医 伊良部一郎が活躍する第3弾。今回も笑わせてくれます。

 今回の登場人物は、
・パニック障害のプロ野球人気球団オーナー
・若年性アルツハイマー病のIT企業社長
・アンチエイジング強迫観念のカリスマ女優
そして
・町長選挙の選挙戦に巻き込まれた都庁職員

 球団オーナー・IT企業社・カリスマ女優は、何かと普段世間を賑わしている人をイメージしながら読めます。

 表題の「町長選挙でですが、離島のある村では、4年に1度行われる町長選挙で、村を2分する激しい選挙戦を演じる。その真っ只中に伊良部医師とマユミ看護士が乗り込んでくる。これまでの伊良部一郎作品とはちょっと違い、精神科に通う患者が主役というわけでもありません。

 村内に医者が誰もいない状態ができてしまったり、特別養護老人ホームの建設のために伊良部医師に町長候補がすがる姿は、過疎地の問題をよく表しています。

 おもしろいのは、伊良部医師が、各候補者から顧問料を受け取る場面。この作品の主人公と同様、私も「伊良部医師よ受け取るな!」と叫びたくなってしまいました。しかし、そこはこの伊良部医師のこと。期待を裏切らずに、何食わぬ顔で賄賂を受け取ります。どうやってこの後を収拾するのか・・・。(結局は何とかなります。)

 この作品の人気はやはり伊良部医師の魅力です。「町長選挙」の中で次のように表現されています。
 「あほうは可愛い。気がらくでいい」
 「わしらは構ってほしいんじゃ。伊良部先生は相手になってくれる。」
 「そういえば伊良部は不思議な人気がある。島の子供たちもすぐに懐いた。尊敬しなくても済むからだ。」

 まるで5才時のようにわがままな性格だが、不思議と人々の心を掴んでしまう。精神科医としての”腕”はよく分からないが、患者たちは、次のステップへのきっかけをつかむことができてしまう。
 
 私も、大笑いしながら作品を読みましたが、読み終えた後はなぜか肩の力がちょっとだけ抜けた気がします。