品種交配のみで青いバラを作ったバラ園主をモデルに岐阜の町興し映画のために書かれた小説。
バラ園を経営する両親の元で3人兄弟の次女として育った高校生の鷺坂冬子の高校生時代の1971年(星野仙一と3番サード長嶋が対戦する時代)と、癌が進行して余命幾ばくもない母良枝が入院中の1982年が、作品の大半を占めています。ハンググライダーで飛んできてぶつかりそうになった「弁当王子」鷹野蒼太との淡い想い出、長女朝子のニューヨーク行きに危惧感を示した父光男を諫めた母の言葉。実質的には冬子の決意につながるその2つを引き出すためとも言える経過作りがこの小説の肝です。このテーマであればふつう中心となるであろう青いバラ作りの苦労は、まったく描かれていません。野球を一応はテーマにしながら、主人公を甲子園大会優勝投手にしながら、甲子園大会の試合場面をまったく描かなかった漫画「タッチ」のような、いや「タッチ」は地区予選の試合は散々描いて苦労はさせてますから、「タッチ」以上に主人公の努力・闘いの過程をすっ飛ばしています。あとがきのラストに「今、青いバラの花言葉は『夢はかなう』だそうである」と書かれていることとあわせて、願っていれば夢はかなうというディズニーワールドのようにも見えます。
秦建日子 河出文庫 2020年5月20日発行
バラ園を経営する両親の元で3人兄弟の次女として育った高校生の鷺坂冬子の高校生時代の1971年(星野仙一と3番サード長嶋が対戦する時代)と、癌が進行して余命幾ばくもない母良枝が入院中の1982年が、作品の大半を占めています。ハンググライダーで飛んできてぶつかりそうになった「弁当王子」鷹野蒼太との淡い想い出、長女朝子のニューヨーク行きに危惧感を示した父光男を諫めた母の言葉。実質的には冬子の決意につながるその2つを引き出すためとも言える経過作りがこの小説の肝です。このテーマであればふつう中心となるであろう青いバラ作りの苦労は、まったく描かれていません。野球を一応はテーマにしながら、主人公を甲子園大会優勝投手にしながら、甲子園大会の試合場面をまったく描かなかった漫画「タッチ」のような、いや「タッチ」は地区予選の試合は散々描いて苦労はさせてますから、「タッチ」以上に主人公の努力・闘いの過程をすっ飛ばしています。あとがきのラストに「今、青いバラの花言葉は『夢はかなう』だそうである」と書かれていることとあわせて、願っていれば夢はかなうというディズニーワールドのようにも見えます。
秦建日子 河出文庫 2020年5月20日発行