伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

「健康」から生活をまもる 最新医学と12の迷信

2023-09-25 20:49:58 | 実用書・ビジネス書
 病気と健康について世上言われていること/迷信について、医師である著者の意見と著者が考える対処方法を語る本。
 著者がこの本で一番言いたいことは、たぶん、最初の方で酒、タバコについて取り上げた上で言う「人の指図は要らない。一事が万事、私たちには自由に生きて不健康になる権利がある」(40ページ)というところだろうと思います。
 解説されている研究データで驚いたのは、高血圧等の予防・対策のために勧められる減塩食について「研究によれば、食塩11.1gを3.6gに減らすことで血圧は白人なら1ぐらい、黒人なら4ぐらい下がる。アジア人だと、なんと下がらない」(62ページ)って。
 近年流行というかスタンダードになっている Evidence Based Medicine : EBM(証拠に基づく医療)のエビデンスについて日本では「根拠」「科学的根拠」と意訳されがちだが、そうするとメカニズムの解明とか理論が重視されることになりおかしいと指摘しています(132~134ページ)。その薬がなぜ効いたかがわからなくても臨床試験で効果があればそれがエビデンスで、EBMはある意味でメカニズムのことは忘れるという思想だというのです。私は、EBMというのはもともと著者のいうようなものと受け止めていたのですが、違う風潮もあるのですね。
 EBMについて、「エビデンスという言葉はなぜか『科学的根拠』と訳されているが、もともと法廷に提出される『証拠』という意味でも使われてきた歴史がある。法廷は意見を戦わせる場であり、そこでは弁護士が頭を使って物語を考える。どんな弁護士でも証拠=エビデンスは参照するが、同じ証拠から引き出す物語は弁護士によって違うだろうし、訴訟に勝つか負けるかも弁護士によって違う。このたとえで言えば、ガイドラインは弁護士だ。間違わない弁護士はいないし、負けない弁護士もいない。ガイドラインを絶対と思うのは迷信だ」と説明しています(147ページ)。医療にかかわる専門家団体のガイドラインを弁護士の訴訟活動にたとえるのが適切かは、私にはわかりませんが、含蓄のある文章に思えます。


大脇幸志郞 生活の医療社 2020年6月11日発行

 

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