伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

お探し物は図書室まで

2023-02-02 20:05:00 | 小説
 東京都「羽鳥区」にある小学校に併設されている「羽鳥コミュニティハウス」内の図書室で司書をしている「穴で冬ごもりをしている白熊」を思わせる、「ゴーストバスターズに出てくるマシュマロマンみたい」、「ベイマックスみたい」、らんま1/2の水をかぶるとパンダになる早乙女玄馬みたい、「正月に神社で飾られる巨大な鏡餅のよう」な小町さゆり47歳から、「何をお探し?」と聞かれてリクエストしたところ、リクエストとは関係なさそうな本が1冊最後に書かれているリストとさゆりが作った羊毛フェルトの「付録」を渡された5人、仕事にやりがいを感じられず転職を漠然と考えていた総合スーパーの婦人服販売員藤木朋香21歳、アンティークショップを開く夢を抱えつつくすぶり悩み続ける家具メーカー経理部勤務の浦瀬諒35歳、産休明けに資料部に異動されて雑誌編集部に戻れないことと夫の育児・家事分担が少ないことをぼやく出版社勤務の崎谷夏美40歳、ニートで周囲に不満を持ち続ける菅田浩弥30歳、定年退職して社会とのつながりを失ったと喪失感を持つ元菓子メーカー勤務の権野正雄65歳が、それを契機に生き方を考え直すというハートウォーミング系短編連作。
 みんなから好かれる高卒1年目の図書館員森永のぞみがまず応対した後で小町さゆりが登場するというパターンが採られているのは、小町さゆりの特異性を際立たせるためですが、全話でそれを繰り返していると、様式美という印象も出てきます。
 すべての話で小町さゆりが共通して出てきますが、小町さゆりは中盤で狂言回しのように出てきてその言葉と勧めた本や渡した羊毛フェルトが大きな影響を与えるものの、登場する場面は多くはなく、基本は、それぞれの話の主人公となる5人の仕事や人生に対する見方、考え方の変化がテーマの読み物です。


青山美智子 ポプラ社 2020年11月9日発行
2021年本屋大賞第2位
コメント
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