伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

きみの遠い故郷へ

2008-08-20 22:29:15 | 小説
 洗羊液中毒から化学物質過敏症となって納屋で暮らす精神を病む夫ディビッドを持ちBB(民宿)を経営する44歳のフィオナが、アメリカから死んだ元妻の遺言に従い遺灰をウェールズの山頂に撒きに来た50歳のアメリカ人詩人アレックと恋に落ちた1週間とその後を描く熟年恋愛小説。
 フィオナは独立心旺盛でBB経営者としてサービス精神もコミュニケーション能力も豊かな魅力的な女性として描かれていますが、アレックは山男でサバイバル能力に長けていながら家畜とのコミュニケーションに優れ、それに輪をかけて料理上手でユーモアにあふれた人物と描かれています。牧場経営とBB経営をするフィオナからは非現実的なほど理想的な男性。
 設定からして中年女性読者を想定したあまりに都合のいいロマンス物で、夫が納屋にいるのに、さらには夫が病院で生死をさまよっているのにアレックをベッドに引き込むフィオナの行動はちょっとあんまりだと思いますが、さほど悩まずなんとなく正当化されています。アレックの方で悩んで、愛し続けると言いながら身を引いてくれます。アレックがそうしなければ田舎の狭い社会でいずれはばれてフィオナが窮地に陥ったわけで、それも含めて、アレックが現実には考えられないほどいいヤツで、フィオナにはあまりにも都合のいい展開です。ここまで尽くさないと現代のラブ・ストーリーに入れないと考えたら荷が重すぎますね。
 中年女性の読者には、またあくまでも読み物として読む分には、軽快ですけどね。


原題:THE LONG WALK HOME
ウィル・ノース 訳:田口俊樹
文藝春秋 2008年5月15日発行 (原書は2007年)
コメント
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