形之医学・しんそう療方 小石川院長 エッセー

昭和の頃、自然と野遊び、健康と医療のことなど。

山伏があらわれた!

2011-09-10 13:55:22 | Weblog

小学生の頃の、夏の土曜日の夜店。 
裸電球のゆらめきの下をゆく人々のそぞろ歩き。 
ところどころ、大道に置かれたアセチレンガス灯の匂い。

あるとき、夜店に山伏が現れた。 黒っぽい山伏の装束に
高下駄を履き、錫杖(しゃくじょう)という金具の輪っかが
いくつも付いた杖を、ガシャンガシャンと鳴らして大道に立った。 
口上は、自分は羽黒山で長年修行をしてきた山伏である。 
修行の結果、ついに千里眼になった。 だから、みんなの
探し物、知りたいことを当ててやろうというのだ。

これだけでは、長年のインチキに鍛えられた見物人からは
信用されない。 これからが不思議なのだが・・・・・ 
山伏は持っていた、1メートルほどの、木の枝の片方の端に、
拳ほどの石を縛りつけたものを地面に無造作に立てると、
パッと手を離した。 なんと、てっぺんに石を縛った枝は
斜めになって地面に立った。

これには見物人がびっくりした。 そしてタネも仕掛けもないぞ
と言わんばかりに、杖を振り振りそのまわりを回ってみせた。 
見物人の、見えないような糸でもついてるんじゃないの? 
という疑いは、木っ端微塵に吹き飛ばされた。

みんなのド肝を抜いた山伏は、そこから商売に入る。
代金を払って、知りたいことや探しものを紙に書いて山伏に渡すと、
山伏はその答えを紙に書いて渡すという。 質問も答えも見物人には
わからない。 値段がいくらだったかおぼえていないが、頼むのは
大人ばかりで、子どもが頼めるほど安くはなかった。

私たちにはそれはどうでもよく、ひたすら、あの斜めに立った木の棒に
興味があった。 夜店が終わったあと、友だちと山伏が枝を立てた
ところに行き、地面に穴があけてあるんじゃないかと、顔をくっつけ
るようにして探してみた。 でも商店街のその道路は舗装されていて
穴はなかった。

今でもあれは不思議だ。 山伏はそっとバランスをとって枝を立てた
のではなく、ごく無造作に立てたのだ。 あとで、???だらけになった
友だちと、木の棒っきれに石をくくりつけて試してみたが、そっとやった
ところで、とてもじゃないが立たないのだ。 トリックがあるのかな~?
それともほんとうに神通力で立てちゃったのかな。
                       

形之医学・しんそう療方 東京小石川
http://www.shinso-tokyo-koisikawa.com/


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