タンポポの咲き始めている、城址公園の草むらを歩いていた。
そこに混じって、同じ黄色い蛇苺の、五弁の花が咲き始めていた。
小学校の頃、日曜日に友達4、5人と、多摩川の上流のほうに
探検に行くことになった。 前の日に母親に頼んでおいた、おにぎり
と水筒を持って、私たちは歩いて多摩川沿いの道を上流に向かって
いった。 道は時折、川から離れ、また一緒になる。
多摩川園に近づき、通りを外れて住宅街の中の小道を入っていくと、
立派な庭のある大きな屋敷が並ぶところに出た。 それは私たちが
住んでいた町とは違っていた。 右に左に小道を分け入って、
その先に何があるんだろうと小さな探検を楽しんだ。
屋敷の中には、誰も住んでいないような、庭の草がぼうぼうになった
洋館もあった。 たくさんある窓を見てると、暗い部屋のどこからか、
ワシ鼻でトンガリ帽子をかぶった魔法使いのおばあさんが、こちらを
じっと見ているような気がしてくる。
「これお化け屋敷じゃないかな~」
「ちょっとだけ庭に入ってみようか?」
「オレ、イヤだよ」
さんざん小道を歩いていると、蛇苺がたくさん出ている草むらがあった。
地面を這うように広がって、赤い小さな実をたくさんつけていた。
それが蛇苺という名前で、毒はないというのは遠足のときに学校の
先生に教えてもらって知っていた。 名前を聞いたとき、私は蛇が
食べる苺かな~と思った。 地面を這うヘビが、赤い蛇苺をうまそうに、
パクリ、パクリと食べる姿が頭に浮かんだ。
そこで私も一粒採って口に放り込んでみた。イチゴなんだから、
少しはその味がするだろうと思ったのだ。 ところがイチゴとは
名ばかりで、そんな味は全然しなかった。
指でやわらかい実を割ってみると、中は苺のみずみずしい果肉など
なくて、フカフカの白いスポンジみたいなものが入っていた。
それこそ味も素っ気もないイチゴだった。 バラ科の多年草。
からだの形は、生命の器
形之医学・しんそう療方 東京小石川
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