Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§19「武士道」 新渡戸稲造, 1899.

2013-10-14 | Book Reviews
 「義」とは個人の意識とは関係なく、従わざるをえない掟であり命令、それは猶予せざる裁断の心であって、成すべきことはすぐさま果たすこと。

 当然、正しいと思う信念が引き起こす行動がもたらす影響や結果責任は免れると考えがちで、ひいては偽善と詭弁を宿すもの。

 義を見て成さざるは勇無きなりと言えど、ただちに成さざるべきことは時を待て。「勇」とは驚愕に襲われることなく、沈着且つ平静を保ち目的を達成させる基準であり、いかに計らうこと。

 汝の敵を誇りとすべし、しからば敵の成功はまた汝の成功なりという境地に到るとき、「勇」は「仁」に近づく。

 「仁」とは敗れたる者を安んじ、傲ぶる者を挫き和の道を立つること。
 これぞ武士の心構えであり、生殺与奪の力をあわせ持つがゆえにその力を戒めよ。

「窮鳥、懐に入る時は、猟夫もこれを殺さず」

 その為にも、相手の痛みに眼を向け、相手を恥ずかしめることなきように。その痛みを知ったときにこそ、思いやりが養われ、その相手を知ったときにこそ、謙譲と尊敬が宿りはじめて、真の武士としての条件を兼ね備える。

 言わずと知れた紙幣の肖像画に描かれたその人が記す言葉には知らないことばかりですが、武士道のあるべき姿を示唆しつつも常日頃より戒めるべき心得を問うているような気がします。

初稿 2013/10/14
校正 2021/02/20
写真 後醍醐帝をお迎えする楠公像
撮影 2012/10/29(東京・皇居外苑)


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