特上カルビの記のみ気のまま

韓国語教育を韓国の大学院で専攻した30代日本人男性が、韓国ソウルでの試行錯誤の日々を綴りました.

自転車に乗る理由(わけ)

2005-03-28 23:15:52 | 韓国留学記
 晴れ一時曇り。最低気温4.4度。最高気温11.8度

 午後、ロッテ百貨店(ロッテペッカジョム)ロッテホテルが建ち並ぶことで有名な、繁華街である明洞(ミョンドン)へ出かけた。狭い路地に人と車とバイクが入り乱れていて、うっかりしていると事故に遭いかねない。

 中学校一年の夏のことだったと思うが、同級生だけで伊豆大島を自転車で回ろうと計画を立てたことがある。残念ながらその計画は実現はしなかったけれど、子どもの頃は自転車であちこち走り回ったものだ。自分たちにとって、一番気軽な“足”だった。もちろん今でもそれは同じだ。東京の実家に戻れば、乗ることも多い。
 
 「交通費が高いから日本人は自転車に乗るんですか?」
 今年の一月に初めて日本に行って来たという韓国の知人から、こんな質問を受けた。

 駅前にずらーっと並んだ自転車を見て相当のショック(?)を受けたらしい。それに夜ライトを点けて走っている自転車がとても珍しかったそうだ。確かに韓国ではそんな自転車見かけない。

 私は今まで、何故自転車に乗るのか?などということを考えたことが無かった。日本在住の外国人の間では、生活費を少しでも安く上げるための手段として、自転車が愛用されていることは私も知っていた。しかし、交通費が高いから交通費を節約するために自転車に乗るという考えは私の頭の中にはこれっぽっちもなかった。

 私が答えあぐねていると、「それじゃ、健康のために乗るのですか?」と訊いてきた。
 健康のためと言われれば、そうかも知れないが、それが一番の目的というわけではない。

 車優先社会の韓国では、街中では自転車をあまり目にしない。日本で見かける“ママチャリ”なるものも存在しない。

 以前とは状況が変わったとは言え、“北”と対峙している(休戦状態にある)韓国では万が一の場合に備えて、地下道が発達している。幹線道路は軍用機の滑走路として使用できるように、片側四~五車線というのも珍しくない。従って大きな交差点に横断歩道はなく、地下道によって結ばれているというのが珍しくはない。歩道は歩道で、日本に比べればまだまだ“悪路”が多くて、自転車でスイスイと走れるように造られていないのだ。最近は綺麗に舗装された歩道も増えてきたものの、よほどクッションの効いた自転車でない限り、十分も走ればお尻が痛くなることだろう。

 このような都市構造が自転車を受入れない仕組みになっているというのも事実だが、一番の原因は原付バイクの運転には免許が不要だということだろう。
 車の交通マナーの悪さは言わずもがなだが、それに輪を掛けて原付バイクのマナーの悪さといったらキリがない。車道では車の間を縫うようにして走るし、逆走もする。そして、歩道上でも猛スピードで疾走するのは日常茶飯事だ。日本と違って、きちんと歩道を歩いていても、前や後ろから走ってきた原付バイクに、クラクションを激しく鳴らされる目に遭うのだ。特に繁華街では人も多いが、原付バイクも多いので要注意だ。

 バイクが歩道を我が物顔で疾走するという“問題”は、今まで何度も外国人観光客らの不評を買い、そのたびにマスコミなどでマナー改善を呼びかけるものの、その効果はほとんど無に等しい。特に原付バイクのほとんどが“業務用”として使われているため、品物の配達などで常に時間に追われているという、ドライバー側の事情もあるようだ。

 そんな“危険な街の中”では安心して歩けもしないのに、ましてや自転車に乗るなんて考えられないというのが韓国の人たちの常識なのだ。事実韓国では若い人を除けば、自転車に乗れない人が以外と多い。特にオバサマ方の場合はその比率が高いのだ。二十~三十年くらい前までは「女性が自転車に乗るなんてとんでもない!」と考えられていたのだ。

 それ以前に、自転車にわざわざ乗るくらいなら、免許不要の原付バイクにまたがって、車道と歩道を縦横無尽に走ろうと考えるのが、自然かも知れない。

 私が自転車に乗る理由。強いて言うなら「みんなが乗ってるから」だ。その答えを聞いた韓国の知人は納得がゆかないといった表情を浮かべていた。

 あなたは、自転車に乗る理由(わけ)を考えたことがありますか?

 写真は明洞(ミョンドン)にあるロッテ百貨店本店。最近外装をリニューアルした。

 追記(3/31):ママチャリなるものは存在しないと書いたが、日本人駐在員などが多く住む地域では自転車が奥様方に愛用されている。
 追記(4/10):韓国の自転車カタログによると、いわゆる「ママチャリ」は「生活自転車(センファルチャジョンゴ)」というそうだ。因みに「マウンテンバイク」は「山岳自転車(サナクチャジョンゴ)」と呼ばれている。