特上カルビの記のみ気のまま

韓国語教育を韓国の大学院で専攻した30代日本人男性が、韓国ソウルでの試行錯誤の日々を綴りました.

三つの“P”

2005-03-04 06:47:24 | 韓国留学記
 晴れ。最低気温-4度。最高気温2度。東京都心で十年ぶりに2センチの積雪を記録。

 お隣の国、韓国ソウルは二日前に降った雪が日陰に残っているものの、朝からきれいな青空が広がった。朝食後いつもより早めにスポーツクラブへ。今日ものんびり体を温める。最近は有酸素運動中心のトレーニングメニュー。筋力トレーニングは軽めにしている。

 昔から“人見知り”がとにかく激しい。

 もともと口数が少ないということもあるが、性別や年齢を問わず、初対面の人と話すのは特に苦手だ。そのくせ、“沈黙”が怖いときている。相手に沈黙されると、自分のことを嫌ってるんじゃないか?とか、この話題、興味がなかったのかなぁ~?とか、あれこれ考えれば考えるほど次の言葉が出てこなくなる。従って“沈黙の時間が長くなる”という悪循環に陥る。心臓はいつもバックン、バックン、冷や汗ダラダラ状態だ。

 そんな私が会社を辞めるまでの数年間、中途採用や新入社員研修などを担当していたのだから、今思い返すと、我ながら笑ってしまう。毎年今頃は、新入社員研修のカリキュラム作成と社内講師をお願いする幹部職の方々とのスケジュール調整に追われていた。

 中途採用は季節を問わず一年を通じて行っていたので、ヘッドハンティング会社とのミーティングや募集広告の出稿や面接など、上司の指示を仰ぎながらもほとんど一人でこなしていた。会社の業績が伸び、事業拡大へ向け急成長していた時期だ。

 中途採用の面接は長ければ三十分以上にわたる場合もあるが、平均すれば十分ないし十五分。その間に「性格」と「適性」を判断し、必要な人材か否かを見極めなければならない。どんな場合もそうであるが、採用する側もされる側も正に真剣勝負だ。

 毎朝聴いている英会話番組に就職や転職のカウンセリングを仕事とされている女性がゲストとして招かれた。

 韓国では就職するに当たって「英語力」が非常に重視される。正確に言えば「TOEIC(トーイック)のスコア」だ。英語を全く必要としない職場であってもTOEICのスコア800点以上という応募資格を平気で求めたりする。外資系企業の場合、TOEICのスコアが990点以上は当たり前らしい。日本では750~800点以上のスコアを“海外駐在”の目安としている企業が多い。そう考えると、韓国で就職する際のTOEICスコアに対する要求がいかに高いかが判るだろう。従って、大学生は英会話学校に通ったり、ラジオ講座を聴いたりして就職に備えて、英語力向上に日々努めるのだ。

 ゲストのカウンセラーが、就職するに当たっては「三つの“P”が大切」と次の三つを挙げていた。それは「Professionalism=プロ意識」、「Philosophy=(自分の)哲学」、そして「Passion=(激しい)情熱」だ。皆さんもきっと一度は耳にした事があるだろう。また、今仕事をしている人に対しては何よりもまず「今いる場所で最善を尽くしなさい」とのこと。そうすれば必ずや道は開ける。

 最後に「今や英語が出来るのは当たり前、その他に中国語やフランス語、日本語などが出来なければこれからの社会では生き残れないだろう」と結論付けていた。私もラジオの前で大きく頷いた。

 ところで、中途採用などの面接を日に何度もこなしていると、ドアを開けて部屋に入って来て、椅子に座った時の「第一印象」で大まかな性格が判るようになる。たまに“外れる”こともあるが、八割がたは椅子に座るまでの僅か何秒かで“決まる”し、性格や“三つのP”を持っている人物か否かが判ってしまう。“直感”というのは恐ろしいほど当たるものだ。それ以前に“履歴書”を見た瞬間人事担当者には、おおよその“人となり”がわかってしまう。履歴書を送った時点から“採用試験は始まっている”のである。

 面接の際に絶対言ってはいけない言葉がある。それは「何でもやります!精一杯頑張ります!」だ。「何でもやります!」という人に限って、「何も出来ない」。「精一杯頑張って、最善を尽くす」のは当然のことなのだ。「精一杯頑張ります!」と言った人は「精一杯頑張った末に」半年もしないうちに辞めて行ってしまう。

 それよりも「自分にしか出来ないこと」や「なぜ自分がこの会社に必要であるか」という話しを聴きたいのだ。“自分のことば”で話すことが何よりも大事だと思う。

 外国語にも同じことが言える。“外国語を学ぶ”というのは「目的」ではなくて「コミュニケーションのための手段」を手に入れることだということを忘れてはならない。どんなにTOEICのスコアが高くても、“自分のことば”で話せなければ相手の“心の琴線に触れる”ことは難しいだろう。

 外国語を学んでいる者として、そして外国語を教えている者としてそのことを痛感する今日この頃である。 

 今日「ガス料金」を払った。今月は47,020ウォン(4,702円)。

 写真は毎朝聴いている英会話ラジオ講座テキスト「グッドモーニングポップス3月号」