特上カルビの記のみ気のまま

韓国語教育を韓国の大学院で専攻した30代日本人男性が、韓国ソウルでの試行錯誤の日々を綴りました.

渋滞を避ける「秘策」

2005-03-11 02:28:09 | 韓国留学記
 晴れ。最低気温-4度。最高気温5度。風が強く、冬の寒さが戻った一日。

 世界の大都市の多くは「キャッチコピー」を持っている。有名なところではニューヨークの「IN.Y.」や東京の「YESTOKYO」などがそれだ。ソウル市も昨年「市のキャッチコピー」を市民から一般公募した。その結果採用されたのが「Hi Seoul」だ。最近ではバスやタクシー、そして地下鉄などの公共交通機関を中心に街のいたるところで「Hi Seoul」という「キャッチコピー」を見かける。因みに釜山(プサン)の「キャッチコピー」は「Dynamic BUSAN」。

 「Hi Seoul」というキャッチコピーと同様に、「公共交通を利用して高油価時代を乗り切ろう!」という「標語」を目にする機会が多くなった。ソウルや釜山(プサン)などの大都市も含め、基本的に「車社会」であるここ韓国では、出退勤時間帯の道路混雑は年を追うごとに深刻化している。また、基本的な物価は日本より安い韓国にあって、ガソリン代は日本以上に高いのだ。日本同様、石油を百パーセント輸入に頼っているため、原油の高騰は韓国経済にとって大きな痛手である。

 そこで、さきほどの「公共交通を利用して高油価時代を乗り切ろう!」という「標語」が登場したという訳だ。ソウル市も「バス専用レーン」を終日設けたり、バスや地下鉄を専用の「プリ・ペイドカード」を利用して乗り換えた場合の運賃割引制度導入など、「公共交通機関」の利用促進に向けて様々な対策を打ち出している。

 しかし、一向に道路の混雑は解消されない。それどころか「バス専用レーン」を上下一車線ずつ新設したところ、一般車が通行出来る車線が減ったため、結果的に渋滞が以前よりもひどくなったという皮肉な結果を招いた箇所も少なくないのだ。

 私の家の近所も例外ではない。延世(ヨンセ)大学のある新村(シンチョン)周辺は大学が集まっていることに加え、市の中心部へ向かう幹線道路が走っているということもあり、長年激しい渋滞に悩まされて来た。

 どうやらソウル市民は、この渋滞を少しでも解消すべく「公共交通を利用しよう」と考えるよりも、「いかにすれば自分の車が、他の車より早く渋滞を抜けられるか?」ということにばかり思案をめぐらしてしまったようだ。そこで“編み出された秘策”が混雑している一般道を通らずに、延世(ヨンセ)大学のキャンパス内を「抜け道」として利用するものだ。いかにも性急なソウル市民らしい。

 実はこの“秘策”、タクシードライバーやトラックドライバーなど「業界関係者」の間では以前から日常的に“愛用”されて来た。一般車の場合は単なる「通り抜け」でも“駐車料金”必ずを支払わなければならないが、商用車の場合「公用のため大学に来た」と判断されるため、自己申告しない限り“駐車料金”を払わずに「タダで通り抜ける」ことが可能なのだ。

 それがここ最近、一般道の混雑が余りにひどいため、わざわざ“駐車料金”を払ってでも「抜け道」として利用する一般車が急増しているらしい。朝夕になると校内にある「料金所」付近で何台もの車が数珠繋ぎになっている光景は珍しくない。市民は“お金”と“時間”を天秤にかけ、“時間”を“お金”で買ったほうが有益だという結論に至ったのだろう。

 そこで今週延世(ヨンセ)大学の「東門(ひがしもん)」に登場したのが写真の横断幕だ。横断幕には大学を「抜け道」として利用するドライバーに向け、次のように書いてある。『快適な教育環境づくりのため、単なる通り抜けを目的とした乗り入れは自制願います』。果たしてその効果は全くもって「未知数」だ。

 私個人としては、外観を「タクシー」や「パトカー」などの商・公用車に偽った一般車が増えないことを願うばかりである。しかし、「白タク」は増えると困るが、「偽パトカー」が増える分にはソウルの治安向上に役立つかもしれない