特上カルビの記のみ気のまま

韓国語教育を韓国の大学院で専攻した30代日本人男性が、韓国ソウルでの試行錯誤の日々を綴りました.

映画「誰も知らない」を韓国で観る

2005-03-23 15:41:07 | 映画
 晴れ。最低気温5.3度。最高気温13.6度。

 悲しかった。とにかく悲しかったけれど、現代社会が抱えている様々な問題について、私達に考える“きっかけ”や“ヒント”を与えてくれる作品だ。
 
 韓国内での封切に先立って、映画「誰も知らない」の試写会に行ってきた。

 日本国内では既にDVDも発売されているこの映画、私は今回韓国で初めて観た。昨年(2004年)のカンヌ映画祭において、主演の柳楽優弥(やぎらゆうや)が史上最年少で最優秀男優賞を受賞したことで一躍話題になった映画。さすがに主演の柳楽優弥の存在感はずば抜けている。また、他の子ども達も一人一人の演技が輝いていた。あんなに生き生きとした子ども達の表情を“丁寧に切り取った”是枝裕和(これえだひろかず)監督のカメラワークも実に素晴らしかった。数多くのドキュメンタリー作品を手掛けて来た監督ならではの映画と言える。

 以前、NHK「土曜インタビュー」という番組で「是枝監督が映画で目指しているものは?」という三宅民夫(みやけたみお)アナウンサーの問いに対して、「映画が終わったあとに終わってしまう感情ではなくて、映画が終わってから見た人が何かを始められる映画」と答えた言葉が印象に残っている。是枝監督は「“種”みたいなものです。あとは、見た人が水をやって育ててくれれば」と続けた。まさに、そんな一本だった。
 
 韓国でのホームページを覗いてみても、試写会を見た人たちの受けもなかなか良かったようだ。日本映画だというだけで、昨今の「竹島領有権問題」と絡めて批判している書き込みもあったのは実に残念だ。批判をするのなら、映画を見た上で批判してほしいと思う。映画を全く観ずに、頭ごなしに批判するのだけは止めて欲しい。この映画を大切に作り上げた監督を始めとしたスタッフそして出演者に失礼だ。

 逆に韓国内で「反日感情」が高まっている今だからこそ、一人でも多くの韓国の人々にこの映画をぜひ観てもらいたい。きっとたくさんの人たちが“共感”してくれるものと信じている。韓国では四月一日から公開だ。

 試写会からの帰り道、ふと夜空を見上げたら月が滲(にじ)んで見えた。

 追記(3/24):映画「誰も知らない」の元となった事件についての詳細はここを参照してください。

 写真は映画「誰も知らない」の韓国語によるポスター。