これは、子どもたちもだいすきな「五味太郎」さんによる、「ことわざ解読本」である!
著者の五味太郎氏は、数多くのユニークな絵本を著している方。なので子どもたちにもなじみのある作家さんのひとりだ。
さて、この本は見開き2頁を使ってひとつのことわざについて書かれている。
まず、右頁の右端の黒色の枠内にことわざがひとつある。
同頁にそのことわざの意味と絵があらわされている。
字は五味氏の手書きによるもの。
絵はことわざを具体的イメージできるようなものである。
例えば、ことわざ「たなからぼたもち」の場合。。。
少年がねっころがって口をあけている。そこに丸いものがたなから落ちてくる。そのたなには、ねずみと花瓶がある、というユニークな絵。
そこに、こんな文字。
<たなの上から なぜか ぼたもち(おいしいお菓子)が落ちてきた。おっ、得したね、というわけ。>
……これだけで、ことわざの文字通りの意味が子どもにもよくわかる。
しかし、それだけでは終わらない。
そのページの左端に<それは>とある。
その言葉を受けて、左の頁の右端に目をやると<つまり>とあり、
<なんの努力もしないのに けっこうなものが、手に入った、ということ。>
と、ことわざの本来の意味が書かれているのである。
そして、そのページにはこんな絵がある。
運動会のかけっこで一等賞になった子ども。きょとんとした顔でゴール。それが、いかにもおっとりした子どもの顔なのだ。そして、そのうしろで4人の子どもたちが、目を回したり、泣いたり、ころんだりしている。
……この文字と絵で、五味氏はこう結論づける。
<みんな ころんで 一等賞>
……という、とてもユニークな「ことわざ絵本」なのである。
ことわざの文字通りの意味が絵と文であらわされているだけでなく、そのことわざの使える具体的な場面を五味氏が想定して、絵と文字であらわしている。
なので、「こんな時に、こんなふうにことわざが使えるよ」ということがわかるのである。しかも、五味氏独特のひねりをきかせてー。
……いや、厳密にいうと実際の場面では「使えない」かもしれない。
なぜなら、この場合「かけっこで、自分以外の友だちがみんなころんでしまい、一等賞になる」という確率はかなり低いと思われるので。
……しかし、この「発想」がいい!おもしろいではないか!
どうして、このことわざから、こういう場面がおもいつくのだろう?
……と、著者のあたまのやわらかさに感心するとともに、ついつい笑ってしまう。
ちなみに「ことわざ絵本 PART-2」も出版されています。