ガーベラ・ダイアリー

日々の発見&読書記録を気ままにつづっていきます!
本の内容は基本的にネタバレです。気をつけてお読みください。

工藤直子著 「出会いと物語」 岩波書店

2006-09-13 | こんな本読みました

この本は、詩人であり童話作家である著者のエッセイと作品が収められている。

 <たくさんの記憶は、たくさんの出会いから生まれてくるのだな>
……と著者が述べられているように、他人から見るとほんのちいさな「出会い」を意識の表層に浮かび上がらせる。そして、それを俎上にのせいろんな角度からながめたり、反芻したりする。

また、いつもすごいと思うのだが、氏は非常によく「むかし」というか「自分の子どもの頃」のことを覚えてらっしゃる。

そしてそのときに思ったこと感じたことを「作品」として、作り上げていくのである。
これを読むと、その過程というか「裏話」を知ることができる。

例えばこんなふうに。
小学1年生の入学式に、どしゃ降りの雨のため新しい革靴を履いていくことを禁じられ、長靴を履いていく著者。しかし、式場で見た子ども達の足元は皆新しい靴。ものすごく不機嫌になりいじけた。

そんな記憶をもとに、「こころ こいぬけんきち」という詩(のはらうた所収)ができた、と。(3行の詩。ここでは省略します)

もちろん出来上がった「作品」(詩や童話)だけを鑑賞することも楽しいのだが、その時の作者の思いを知ることができると、さらにその作品を「深く」味わうことができると思う。

……ある意味、「作品」をご自身で「解説」してくれているようにも思える。

以前『まるごと好きです』(ちくま文庫・1月24日のダイアリーを参照のこと)を読んだときに感じた「作者像」とはまた違った、「繊細な部分」や「苦労したこと」をうかがい知ることができ、作者を多角的に見ることができ、実に興味深い本だった。