ガーベラ・ダイアリー

日々の発見&読書記録を気ままにつづっていきます!
本の内容は基本的にネタバレです。気をつけてお読みください。

ささき まき さく・え 「やっぱりおおかみ」 

2006-09-06 | こんな本読みました
どうしてこの本が<こどものとも>傑作集(福音館書店)に?
そんな疑問をずーっと抱いていた。

子どもに読み聞かせをしていて、子どもたちはどう感じるのか?
……正直言ってわからない。
子どもたちも、自分の感想を言語化するのはなかなかむずかしいことだと思う。

でもたまに持ってきたのだ。この本を。「読んで」と言ってー。

そして、笑うのである。
おおかみが「け」というすて台詞の場面で。

このおおかみがまた、不気味。
目がない。口がない。鼻がない。。。
全て真っ黒。顔だけでなく、身体も。
影のようなおおかみなのである。

「どこかに だれか いないかな」
「なかまが ほしいな」
と言って、この世にいっぴきだけ生き残ってしまったこどものおおかみが、街の中をうろつきまわるのです。

しかしどこに行ってもなかまがみつからない。
うさぎのまち、やぎのまち、ぶたのまち、しかのまちー。
そして、おおかみがそれらの動物に近づくと、彼らはそそくさと逃げていってしまう。
そしてそのたびに、おおかみは「け」と言いながら、ちがうまちへとさまよい歩く。

歩いても、歩いても、ひとりぼっちのおおかみー。

ある時、空から真っ赤なレモン形の「気球」がどこからともなくやってくる。ビルの屋上にひとりぼっちでいるおおかみのところへー。
まるで、おおかみを違う世界へ誘うかのようにー。

おおかみは、その気球に乗ってしまうのでしょうか?

その気球を目の前にして、おおかみはひとことこう言うのです。

「やっぱり おれは おおかみだもんな おおかみとして いきるしかないよ」

そして最後には、いつもの台詞「け」と、空に小さくなって消えていく気球に言い捨てるのです。

どうしておおかみは、気球に乗らなかったのでしょうか?
なかまをさがすために、どこへ行くとも知らない気球に身をゆだねることをせずー。

「そうおもうと なんだかふしぎに ゆかいな きもちに なってきました」という言葉と屋上から見たたくさんの家の絵とともに、この絵本は終わります。

これだけの話です。
文章はほんのわずかです。

でも、なにかこころにひっかかる……。

この最後のひとこと。
これに、おおかみの「おおかみとして」生きていく決心がこめられているように思う。どこにも逃げずに。自分と向き合いながら。生きていくー。

余談だが、著者は女性だと思っていたので、この人の心象風景ってどんななんだろう?とすごく不思議に思っていた。

が、某雑誌で著者が男性と知り妙に納得した。写真からは少々神経質そうな印象を受けた。そういえば、作家村上春樹氏の著作にイラストをつけていたこともあったと記憶している(佐々木マキというネームで。タイトルど忘れ)。

……正直いって、あまり好きではなかったこの絵本。
何度か子どもに読み聞かせをしていたらある日ふと、おおかみの気持ちが心の中にすーっと入ってきてしまった。

……だから(絵)本っておもしろい……。