しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「大いなる遺産」  ディケンズ

2015年01月05日 | 読書
「大いなる遺産」  ディケンズ   新潮文庫    上・下巻
GREAT EXPECTIONS          山西英一・訳

フィリップ・ピリップ(ピップ)は、両親を墓石でしか知らない。
鍛冶屋のジョー・ガージャリに嫁いだ年の離れた姉に育てられるが、姉は癖のようにピップやジョーを叩く。
ピップが9歳の時のクリスマス・イヴの夜、墓地で脱獄囚の男と出会い、驚かされて食糧とやすりを届ける。
しかし、その脱獄囚は他の脱獄囚と共に捕まる。
監獄船に引き立てられて行く時、その脱獄囚はピップが家から黙って持って来た食糧を自分が盗みに入って盗ったと話して行く。
やがてピップは、上町の大きな屋敷で隠遁生活を送っている、ミス・ハヴィシャムの遊び相手として呼ばれる。
ミス・ハヴィシャムの屋敷には他に親類が何人か詰めかけていたが、ハヴィシャムはそれを無視していた。
ハヴィシャムの居る部屋は日も差さず、時計も止まり古びた婚礼道具が置かれていた。
ピップは同じ年頃の美しく高慢な少女エステラと出会う。
エステラは養女で、ピップに対して蔑みの気持ちを隠さなかった。
ピップは、定期的にミス・ハヴィシャムの元を訪れ、エステラとトランプをしたり、ハヴィシャムの散歩の手伝いをするようになる。
ピップは紳士になる事に憧れ、鍛冶屋の仕事や無知なジョーを恥ずかしく思うようになる。
やがて、ピップの元にロンドンの弁護士ジャガーズが訪ねて来て、ピップが莫大な遺産を相続する見込みになっていると告げる。
その財産の所有者は、ピップがロンドンで紳士となる教育を受ける事を希望しているとも。
こうしてピップはジョーたちに別れを告げ、ロンドンに行く。
財産の所有者は身元を詮索しないようにとの条件も付けていたが、ピップはミス・ハヴィシャムだと信じて疑わなかった。







貧しい人、裕福な人、良い人、悪い人、と言うのがはっきりしている時代。
ピップは、孤独で厳しい生活の中で唯一優しい人がいて、それで救われていた。
ジョーは、字が読めなくて無知な部分もあるが、優しく自分たちの本来の生き方が見えている人。
ピップはミス・ハヴィシャムと出会う事により、違う世界を知り見栄えが良い方向へと惹かれて行く。
そこに、お金が手に入ると言う幸運が。
ピップの心の動きがとても丁寧に書かれる。
一般的は普通の人物なのだと思う。
ピップ自身はそれから何もしない。
周りに起こることに流され、翻弄されるだけ。
その分、周りの人物が面白い。
ピップの周りには良い人が多くみんなが助けてくれて、‟良かったね“と言う感じ。
ジョー、ビディ、ハーバート、ウェミック、そしてプロヴィス。
みんな自分と言う物をしっかり持っていて、生き生きしている。
ウェミックは仕事の顔と私生活とをきちんと分けて、その感じが良く分かる。
登場人物たちも、過去の出来事で絡まり合い関係している。
物語の面白さもあるが、どちらか言えば日常が淡々と進んで行く感じでもある。
その真実を明かす必要はないと言う事も重さを感じる。

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