名古屋の山友達の企画で、7月中旬に尾瀬・至仏山とその隣の武尊山に行く予定だ。
この山友達は深田久弥の日本百名山制覇を目指して、登山を続けている。現在80余座を踏破しているようだ。
送られてきた計画案を見て少しびっくりした。
彼は夜行バスで名古屋から東京に入り、朝早い時間に我が家の近くの駅まで来て、私の車で尾瀬に向かい、至仏山に登る予定だ。
その日は尾瀬ヶ原に泊まり、翌日は尾瀬ヶ原を横断して、尾瀬沼から大清水に降り、武尊山山麓にテントを張り、翌日武尊山を登り、その日の内に名古屋に帰るという。
なんとも強行軍である。名古屋の山友達も既に世間ではシニアと呼ばれる年齢に入っているが、この計画は壮年の健脚者の計画である。
若い頃は時間的な余裕がなかったし、経済面からもできるだけ効率よく沢山のピークを登る計画を立ててきた。
どうもその癖が年をとっても抜けないらしい。かく語る私も自ら計画を立てる場合は、結構目一杯てんこ盛りの計画を立てる傾向があるのだが。
ドイツ文学者でエッセイストの池内紀さんが「すごいトシヨリBOOK」(毎日新聞出版)の中で次のようなことを書いている。
「(高齢者にとって)旅行は一番、俗にいう活性化にはいい」「旅行は楽しいが、老いてからの旅では、方法に工夫を凝らした方がいいかもしれない」「その一つは一日余分に日を用意することだ」「また老いた旅では時間の余裕が大切だから欲張らない方が良い」
簡単にいうと池内さんは「年をとったてんこ盛りの旅はするな」と言っているのである。
名古屋の山友達も私もてんこ盛りの山旅計画を作るということはどういうことなのか?と考えてみた。
一つ目は「余裕を持って旅を楽しむ」というシニアの特権(お金の余裕はそんなになくても時間の余裕はある)をうまく活用することに思いが至っていない可能性があるということである。
二つ目は名古屋の山友達は片手間(失礼)である士業を行っているので、時間的に意外にタイトな可能性がある。この場合は現役とシニアの汽水域に棲息しているからハードなスケジュールになると理解するべきだ。
三つ目は~これが一番可能性が高いと私は思うのだが~てんこ盛りが習性になっているのではないか?ということだ。
年をとったからといって若い時の習性が簡単に変わるものではない。効率よく一筆書きの旅をしよう、という習性は中々抜けないのである。
その習性を変えるためにストレスを感じるよりは、しばらくはてんこ盛りでも良いか?と苦笑いしながら私は彼の旅行計画に応諾の返事を出した。
池内流の旅に至るには、我々はもう少し苦労を重ねる必要がありそうだと感じた次第。
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