金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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「定年後に起業できる人、できない人」~大江氏の記事雑感続編

2016年01月23日 | ライフプランニングファイル

昨日「定年後に企業できる人、できない人」記事に雑感を書いたが、もう一言追加しよう。

それは「執着心の強さ」である。「執着心の強い人は起業に向き、執着心が薄く淡白な人は起業に向かない」というのが私の意見だ。

四半世紀ほど前に司馬遼太郎の「戦雲の夢」という小説を読んだことがあるが、その一節が私には長いこと気になっていた。

「戦雲の夢」は大坂冬夏の陣に参戦し敗戦後刑死した長曾我部盛親を主人公にした小説である。

冬の陣の後、東西講和が整い、束の間の穏やかな日が戻ってきたある日、梅のつぼみを見ながら盛親は次のように感じる。

~梅を見ても特段の感激を覚えない盛親は同輩と自分を見くらべる。

「真田幸村は、兵略に才があるというよりも、心の底から、兵略の好きな男であるようだった。・・・後藤又兵衛は、こんどの合戦で、武将としての自分の才能を見極めたいと思っている。・・・・明石全登(たけのり)は、これが天下の合戦仕舞だと言い、生得戦さ好きのこの男は、ただ戦さをすることだけで満足している様子だった」

「おそらくかれらどの男も、梅をみれば、心のふるえるようなするどい感受性をもっているに相違ない。・・・そういう心のみずみずしいはずみが、執着を生み、執着が男の野望をそだてる。おれにはそれがない」

50代の中頃、もう一度「戦雲の夢」を読み、私は自分は幸村・又兵衛・全登タイプではなく、盛親タイプの人間だということを改めて認識した。

つまり梅をみて心が震えるほどの鋭い感性を持っていないのである。

そして兵略をビジネスや企業経営に置き換えると、幸村や全登のように「ただビジネスや企業経営することだけで満足していない」自分を発見したのである。

「そうなのだ。自分には執着心が薄い。人の競い合い、丁々発止の駆け引きに至上の喜びを見いだすほどの執着心はない」と悟ったということだ。

司馬遼太郎は盛親に「おれは平凡な男だ。・・・庶人の家にさえうまれておれば、なんの苦もなく生涯を終える男だったのだろう」と言わせる。

感受性とそこから派生する執着や野望もまた天性のものだ、とするなれば人は天性に従った生き方をした方が幸せになることができるのだろう。

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【イディオム】Relief bounce 米国株、今年初めて1週間を通じて上昇

2016年01月23日 | ライフプランニングファイル

昨日(1月22日)米国株は、日本株・欧州株の大幅上昇や原油価格の反発を好感して、大きく値を上げた。ダウは210.83ポイント(1.33%)、ナスダックは119.12ポイント(2.66%)上昇した。

日欧の株価が上昇した背景にはECBや日銀の追加緩和への期待がある。

米国株は今月初めて(つまり今年初めて)の1週間を通じての上昇となった。

ただしWSJによるとあるトレーダーは、These days are relief bounces.と言っている。Relief bounceとは「市場の落ち着きに安堵した反発」という意味。Relief rally「安堵の急上昇」とほぼ同じ意味だと考えてよいだろう。

だがこの反発が持続するかどうかは分らない。相場の格言には、Dead cat bounce「死んだ猫でも飛び跳ねる反発」という言葉もある。これは死んだ猫でも高いところから落とせば飛び跳ねるという諺からきた言葉で、弱気相場の中の一時的な反発をさす。

どんな弱気相場の中でも一時的な反発はあるし、どんな強気相場の中でも一時的な下落はあるものだ。その反発や下落が本物であるか?どうか?を見極める必要があるということだ。

まさに今はその時だろう。原油価格が底入れしたか?市場が底入れしたか?を見極めるにはもう少し時間がかかる。

まず来週のポイントは、28,29日に予定されている日銀の金融政策決定会合で日銀が追加緩和に踏み切るかどうかという点だ。

多くのエコノミストは日銀が追加緩和をしない場合はcredibility(信頼性)は低下すると指摘する。市場の好感を得るためには年間の資産購入額を20兆円引き上げて100兆円にする必要がある、という声も上がっている。

だが一つ間違うと市場に「これが最後の緩和策」というメッセージを市場に送るリスクがある。また追加緩和で投資家は一時的な安堵reliefを得るものの、国民や企業の間にさほどの楽観が広まらない可能性もある。

市場全体の不透明感が続く中、投資家としてできることがあるとすれば、「疾風に勁草を知る」ことだろう。私のポートフォリオの中でこの1カ月の間の勁草はGoogleだった。

Google株も年初来の下げ相場で値段を下げているが、市場平均や同じような傾向を持つAmazonに対して際立つパフォーマンスを示している。

下げ相場にメリットがあるならば、高過ぎた株を安く買うチャンスがくることだろう。今がその絶好のチャンスかどうかの見極めは必要だが。

★    ★    ★

相場のイディオムを知ると相場に対する理解が深まる。

最近出版した電子本

「インフレ時代の人生設計術」 B00UA2T3VK

「海外トレッキングで役に立つ80の英語」

「人生の山坂の登り方・降り方」 http://www.amazon.co.jp/ebook/dp/B00LYDWVPO/

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「定年後に起業できる人、できない人」~大江氏の記事雑感

2016年01月22日 | ライフプランニングファイル

今日の日経新聞ネット版で興味深く読んだ「定年後に起業できる人、できない人」~経済コラムニスト・大江英樹氏~について感想を述べたい。

記事の中で大江氏は「起業に向いている人」「向いていない人」を次のように分類する。

「向いている人」

1)好奇心が旺盛な人

2)何でも自分でやってみたいという気持ちの強い人

3)変化を好む人

「向ていいない人」はその逆だいう。具体的には・・・

1)変化を好まない人

2)物事がうまくいかなくてもじっと耐える我慢強さを持っている人

3)バランス感覚に優れた人

そして「起業に向いていない性格というのは無難な出世の条件にあてはまる」という。

大江氏は「優れたサラリーマンであればあるほど起業には向いていないのかもしれません。・・・・これはどちらが良いとか悪いとかという問題ではなく、自分自身の性格をしっかり見極めた上で起業が向いているかそうでないかを判断する必要があるのです」と結論付けている。

私はこの大江氏の考え方に基本的に賛成であるが、まず「司令官型」「参謀型」というもう一つの補助線を引いて考え方を深めてみたいと思う。

私が思うにビジネスマンとして優秀と思われる人には「司令官型」と「参謀型・スタッフ型」がある。

優秀な参謀と聞いて歴史好きの人ならまず思い出すのが、近代では日戦争で連合艦隊の参謀を務めた秋山真之だろう。秋山は知恵を絞り、T字戦法を改良し、それを採用した東郷長官が揺るぎない決断を持続して大勝利を得た。

~これが一般的な評価。実際には東郷長官も秋山参謀もバルチック艦隊の進路予想に悩みかなり動揺していたが、前連合艦隊参謀長島村速雄がバルチック艦隊の進路は最短距離の対馬沖航路しかないと強く進言したことが日本海海戦の戦果につながったという面がある。もちろん島村の意見を採用した後、東郷に迷いはなかったと思うが~

このことを見ると参謀と司令官では必要な資質が違うことが見えてくる。それは参謀にも司令官にも優れた判断力が必要だが、司令官には更に決断力が必要だ、ということだ。決断力とは判断したことをやり抜く力、部下をしてやり抜かせる力ということだ。

私は起業家にはこの決断力が必要なのだろうと思っている。

サラリーマンは多くの場合、強い決断力がなくても優れた判断力を持っていると優秀と言われる。だが起業家には恐らく判断力だけでは駄目で決断力が必要なのだろう。

ただしこれは大江氏のいうとおり、良し悪しの問題ではない。持って生まれた個性の問題である。判断力に優れた人はアドバイザーやコンサルタントとして決断力の優れた人に判断材料を示せば良いのである。

定年後の生き方を「起業するか?しないか?」という二者択一ではなく、もう少し選択肢を増やして考えた方が自分に合った道を探してみたいものだと考えている。

 

 

 

 

 

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始めて使うマイナンバー、紺屋の白袴ですが・・・

2016年01月21日 | うんちく・小ネタ

今年から色々な場面で必要になるマイナンバーですが、私にも初めて利用する機会が訪れました。

それは何と来月松戸市で予定している「マイナンバー制度に関する講演」の原稿料支払にマイナンバーが必要だからカードをコピーして送ってほしいという松戸市からの依頼でした。

 

なるほど原稿料の源泉徴収税を納付する時に「領収済通知書」に支払相手のマイナンバーを記入する必要があるのでしょうね。

松戸市の用紙を見てあることに気がつきました。それは「通知カード」であれば、コピー1枚で済むが「個人番号カード」を取得すると裏表2枚コピーが必要になる、ということです。

この点だけを見ると通知カードの方が便利といえるでしょう。

ところで必要になる度に通知カードや個人番号カードの現物を取り出し、コピー機にかけるのは面倒です。

そこで私は通知カードをスキャナーで取り込みエバーノートに保存しておくことにしました。

こうしておくとコピーが必要な場合にエバーノートの該当部分を印刷すれば良いのです(ただしオリジナルサイズにするためには6割程度に縮小印刷する必要があります)。

エバーノートに取り込んでおくと、スマートフォンからも見ることができますから、外出先などで急にマイナンバーが必要になった場合(あるかどうか分りませんが)さっと見ることができます。

それはさておきセミナーで講演するのに、個人番号カードを取得していないのも「紺屋の白袴」ですから、これを機会に個人番号カードをスマートフォン経由で申請しました。スマートフォンで写真を撮り、バーコードを読み込み、「個人番号カード交付申請書受付センター」から送られてくるメールからURLを開いて氏名・生年月日等を入力すれば終わりです。所要時間は5分程度でした。

もっとも写真に細かいお作法があるので、実際に個人番号カードが手元に届くまで完了したとは言えませんが。

 

 

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インドの経済成長率が中国を超える日

2016年01月20日 | 金融

中国の2015年の経済成長率は前年比6.9%と25年ぶりに低い伸びとなった。IMFによると中国の経済成長率の予測は2016年度は6.3%、17年度は6%程度に鈍化する見込みだ。

一方IMFはインドの2015年度の経済成長率を7.3%と推定した。また2016年度の成長率を7.5%と予想している。

またADBはインドの経済成長率を2015年7.4%、16年7.8%という見通しを変えていない。

世界経済全体の成長率について昨秋IMFは2016年を3.4%、17年を3.6%と予想しているからインドの経済成長率の高さが目立つ。

中国やインドの経済成長率に関するデータをどこまで信頼して良いか疑問は残るが、2015年はインドの経済成長率が中国のそれを凌駕した年となるだろう。

インドと中国の今後の経済成長を考える上で大きな着目点は人口構成の違いだ。

中国の総人口は13.6億人で人口成長率は0.45%。0-14歳の割合は17%、15-24歳は14%、25-54歳は48%、55歳以上は21%だ。

一方インドの総人口は12.5億人で人口成長率は1.2%。0-14歳の割合は28%、15-24歳は18%、25-54歳は41%、55歳以上は13%だ。

中国では高齢化が進むが、インドでは若い労働力の供給が続くことが予想され、世界経済の環境激変がなければ、インドの成長率は中国を上回り続ける可能性が高いと私は考えている。

長い歴史の中で見るとインドと中国は世界の中で飛びぬけた経済大国だった。

1500年当時のインドと中国の実質GDPは605億ドルと618億ドルとほぼ拮抗してダントツの世界1,2位だった。当時の西欧諸国合計のGDPが443億ドルだったから、インド・中国一国で全西欧を上回っていたことになる。

1870年(明治3年・普仏戦争が起きた年)でも、中国とインドのGDPは各々1,897億ドル、1,349億ドルと世界1,2位だった。第3位には米国が984億ドルで続く。当寺の日本のGDPは254億ドルで中国やインドに較べると2割以下だ。

第一次世界大戦前の1913年にはアメリカ(GDP5,174億ドル)で1位になり、中国(2,413億ドル)、イギリス(2,246億ドル)、インド(2,042億ドル)という順位だ。(データは「経済統計で見る世界経済2000年史」による)

それから100年たった2014年の世界の購買力平価ベースのGDPを見るとEUが第1位で18.1兆ドル、2位が中国で18.09兆ドル、3位が米国で17.35兆ドル、4位がインドで7.4兆ドル、日本は5位で4.8兆ドルとなっている。(データはCIA The World Factbookによる)

中国やインドがGDPの規模において西欧諸国や日本に劣後していた期間は少し長いスパンで見るとごく短期的なものだったことが分る。

このような見方をすればインド経済の伸びしろは相当大きいと考えることができるだろう。

 

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