金融そして時々山

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最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

パネルディスカッション「特派員から見た日本のメディア」

2012年11月21日 | デジタル・インターネット

昨日(11月20日)日本最大級提言型ニュースサイトBLOGOSと日本財団が主催した「外国人特派員から見た日本のメディア」というパネルディスカッションに招待されて出かけた。パネラーはニューヨークタイムズ東京支局長のマーティン・ファークラー氏とAP通信東京支局特派員の景山優理氏。

景山さんはお父さん(NASA勤務)の影響で完全なバイリンガルとプロフィールに書いてあったが、時々英語は出てくるけれど対応する日本語が出てこないことがあった。バイリンガルというよりやや英語寄りな感じ。一方慶応大学や東京大学に留学したマーティンさんの日本語は完璧。「官尊民卑」など若い人なら知らない人もいそうな言葉をすらすら使っていた。これって「氏より育ち」ってことなのかなぁ、とつまらないことに感心した。

さてディスカッションの結論的なものは冒頭に日本財団の笹川会長の挨拶もまじえてまとめると以下のようなことになるだろう。

  • 日本の新聞の劣化が激しい。とくに社説の劣化がひどい。日本の新聞で「カンボジアに自由を」などと叫んでいても声は海外には届かない。だって誰も読めない日本語で書いているのだもの。世界的な影響力を持つニューヨーク・タイムズが書くなら別だが。
  • ニューヨーク・タイムズの紙ベースの発行部数は1990年代の140万部から100万部に減少した。しかし有料無料のネットサイトの読者は4千万人で読売新聞の4倍
  • 日本の大手マスコミには「変化していく」という勇気が欠ける。自分が会社にいる間は会社は大丈夫、という条件付き危機感しか持っていない。
  • 3.11の後日本政府や日本のメディアに不信感を持った。日本のメディアは上意解脱下達を担う官尊民卑である(マーティン)

この点については「『本当のこと』を伝えない日本の新聞」(マーティン・ファクラー著)を読んでいるところなので別途ブログで取り上げたい。

  • 日本のマスコミは「特ダネ」主義でくだらない速さの競争を行っている。日本のマスコミはAccess Journalismに陥っている。
  • でも報道のスピードは大切。早くかつ質(深さとひねり)のある記事を作成できるかどうかが勝負。
  • 日本のマスコミは中途採用を積極的に行うべきだ。違うキャリアからジャーナリズムに移ってきた人が一番熱心なジャーナリストになる可能性が高い。
  • 事件や事案に関係のない個人の属性を取り上げてはいけないというのがアメリカのジャーナリズムの標準。たとえば車椅子の人が事故に巻き込まれても、車椅子が事故の原因でないかぎり、車椅子の人とは書かない。橋下市長と週刊朝日の件、朝日はおかしい。人を傷付けない、差別をしない、というのが絶対的原則。
  • インターネットはアメリカのメディアを変えた。以下は私の直感的な理解なのだけれど、インターネットの速報性に新聞は押されて、「分析面」に力を入れざるを得なくなり、週刊誌の領域に進出し、その結果週刊誌は壊滅的な状況に陥った。
  • 日本は若者が活躍できない社会になっている。若者にチャンスを与えることが大切だ。

★   ★   ★

偶然ではあるが、パネルディスカッションに出かける前、朝日新聞の勧誘員が自宅を訪ねて来た。まだ若い男性である。彼は熱心に「(私が購読している)読売から朝日に変えると景品が出る」というような話をする。私は「僕は景品欲しさに新聞を変えることはない。朝日さんの思想の傾斜は僕の傾斜角に合わない」とお断りした。将来のある若い人がこのような仕事をしていることに私はもったいないと感じた。

しかしこれが日本の新聞販売の前線の姿である。大型・高層マンションの居住者が増えたり、リタイアして複数の新聞を取る人が減ったりで今後日本の新聞宅配は急速に減っていくはずだ。また最近は若い人で「ネットで読むから新聞は取らない」という人も増えてきた。

宅配に支えられて、横並びで緊張感のない記事を書いていても高給が貰えた時代はやがては終わりに近づく。

ネット上で「金を払っても読みたい」記事をリーズナブルな価格で提供できる新聞社だけが生き残りうる時代が日本にも必ずやってくる。ただしその時期を正確に予告することはまだ神の領域の作業であるが。

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