金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

色々勉強になるインド株投資

2008年06月06日 | 株式

新興国投資が盛んな時代だから、インド株やインド投信に投資している人も増えている。しかし好調だったインド株も今年の1月にピーク(Sensex指数で20,500程度)を付けた後、急落し少し戻しつつあるが16,000手前で喘いでいる。投信の基準価格が急落して驚いている人もいるだろう。私もインドには株式投信と個別銘柄をADRで投資しているので、時々マーケットを見る。株式相場に騰落は付き物なので、一喜一憂する必要はないと思う。むしろ今のところは長期的にパフォーマンスを上げる、そしてその間にインド株を通じて世界経済のダイナミズムや分散投資の妙味を学ぶことが出来たら良いという程度に考えている。

少し前にデカップリングという言葉がはやった。これは米国の景気が悪化しても、成長力の高い中国やインドはそれ程影響を受けず、世界経済は停滞期に入らないというものだった。デカップリングとはDecouple。Deは「否定」「分離」を示す接頭語だから、カップルを切り離すという意味だ。ところでインド経済が米国経済の影響から独立しているか?というと中々難しい問題だ。

影響をもろに受けている一例はインド経済を牽引する情報産業だ。私はインドのITを代表するInfosys TechnologyのADR(米国預託証券)に投資しているので時々株価を見るが、Infosysの株価は米国景気とドル・ルピー為替レートと密接な関係がある。米国景気が後退すると、Infosys等インドの情報企業にアウトソースを行っている米国企業の受注が減るので、投資家はインドIT企業の業績悪化を予想する。このため一時60ドルを越えていたInfosysのADRは32ドル台まで下落した。その後売られ過ぎということで、値を戻し今は50ドル近くなっている。プラス材料はインド・ルピーが対ドルで急速に安くなったことだ。ルピー安はインドIT企業の増益要因なのだ。

ところでどうしてルピーが急落したか?というと、穀物価格の上昇に伴うインフレ懸念だ。昨年秋には3%台で落ち着いていた卸売物価指数は12月頃から上昇し始め3月には8%になり、この水準で推移している。

インドは来年5月に総選挙を迎える。インフレは政府に対する不満を高めている。政府は国民の不満を抑えるため、原油価格の値上がりを消費者に転嫁することをつい最近まで抑えていた(6月4日に少し値上げをしたということだ)。ガソリン価格を引き上げないということは、原油精製業者に補助金を出すことを意味し、それは財政悪化につながる。

財政悪化といえば、政府は数百万人の公務員の給料を引き上げることを約束している。またモンスーンで被害を受けた農民のローンを免除することも約束している。これらは財政赤字につながる。モルガンスタンレーによると、今年の赤字はGDPの9.4%になるという(以前はGDPの2.5%程度に抑えていたので、本当だとすると大変な赤字だ)

インフレと財政赤字拡大に嫌気がさして、海外投資家がインド株を売ったのでインド株の急落が起きたということだろう。インド株の株価収益率はピークでは28倍にも達していたので、水準訂正が起きても不思議はなかった。

インド株は色々と勉強材料を提供してくれる。

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