昨日大津は唐崎のKKRホテルに泊まりに行った。大学山岳部の同期会に出席するためだった。
昨日今日と三月下旬並みに暖かく気だるさが募った。
春の琵琶湖周辺はある種の寂しさが漂う。芭蕉は「行く春を近江の人と惜しみけり」と詠んだ。唐崎に船を浮かべて人々と去り行く春を惜しんだという。
大学時代は神戸と京都に住んでいたので、山の帰りは朝湖東平野を列車で走ることが多かった。夜行列車を使っていたからで、列車から比良の山並みが見えると「ああ、帰ってきた」と感慨を持ったことを思い出す。
それは無事に山登りを終えたという安堵感と疲れと名状しがたいある種の脱力感が混じった気分で一言でいうと気だるさに近かったろう。
特に雪深い信州の春山から帰ってきて、湖東平野の苗代を見るときなど殊にその思いを強くしたものである。
同期会をセットしてくれた幹事さんが、私のそのような想いを推測して唐崎のホテルを選んだとは思わない(幹事さんは国家公務員だったので割引のきくKKRホテルを選んだと思う)。
だがその選択は良かった。琵琶湖の夜景を見ながら盃を傾けていると夜は瞬く間に更けていく。山の猛者だった連中も四捨五入すると古希と呼ばれる年齢に近づいてきた。
過行く歳月を愛おしみながら盃を傾けるのに春の琵琶湖畔ほどふさわしい場所は少ないだろう。