上信甲とは聞きなれない言葉だが、上州(群馬県)、信州(長野県)、甲州(山梨県)をまとめてみた。今週初めの大雪の特徴は、この上信甲の県境付近に湿雪が大量に降ったことだ。この県境をなしているのは、日本の大分水嶺である。尾瀬方面からほぼ東西に連なってきた大分水嶺は草津白根山で直角に曲がり、碓氷峠を越えて甲武信ヶ岳に至り、そこでまた直角に曲がり八ヶ岳を目指す。2千メートル級の山が連なる大分水嶺にはもちろん冬は雪が降るが、浅間山(碓氷峠の北)以南でこれほどの大雪が降ることは珍しい。
私は近年の冬はこの方面に山登りに出かけることが多い。たとえば昨年の年末は大分水嶺の少し東に位置する両神山に出かけたし、つい一週間前は浅間山に近い高峰高原を歩いてきた。冬にこの地域を歩く理由は「寒いけれど、雪が比較的少なく、晴れた日が多い」からである。典型的な冬型気圧配置の場合、北西の風が吹く。日本海をわたってくる湿った風は北アルプス北部の山や頸城山塊に大量の雪を降らすが、それよりも南の地域に大雪をもたらすことは少ない。
今回この地域に大雪が降った理由は太平洋側を低気圧が通り、湿った風がこの地域に吹き込んだことによる。今年は気圧配置が例年とはかなり異なる様だ。異常気象は日本のみならず世界各地で起きている。英国では観測史上最大の洪水が起きている。各地の異常気象は世界的な気候変動を示唆しているのではないだろうか?
一方我々の日常生活はコンビニエンスストアの積極的展開や通販ネットワークの充実で便利になり、食料品や生活必需品を備蓄するということが少なくなっている。だが今回の上信甲地域の大雪を見て、私は多少食料品などを備蓄しておく必要があると考えている。高齢者にとっては脹脛程度の深さの雪でも結構歩き難く、都会でも物資の調達にお困りになられた方がおられるだろう。
今年初めに世界経済フォーラムは10大リスクの6番目に異常気象をあげている。お守りのつもりで多少の食料品や水を手当しておくと良いと思う。自宅とマイカーの中に、である。