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金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

「知的ストレッチ入門」~私の再読読書術

2012年09月16日 | 本と雑誌

【一人テントは読書の時間】

14日金曜日の夜は戸隠キャンプ場に一人でテントを張り、チビチビとハイボールを飲みながら、ゆったりと流れる時間を味わった。

暗くなってきたので車のテレビを見ようか?と思ってスイッチをひねったがテレビが映らない。カーナビについているテレビはワンセグでキャンプ場は圏外だったのだ。そこで少し早いが読書タイムにする。静かなテントの中で本を読むとはかどる。いや、最初は静かだと思っていたが、夜の帳(とばり)が降りると自然は饒舌なことに改めて気がつく。カラマツの枝をサワサワと揺さぶる風の音。カラマツの林の中には小川が流れていて、水のせせらぎが聞こえる。戸隠牧場からは牛の鳴き声が聞こえてくる。これらをバックグラウンド・ミュージックに本を読み進む。親しい友だちと焚き火を囲み酒を酌み交わす一夜も良いが一人でページをくる夜も悪くはない。

【知的ストレッチ入門読後感想】

山に来る前に本棚を見ていたらこの本が目についた。2年程前に買ってサッと読んだ文庫本だがもう一度読んでみることにした。私はこの手の本(ハウツー本というのかな?)は余り買わないのだけれど、当時著者の日垣隆さんに共感するところがあったので買った次第。余り買わないハウツー本だけれど、買った時はさらりと読んで手っ取り早く利用できるところは利用し、その後は暫く本棚に寝かせておく。そして再び読んで「置いておく意味がない」と判断した場合は処分し、時間がたっても役に立つと判断した場合はまた暫く手元に置くことにしている。

IT技術の発展など変化の早い時代に数年間耐えるハウツー本というのは多くはない。

さてこの「知的ストレッチ」だが、平成18年に単行本として刊行され、大幅に加筆修正され平成22年に新潮社から文庫本になった。iPhoneやツイッターのことは文庫版で追加されているが、今はやりのFacebookについては一言も触れられていない。だから読む意味がない、という訳ではない。むしろFacwbookのことなんか書いてなくても、時代の流れを越えた背骨のようなものがあるのか?というのが僕の関心事だった。

テントの中で読んで興味あり、と感じたところを幾つか紹介しよう。

  • 教養や知性というものは、たいてい羞恥心によって培われてゆくものなのかもしれません。恥ずかしいと思わなくなったら、おそらく進歩は止まってしまいます。
  •  

  • 仕事には、早く大量に処理することに価値がある仕事と、その人にしかできない仕事の2種類があります。・・・・このような仕事の2分類は、個人にだけではなく、企業にも当てはめることができるでしょう。・・・どんどん忙しくなる企業というのは、安くて大量生産という構造の中に搦めとられてしまって、そこから逃げられていない可能性が非常に高い。これは、個人にとってもまったく同じことなのです。
  •  

  • 「もし忙しいからというだけの理由で走るをやめたら、間違いなく一生走れなくなってしまう。走り続けるための理由はほんの少ししかないけれど、走るをやめるための理由なら大型トラックいっぱいぶんはあるからだ」「走り終えて自分に誇り(あるいは誇りに似たもの)が持てるかどうか、それが長距離ランナーにとっての大事な基準になる。」(村上春樹の「走ることについて語るときに僕の語ること」の引用)
  •  

村上春樹の話を読んで私は本を置いた。残りは後少しで紹介するべきところもない。

山登りもランニングに似ている。頂上を登り終えて自分に誇りを持てるかどうかが基準になるのである。

敢えて言えばサラリーマン生活も似たようなものである、と私は断言する。サラリーマンの誇りとは何か?それは所属した企業への収益貢献である。「やりたかったこと」や「やるべきこと」は一文の値打ちもない。意味があるのは「やったこと」だけだ。一般に営業等フロント部門にいた人間は生涯賃金の10倍の利益をあげることが期待されていたという。生涯賃金の10倍以上の利益をもたらした人間だけが~会社における評価はどうであれ~誇りを持てるサラリーマンである。極論をいうとそれ以下のサラリーマンは会社の「碌を盗んだ」と言われても仕方がない。だがサラリーマンとしての誇りと人間としての誇りは別だ。平均寿命が伸びている現代、新しい「誇り」が必要な時代が近づいている。

だが新しい「誇り」は簡単に手に入るのだろうか?

その答は分からない。ただ私は誇りは「一生懸命走る人とともにのみある」と言いたい。一人テントの読書時間は中々良いものである。

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高妻山~弥勒新道~ハードな一日

2012年09月16日 | 

9月15日(土曜日)一人で高妻山(2,353m)を登ってきた。前日マイカーで麓の戸隠キャンプ場に入りテントを張った(駐車料金込で2千円。「5時でキャンプ場の管理事務所は閉まります」と言っていたからその後ならタダ?)

余談ながら私はこの戸隠キャンプ場が好きだ。できることなら一夏に何回も来て、山など登らずに木陰でゴロゴロしていたいと思う時がある。

さてなぜ一人で高妻山なのか?というと、高妻山には今年5月の終わりに会社の山の会の連中とトライしたが、残雪上の滑落リスクから9合目付近から引き返したので完登したいという思いが続いていた。また高妻山は2千メートル級の山ではトップクラスにハードな山だ、というのも登行意欲を誘った理由だ。夏山シーズンの終わりに好天候が続きそうなので、バタバタと出かけることにした。前回メンバーに声をかけるべきだったが、平日の急な休みは無理だろうと思い一人ででかけた次第だ。

高妻山の登山ルートは、東山麓の戸隠牧場から大洞川沿いに登り、一不動に至るというのが一般的で前回もここを登った。しかし近年ダイレクトに五地蔵山に登る近道「弥勒新道」ができたので、今回はここから往復することにした。添付地図は今回の登りルートをGPSでプロットしたものだ。必要に応じて参考にしてください。

「takatumayamatrack.pdf」をダウンロード

9月15日晴 5時42分 戸隠牧場入口より登山開始。写真左端の山が五地蔵山(1,998m)。中央の一番低いところが一不動である。

Togakushiranch

牧場から一不動に向かう登山道を歩いて行くとやがて舗装道路は終わり地道になる。地道になって数分歩くと弥勒新道の分岐に出会う。分岐といっても「右弥勒新道」と書いてある訳ではない。ここで直角に右に曲がり、牧場の中を歩いて行く。

Bunki1

数分歩くと小さな沢の渡渉点がある。

Entrance

沢を渡ると五地蔵山までブナの疎林の中の登りが続く。前回5月に来た時は下山時にこのルートを下った。その時は笹が道を覆っていたが、その後きれいに刈り払われていた。

歩き始めて40分程経った時、10mほど先の茂みでゴソゴソと音がしたと思うと、灰色の大きな動物が坂を駆け登っていった。カモシカだろうか?

カモシカがいるということは熊もいるかもしれない(科学的根拠はないが)と思い、暫く呼び笛を吹きながら歩いた。

このルートは標高1,500m付近でトラバース気味の下りが一つある以外は総て登りの連続だ。苦しいけれど尾根に出るのは早い。8時4分稜線到着(六弥勒)2時間半の登りだった。ここから高妻山に向けて小さな隆起を幾つか越えていく。隆起には写真のような祠がある。

Yakushi

因みに「一不動」「二釈迦」「三文殊」「四普賢」「五地蔵」「六弥勒」「七薬師」「八観音」「九勢至」「十阿弥陀」である。仏様がどうしてこのような順番に並ぶのか興味があるところだ。

写真は七薬師付近から撮った妙高(右端)と火打山(左)だ。

Myoukou

八観音を過ぎると視界が広がり、目の前に高妻山が標高差300mでそびえている。登山ルートは頂上から右下に下っている稜線だ。

Takatumayama

高妻山の左側に北アルプスは後立山連峰が見えた。真ん中が五龍岳、その右隣が不帰嶮、写真左は鹿島槍ヶ岳。鹿島槍ヶ岳と五龍岳の間に遠く立山が見えている(ようだ)。

Ushirotateyama

九勢至を8時51分通過。ここから300mの登りだ。日本百名山の著者・深田久弥は次のように書いている。

「五地蔵から二つのコブを越えて、高妻山への長い登りは急峻で、実に辛かった。ようやく頂上に達して私達の喜びは無上であったが、もう(北隣の)乙妻まで足を伸ばす元気はなかった。

10時十阿弥陀に到着。ここが頂上か?と思いきや本当の頂上は更に少し先だった。

Amida

頂上10時2分。先着のオジサンがシャッターを押してくれ、というので写真を撮ってあげ、お返しに私のカメラのシャッターも押してもらった。今年の夏山登山は写真の「オレンジ色長袖シャツ+下着丸首速速乾シャツ」「半ズボン+CWXタイツ」で通した。長く暑い夏の間に剱岳、鹿島槍ヶ岳という名峰を幾つか登ったが、登頂のハードさという点では高妻山が一番ハードと私は感じた。

Kitanotabibito

頂上はガスの中。期待していた眺望はゼロ。

10時20分下山開始。急峻な登山道には下草整理で刈られた笹の葉や軸が残っていて滑り易い。登山道にはリンドウが咲き誇り、疲れを癒してくれる。

Rindou

登りに越えてきたコブの内、薬師の登り返しがきつかった。13時20分戸隠牧場到着。

牧場入口の蕎麦屋で「おろし蕎麦」を食べて14時に車を自宅に向けて出発。18時自宅到着。夏山シーズン最後のハードな登山は無事終了した。
Cow


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