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山好き金融マン(OB)のブログ
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ヘッジファンド、リターンが悪くても年金基金はやめられない

2012年04月03日 | 投資

投資の失敗というより詐欺以外の何ものでもないAIJと多くの代替投資マネージャーを同列に論じることはできない。しかしヘッジファンド等が多額の報酬を受け取っているわりには、余り高いリターンを上げていないことがニューヨーク・タイムズで記事になっていた。

記事が最初に取り上げたのは、ペンシルバニア州公務員退職基金で、非常に代替投資に積極的である。263億ドルの資産の内46%を代替投資に回しているが、過去5年間の平均リターンは3.6%だった。これは予定利率の8%を下回っているのみならず、公的年金システムのリターンの中央値4.9%をも下回っている。

一方ジョージア州の144億ドルの退職金システムは州法で代替投資が禁じられているので、伝統的な投資を行っていたが、過去5年で5.3%のリターンを上げた。米国の公的年金のサンプル調査によると、資産の3分の1から半分以上をプライベートエクイティ、ヘッジファンド、不動産に投資しているファンドのリターンは、それらを避けていたファンドのリターンより1%以上低い。ヘッジファンド等に投資しているファンドは4倍近くも運用報酬を支払っているのに、である。

公的年金の代替投資別のリターンを見ると、プライベートエクイティが7.2%でヘッジファンドは2.74%に過ぎなかった。同期間のグローバル債券のリターンは6.99%でグローバル株式は3.68%だった。

アメリカの公的年金が高いリスクを犯して、代替投資を行う理由は8%という高い予定利回りにある。ペンシルバニア州公務員退職基金のスポークス・ウーマンは、同基金は過去25年間で8%の予定利回りを超える8.8%のリターンを上げたと述べている。

☆   ☆   ☆

だが投資の世界では、過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスを保証するものではない。むしろ世界的に資本の期待利回りが低下しているので、アメリカの公的年金が8%の利回りを維持することは相当困難なことだと思う。

細かい事情の違いはあるものの、各国の年金基金は同じような問題を抱えているのである。

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