昨日のニューヨークの株価暴落を受けて、日経平均は一時400円以上下げていたが、引けは153円(約1.7%)の下げで終わった。市場は今日から始まるFOMCで連銀がどの様な対策を打つかを注目して、下げ止まったという見方もできる。
ところで私は前のブログで「市場は米国債の格下の影響を十分織り込んでいなかったから、格下後最初の取引日の月曜日に大きく売り込まれた」と述べたが、よく考えると、金融のプロが米国債のワンノッチ引き下げが、これ程の影響を与えるとは思わなかったことは常識的なことかもしれない。
米国債がAAAであれ、AA+であれ、実質的には世界で最も信用力の高い債務者であることには変わりはない。と信じているから「質への逃避」で米国債が買われた。
対GDP比で見ると米国の債務比率は7割(推定)としても、日本の200%よりは当然低く、AAAのドイツ(79%)や英国(77%)並みである。また中国の公表債務比率は17%程度だが、公営企業の隠れ債務などを加えると70%程度といわれている。
それ故一部の政治家やコラムニストは、「米国の米国の債務危機は支払能力の問題ではなく、政治茶番の危機だ」とか「これは茶会格下だ」と主張している。
日本では自民党の石原幹事長が今日「赤字国債に反対する理由はそうない」と述べ歩み寄りを見せている。借金の上に借金を重ねる国の債務危機が大声で叫ばれず、その国の通貨が安全資産として買われるというのも、常識から考えると不思議な現象だ。
米国の格下を理由とした株売りはパニック的な要素が強いと見るべきだろう。むしろ本当の問題は欧州の債務問題だろう。
もっとも米国の場合は軍事費など簡単に削減できない支出が多いので、財政再建の道のりは容易ではない。
ところで米国の財政悪化の大きな要因は、ブッシュ前大統領が引き起こした二つの戦争とブッシュ減税だ。ブッシュ減税では2兆ドルの財源を失った。更に米国の財政赤字が拡大した理由は、リーマンショック後の財政発動だが、リーマンショックの原因も、ブッシュ大統領のアメリカンドリーム政策の負の遺産ということができる。
つまり貧困層にまで自宅を持つ夢をかなえさせようとした政策が無理な住宅ローンを作り出し最後はバブルが崩壊したということだ。
ところでニューヨークからマーケットレポートを送ってくれるSawako Yasudaさんによると、今回米国債を格下したS&Pのオーナーとブッシュ前大統領は親しいそうだ。(以下Yasudaさんの文章を引用)
S&Pの親会社マクグロウ・ヒルの創立者であるマクグロウ家、実はブッシュ家と深いパイプでつながっていたのだ・・・・・・。両家の関係は根強く、ブッシュ・シニアのバーバラ夫人が主宰するバーバラ・ブッシュ・ファンデーション・フォー・ファミリー・リタラシーには、ハロルド・マクグロウ・ジュニア氏が名を連ねていた。現在のマクグロウ・ヒルのCEOであるハロルド・マクグロウ・サードは、ブッシュ・ジュニア時代に貿易変遷諮問委員会のメンバーに選定された経歴もある。投資会社バークシャー・ハサウェイの見通しを下方修正されたウォーレン・バフェット氏をはじめ、投資家が「ティーパーティー寄りの政治的判断を下した」と批判する理由は、こうした背景に潜んでいるのかもしれない。
S&Pが何らかの政治的意図を持って米国債の格下を行なったかどうかは不明だが、同社が「政治交渉のプロセス」を格下理由にしたことについては、米議会から強い反発がある。
それにしても、今回の格下の大きな原因がブッシュ前大統領の政策にあるとすれば、S&Pは公私を混同せず、非違を糾すべきは糾したということだろうか?