金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

お年寄りは金融商品に気をつけて

2007年01月15日 | 英語

退職した高齢者に金融商品を売り込んで手数料を稼ぐ商売が横行している。それらの金融商品は「不適切ではあるが違法ではない」だけに当局を苦慮している様だ。もっともこれは日本の話ではなく、アメリカの話であるが。しかしこれは必ず日本でも顕在化する~いや既に起きているだろうが~問題だけに少し詳しく紹介して起きたい。というのは私のブログの一つの目的が正しい金融知識を無料で出来るだけ多くの人に伝えたいということにあるからだ。

ウオール・ストリート・ジャーナルによると規制当局は、不適切な金融商品の販売に係るトラブルを量的に把握することは不可能だという。しかしその度合いは自主的な規制団体である全米証券業協会(NASD: National Association of Securities Dealers )が、消費者に「強引なセールスマンがどの様なテクニックを使って消費者のサイフを開かせるか?」を教えるキャンペーンを今年開始するところまで来ている。

強引なセールスを英語でPitchという。「投げる」のpitchだ。Pitchmanは強引なセールスマン。大体の手口は退職者の老後資金の準備に関する根深い不安に付けこんで金融商品を販売するというものだ。ウオール・ストリート・ジャーナルは実際に問題となっている商品を具体的にあげて説明している。これらのものは米国固有のものもあれば日本でも販売が行なわれているものもある。

  • 生命保険の買取 Life Settlements これは生命保険を額面以下時価以上で売却するというもの。売り手は「楽しむために生きている間に生命保険をキャッシュに換えなさい」とセールスする。しかしもしその消費者が引き続き保険を必要とするなら一度売却した保険のカバレッジを再構築するには大変なコストがかかる等問題が多いので当局が調査を開始した。また全米証券業協会はまもなく消費者に警告を発する予定である。
  • リバース・モーゲージ 生活水準を改善、長期療養保険の支払、年金保険への投資のために、自宅を担保にして借入を行なうこと。リバース・モーゲージに関してはクロージングの前に消費者は「3日間のキャンセル期間」を持っている。3日の間に気が変わった場合は消費者は理由なくノーペナルティで契約を取り消すことができるが、それを過ぎると救済措置は余りない。
  • 変額およびインデックス年金 投資信託にリンクした個人保険。税制上のメリットがあり、相続人は遺言の検認が不要というメリットがある。しかし変額年金のメリットがあるのは退職まで10年から15年の年月を持つ人で401Kプランや個人退職勘定の拠出枠を使い切った人にメリットがある。当局は退職者には変額年金は不適切な年金であると継続的に警告を発している。なお州によって異なるが、一般的には年金契約締結後10日の間、消費者はキャンセルする権利を持っている。
  • リビング・トラスト 生前信託 遺産処分を生前に定める法的手法で遺言の検認を避けることができる。ところが実際は多くの消費者の遺産は遺産の検認を必要とする金額より低い。リビングトラストの売り手は弁護士ではなく、定型化された信託書類が作られるだけなので、個別のニーズを満たさないことがある。売り手は単に信託を創設することで1,500ドルまたはそれ以上の手数料を追求している。そしてしばしば食い物になりうる高齢者の資産を知るためにリビングトラストを売り込んでいる。なおワシントン州では州の司法長官が立法府に弁護士以外がリビングトラストを販売することを違法とする新しい消費者保護法に立法を求めている。

「定型化された文章」「常用文」はBoilerplate ボイラープレート。それにしてもアメリカ人という人種も次から次と悪いことを考える人達である。そして次から次とその悪を封じる手段を考える人である。そしてまた弱者=諸費者を守るためのコンサルタントや弁護士が活躍する社会を作る人々である。

悪いことを考える人は日本でも多いが、その悪を封じ込める手段を迅速に考え、実行に移す点で日本はアメリカに劣る様だ。日本でも証券業協会や銀行協会がもっともっと消費者保護キャンペーンに務めるべきだろう。もっともそれには証券会社や銀行が退職者に不適切な(合法的であっても)Ill-suited for retirees な商品を販売していないことが大前提だが。

それにしても年を取るということは金融商品や健康関連商品・サービスなど色々な商品の食い物にされるリスクが高まる時代になってきた。強引なセールスマンPitchmanは時には我々の心の中に住む欲をくすぐり、時には恐れをかき立て色々な商品を売り込むからたちが悪い。結局のところこれらのリスクを避けるには「モノゴトに関する正確な知識を蓄え、欲と恐れを押さえバランスの取れた判断をする」ということに尽きる。年の功が亀の甲で終わらないということはこういうことなのだろうが、これが出来る人は案外少ないのかもしれない。

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