エコノミスト誌によると「消費者の健康なライフスタイルを手助けするウエルネス産業が米国で大きなビジネスになる」という記事が出ていた。この記事を私は多少の自嘲と希望を持って読んだが、株式投資の上で幾らか参考になるかと思い話をしておこう。
自嘲というのはこういうことだ。実は昨年の夏頃フィットネスクラブを運営するルネッサンス(東証一部2378)の株を「値上り期待」で買ったが、株価は思惑と全く反対に低下の一途をたどっている。自己弁護をするならば、直感やチャートで買った訳ではなく日興シティのアナリスト・レポートを読み(そして同感し)、投資を行なった。レポートに曰く「日本はフィットネスクラブへの参加率が3%と低い。(米国は15%)今後健康志向や生活習慣病予防の観点からフィットネスクラブは生活に根付いたものとなり、参加者は格段に拡大するので業界大手のルネッサンス(とセントラル)は買い。ルネッサンスのターゲットプライスは3,150円」・・・・・ところが株価はレポートが出た後低下の一方で今や1,500円を割っている。
さて希望というのは日本でもフィットネスに代表されるような健康産業がビッグビジネスになるかどうかだが・・・・それを判断する上でも記事のポイントをみてみよう。
- 1079年に不動産ディベロッパーのズッカーマン氏がアリゾナ州スーソンにキャニオン・ランチという高級フィットネス・リゾートを開いたのが高級スパの走りだ。このキャニオン・ランチのケリー社長(ズッカーマン氏は今でも会長)は「ウエルネス・ライフスタイルという新しい市場カテゴリーがある」という。同社長によるとウエルネス・ライフスタイルというカテゴリーには「スパ、伝統的医薬品、代替的医薬品(漢方などだろう)、行動セラピー、スピリチュアリティ(霊魂等とのつながりを感じまたは信じることに基づく思想や実践)、食事療法、美容などがサブカテゴリーとして含まれる。
ここでキーワードのなるのはHolistic approachだ。ホリスティックとは全体的という意味でHolistic approachとは全体観的医学アプローチの意味だ。ケリー社長によると「ただ単にフィットネス、医薬品、スパを提供するだけでは顧客を満足させることはできない」という。
もう一つはBalancedバランスだ。複数の調査によると米国の成人は4人の内3人が彼等の生活がバランスから外れていると感じている。従って彼等によりバランスが取れていると感じさせる商品やサービスを提供する巨大なチャンスが存在する訳だ。
私事だが我が家の長女も「やれ、マッサージだ」「やれ、アロマセラピーだ」とウエルネス産業のお世話になっている。大学での留学を含めて7,8年アメリカで暮らしているのでバランスの欠如までアメリカナイズしてしまったのかもしれない。
また「治療よりは予防」を重視することでヘルス・ケアコストを下げようという動きもウエルネス産業に弾みを付けている。とはいえ問題がない訳ではない。
- ウエルネス産業にとって一つの困難さは複数の異なった分野で運営を行なう専門性を獲得することだろう。もう一つはまじめな科学と蛇の油を混ぜるような業界において信頼性を維持することだろう。
蛇の油Snake oilは関節痛に効く漢方薬だそうだが、英語でより一般的な意味は「いんちき薬」だ。
- 消費者にウエルネス商品を売る上で問題~または機会?~となることは、消費者が欲しがるものの中に一時的な流行品や無意味なものが含まれているということだ。
そういえば昨年夏頃テレビで杜仲茶を取上げたら、一時的に杜仲茶がバカ売れし店頭から消えてしまったことがあった。私も近所の自然食品店に頼んで取り寄せてもらったことがあったが、いつの間にか皆杜仲茶を省みなくなっている。これなど一時的流行faddishの見本である。そういえばアメリカのインターネットバブル時代に医薬品情報サイトを立ち上げて時価総額10億ドルになった企業があったがすぐ倒産したそうだ。なおエコノミスト誌によると今回のウエルネスブームは前回のように短期間でしぼむことはないだろうということだ。
さて私の株式投資の話に戻るがルネッサンスはここまでくればもう一段下げるならナンピンを入れてでも保有しておきたいと思っている。世の中の同世代の人達が一段と健康志向を高めることを期待しておこう。それにしてもアナリストレポートというものは当てにならないものだなぁと思った次第だ。