金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米紙、日本企業の業績悪化を予想

2005年04月28日 | 株式

ウオール・ストリート紙は昨日「日本企業、業績悪化」(Corporate Japan Faces Trouble)という記事を発表した。

主旨は以下のとおりであるが、このような見方が欧米投資家の間に共有されるとしばらく日本株の頭は重いものになるかもしれない・・・・・

Ø         ここ数年日本企業の収益は、米国と中国の需要で支えられてきたが、両市場の売上弱含み懸念から日本企業の成績が大敗となる可能性が出てきた。昨年度業績と今期業績予想から輸出面のトラブルが浮かび上がってくる。

日本企業の業績発表は来週ピークになるが、そこでトラブルの方向がより明らかになって来るだろう。確かに昨年世界の景気は冷え込んできたが、幾つかの日本企業は良好な決算を示している。日産とホンダは史上最高の収益を上げたし、ソニーは昨日グループの営業利益が15%増益したと発表した。しかしソニーの中核であるエレクトロニクス部門は製品価格の下落から340億円の損失を計上した。日産は今年度の営業利益の伸び率をたった1%と予想している。しかしゴールドマンのアナリストは昨年の決算に現れていない要素を割り引いて今期は減益と予想する。ホンダは今期の最終利益は7%減少すると予想した。

他の自動車メーカーと同様、日産、ホンダも原材料高と消費者の購買意欲を減少させる米国の金利高という良くない兆しに面している。ゴーンCEOも「2005年は特に不透明である」と言っている。

Ø         3年連続で増益した後、日本企業は事業環境の悪化~円高、原油・金属等素材価格の上昇~に直面している。

Ø         ドイチェ証券の武者ストラテジストは、東証上場企業の純利益は今年度10%減益になると予想している。彼は東京の他の市場ウオッチャーより少し悲観的かもしれないが、今年度が昨年度よりタフな年であることについてはウオッチャー達が合意するところだ。野村證券は約400社の大企業(ラージキャップ)~金融セクター外~の税引前利益は昨年度19.7%(一昨年度は23.2%)増加したが、今年度は6.1%の増加であると予想する。

Ø         自動車メーカーのような輸出依存企業は最大の打撃を受けるが、金融・不動産・建設等は若干明るい見通しだろう。

Ø         労働市場、消費者ムードの改善や一部の土地の価格上昇にも係らず、日本ではデフレが持続している。

Ø         東京のコア消費者物価は4月に前年比0.5%下落した。日本銀行は本日午「後物価・経済情勢の展望」を発表するが、デフレに関する見通しは前回よりも悪化する見通しだ。

Ø         サムソンやGMのような世界企業の第1四半期決算が不調だったことは、北米市場の売上不振と中国での利益の急激な減少を示すもので、日本企業も同様のリスクを抱えていること示唆している。東芝やNECは前期業績の引下げ見直しを発表した。

Ø         J.P.モルガンの日本株ストラテジストVail氏は「ハイテック企業には大きなダウンサイドリスクがあると考える」と言う。

Ø         日本の13月のアジア向け輸出は前年度比1.4%減少した。メリル日本のエコノミスト・コール氏は「日本の中国向け輸出が減少すると、日本は一層困難になる」「2002年以降の日本の経済成長の35%は直接的にアジアとの貿易~大きな部分は中国~に牽引されている」と言う。

以下は記事には出ていない話であるが、経済が弱含むという予想の一方で、目先若干の円高(対ドル・ユーロ)傾向にあるのは、人民元切上げ予想に引っ張られている面が多い。人民元の先物取引市場から推定すると、現行レート(1ドル=8.278元)に比べ1年先物は約5%元高になっている。

人民元が「何時切上げられるのか?」「そもそも切上げるのか?」については、中国当局の明確な意思は表明されていないが、世界銀行の勧告を含めて固定相場制への批判は高まっている。

中国元の為替制度の改革がアジアの通貨切上げを先導するというスペキュレーションで円高が起きていると見ておいて良いだろう。

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