金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

中国とインド~その基本的データの比較~(2)

2005年04月12日 | 国際・政治

「ChinaVSIndia.pdf」をダウンロード

現在のインドの経済状況は、約15年前の中国~つまり天安門事件直後の中国~のそれと同様のレベルという見方がある。その時点では中国とインドの購買力平価で計算したGDPは拮抗していた。その後のGDP成長率は中国が9.7%、インドが5.8%であり、差は拡大している。また中国が少子化政策を取ったのに対しインドの人口の伸びの方が大きい。

従って一人当り国民所得では、現在中国はインドの約2倍になっている。

インドの人口増加率は年率1.6%と中国の約倍である。このままのペースで行けばインドは2035年頃には中国を抜いて世界最大の人口を持つ国になる。だがこのままの経済成長ペースでは、インドはBRIC4カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国)の中で何時までも、最賓国の位置を抜け出せないだろう。

インドは中国に追いつくことができるのだろうか?

その命題を考える前に最近のエコノミスト誌から両国の状況を示す基本的なデータを表(添付ファイル)にして見た。

次回以降はそれらの数字を元にもう少し細部を見ていくことにする。

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中国とインド~二つの大国のゆくえ~(1)

2005年04月12日 | 国際・政治

教科書問題に端を発する中国の反日デモが話題になっている。中国の反日的行動が続くかどうかを判断するには、日本と中国の問題だけを見るのではなく、もう少し視野を広げて中国の経済・外交活動を見る必要があるだろう。

その一つは「中国とインド」の関係だ。411日インド訪問中の温家宝中国首相は、シン・インド首相らと会談し経済関係の強化等について関係強化の基本合意を行った。

その内容については後程コメントするとして、中国の動きは「インドを含む周辺国との関係を改善しつつ台湾・日本にはハードポジションを取る」というものだろう。

ところで中国の指導者の頭の中にあることは何か?

それについて以下の3つの仮説をおいて考えると分かり易いような気がする。

  • 経済発展を持続して、貧困層の減少を図り国内を安定させる
  • 台湾・チベット等の独立運動を徹底的に阻止する
  • 東シナ海を中心にエネルギー・鉱物資源への経済的権益を確保する

一連の反日行動もこの文脈の中で捉えていく必要があるだろう。

ところで中国とインド~このアジアの大国がどのように行動していくか?

これは少し先の日本の政治・経済に今よりもはるかなインパクトを持ってくることは間違いない。

また「中国とインド」について基本的な理解を持つと、ビジネス面のみならず個人でも投資の地平線が広がるかもしれない。

暫くの間連載の形で「中国とインド」の現状と将来を論じてみたい。

第1回目は「関係強化の基本合意」についてである。

まず温家宝首相は、インド周辺のパキスタン、スリランカ、バングラディッシュ訪問のクライマックスとしてインドを訪問したことだ。これは中国がある種のインド包囲網を固めて本丸のインドを訪れたということを意味する。

ところでこの件に関する日経新聞の4月12日記事には極めて重大な誤りがある。それは「中国はインドの国連安保常任理事国入りへの支持を表明」したという記述だ。

ファイナンシャルタイムズ紙によれば中国は明確な支持を表明していない。他の情報と合わせて考えると、事実は今中国は韓国・イタリア・パキスタン・アルゼンチン・メキシコとともに「日本・インド・ブラジル・ドイツ及びアフリカ2国の常任理事国入りに反対をしている」ということだ。その様な不一致点を残しながら、経済面や「国境紛争の解決方向」について合意を見たということだ。

基本合意時のコメントによれば

  • 中国・インド間の二カ国間貿易は、現在総貿易額の僅か5%の136億ドルに過ぎない。(それでも2000年度には30億ドルだったので随分拡大しているが)
  • 中国の二次産業の優位性とインドのサービス・ソフトウエアの優位性のシナジー効果を狙う。
  • 2008年までに二カ国間貿易を200億ドルに、2010年までに300億ドルにする

ということだ。

しかし中国とインドは色々な点で極めて異なる。

例えば

  • 中国は共産党一党支配だが、インドは民主主義国
  • 中国は積極的に外資特に直接投資を積極的に受け入れてきたが、インドはそれ程外資導入に積極的ではなかった。またインドでは間接投資が圧倒的に多い。
  • 中国は製造業主導、インドはサービス・ソフトウエア主導

等々

この2つの潜在的大国がどのような経路を取って経済発展を続けるか?ということに思いを巡らせることが日本の政治・経済の将来を考える上でも益々重要になってきた。

(次回へ続く)

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