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追憶の彼方。

思いつくまま、思い出すままに、日々是好日。

トランプと地に落ちたアメリカ…(2)

2018年03月19日 | 国際政治

トランプの暴言や、国家の重要ポストを担う人材「コーン国家経済会議議長に続く、テイラーソン国務長官」の辞任・解任のニュースが後を絶たない。
愈々トランプのアメリカ・ファーストはアメリカ・ワーストへの坂道を転がり始めた感がある。世界中の誰もが自分の周りで何かが起こっても、アメリカよりまだましだと言い出しかねない状況が近付きつつあるのではなかろうか。
国務長官後任のポンペオCIA長官に対してトランプは「膨大なエネルギーと知性」があり「われわれは常に波長が合う」との見解を示して歓迎した。
ポンペオはトランプが支持していた水攻め拷問の張本人であり、イランとの核合意に反対するなど反オバマの急先鋒と言う点でもトランプと歩調が合うのだろう。
しかし私が問題だと思うのはこの人物が福音派クリスチャンの中でも右派に属し全米ライフル協会の永世メンバーだと言う点である。(ペンス副大統領も福音派、共和党支持層はWASP(プロテスタント)が中心である。)
アメリカは言うまでもなくキリスト教国家である。アメリカ人の78.4%がキリスト教徒、内51.7%がプロテスタント(30%が福音派)、23.9%がカトリックである。

トランプは2019年末迄としてきた在イスラエル米大使館のエルサレム移転を国連総会大多数の反対を押し切ってイスラエル建国70周年の今年5月に前倒しすると発表、遂に「イスラエルの首都はエルサレムである」と事実上の宣言を行った。
ロシアのように東エルサレムをパレスチナの為に残しておくと言うような配慮はしていない。何れシーア派とスンニ派の対立が落ち着けばエルサレム問題はアラブとの大きな地雷原になることは間違いない。
この様な危険な行動を敢えてとる背景にはペンス副大統領、ポンペオ新国務長官のようなキリスト教福音派が政権の中枢を占め、福音派その他の右寄りのプロテスタントが共和党を支持していることが大きく影響している。
アメリカのキリスト教福音派は、聖書の言葉を厳格に守ることを教えの柱としている。
その聖書にはイスラエルに関する記述が次のように書かれている。“主はアブラムと契約を結び、こう言った。『この地…カナンの地…をあなたの子孫に与える』”。  福音派はこの記述を“神がイスラエルの地を、アブラムの子孫、ユダヤ人に与えた”と解釈しパレスチナの地は元々イスラエルのものだと主張しているのである。
紛争の原因は聖書は無誤・無謬だと言う硬直的な考えから来ている。
トランプはベストセラーとなったトランプ政権内幕の暴露本「炎と怒り」の指摘に過敏に反応し「自分はビジネスマンとして非常に成功し、テレビのトップスターにもなった。初の試みで大統領にもなった。
賢いのではなく天才だ。非常に精神的にも安定した天才だ。」…、通常自己評価と客観評価の乖離は20%程度、こんなに差がある人物を支持する人間が40%近くもいるアメリカ社会、福音派が代表するキリスト教社会とは一体何だろう。

註1「無謬」:教理や道徳に関する聖書の言及において、誤って導くことがないこと。
  「無誤」:聖書の歴史的、科学的言及において、誤った内容のないこと。
註2 聖書によれば…神はアブラムにあなたのの子孫にカナンの地を与えると約束。
  アブラムの子イサク、イサクの子ヤコブは神からイスラエルと言う名を与えられた。。
   
地に落ちたアメリカ…(3)
キリスト教福音派…聖書の世界の大罪 に続く


トランプと地に落ちたアメリカ

2018年03月10日 | 国際政治
トランプが大統領に就任した直後の昨年2月初めに書いたブログ「アメリカ白人社会の素顔」の中で次のような感想を記した。

「……トランプの支離滅裂・異常な言動に酔い痴れ熱狂的にサポートするアメリカ人が多数いることが分かってくると、今迄、心の片隅に多少の疑念を抱きながらもアメリカを中心とする欧米諸国を文明先進国と崇めてきた一種独特な思い入れが一挙にはげ落ちてしまったというのが正直な感情である。もはやアメリカは文明の鑑でも、世界の模範国・理想像でもなかったことを自ら明示してしまった様な気がする。……」

トランプの直情的な異常行動は大統領選中と何ら変わるところは無いが、その後ろに控えているペンス副大統領や共和党が否定はおろか嫌な顔もせず黙認している様子を見ていると,アメリカは理想の国、偉大な国であり続けて欲しいという微かな思いも完全に吹き飛んでしまって、今迄思い描いて姿は残念ながら矢張り全くの虚像であったということを改めておもい知らされたと言う他はない。

アメリカに蔓延する軽薄な大衆文化がトランプを大統領を生み出した一つの要因であると言っても過言ではない.メデイアリテラシーに乏しく軽薄大衆文化にどっぷり漬かったプアーホワイト達こそがトランプの強固な支持層であるが、その軽薄な大衆文化の蔓延に一役買っていたのが誰あろうトランプ自身だったというのは真に皮肉な話である。

トランプがホスト兼プロヂューサーを務め、「素人」を集め金を渡しビジネスをやらせて、無理難題を押し付ける、ダメとなると"You are fired! "といって脱落させていくという低俗極まりない有名なテレビ・リアリテイ番組、「アプレンティス」(「見習い」の意味)。
この番組こそがトランプ支持者をお茶の間にくぎ付けにし大統領への階段を作り上げたことは間違いない。

3月6日米経済政策の実質的な司令塔・コーン経済会議議長が鉄鋼製品などに高額関税をかけると言うトランプの方針に反対し辞任した。
過去1年役職を外れ、或いはホワイトハウスを去った幹部スタッフは38%(64人中24人)、異常な数字である。
トランプが一年間に発した嘘や誤解を生む主張は2000回を超えるとワシントンポストが報じている。誤りが証明された嘘まで何度も平然と繰り返すのも含まれている。
高額関税も例外は認めないと言った舌の根も乾かぬうちに友好国日本、オーストラリアは例外とするなど一貫性が無く、全くの支離滅裂。
具体策無しの大統領令を連発し結果責任は一切負わない。各論は各担当大臣に任せてある、という言葉がしょっちゅう出てくる。
メキシコ国境の壁の建設をメキシコの負担で行う、TPPから離脱すると高らかに宣言した案も具体策は無く最近ではTPP復帰の発言すら聞こえてくる。
要するに、理念・哲学などはなく、只々思い付きの、無理難題を自分の閣僚に押し付けておいて思い通りの結果がでないと、最終的には"You are fired! "と叫ぶ。これはまさにトランプが得意とする「アプレンティス」のホワイトハウス版ではなかろうか。
ロシア疑惑等トランプのスキャンダルに巻き込まれる危険性と併せ考えれば‘’やってられない‘’と自発的に身を引く人も後を絶たないだろう。


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支離滅裂なトランプ

2018年02月12日 | 国際政治
gooブログにはブロガー宛にメールで一年前に書いた記事が届き、思い出を振り返ってその感想記事を書くというシステムが有る。
一年前の2月11日に「アメリカ白人社会の素顔」と言う記事を書いたというメールが届いたので読み返してみたところ、トランプの人物像が結構正確に書かれていて驚いた。
大統領就任一年目、最初の年頭教書を出したがそれも含めて再度彼の人物像に触れて置きたい。
雑誌「世界」一月号…中村寛氏の〈周縁〉の「小さなアメリカ」連載第4回「アメリカの社会学者テリー・ウイリアムズとの対話」の中で紹介されている作家フィリップ・ロスのトランプ評価は「人間的に貧しい」という強烈なものである。
「ニクソンやブッシュにも危機感を感じたが、2人ともトランプ程人間的に貧しくはなかった。  政治や歴史、科学、哲学、アートについて無知で繊細さやニュアンスを認識・表現もできず良識や上品さが欠落し、知っている語彙数は77語で英語というより間抜け語と呼ぶにふさわしい」。
更にテリー・ウイリアムズはアメリカの根底に厳然として存在してはいたが、抑制され前面化することが少なかった白人至上主義の覆いを取り払って表面化してしまった。
トランプのアメリカ1Stは白人アメリカ1St、永遠にアメリカ白人に繁栄を意味しており恐ろしい状況であると述べている。
更に同氏はトランプは典型的な詐欺師だと指摘する。
「It's beautiful, It's gorgeous, It's the best thing in the world , We’ll make America great again!」
これらの簡単な言葉を何度も繰る返しサポーターを催眠状態に陥れる。その結果彼が何を言おうと何をしようとサポーターは信じ続けることになる。
トランプが未だに4割弱の支持を得ている要因の一つとして催眠状態から覚醒しないサポーターがいることは事実であろう。

トランプ大統領を生み出したものはアメリカの経済格差と大衆文化の軽薄さ、知識や情報の欠如が組み合わさって誕生したものであるという批評家の言葉を紹介している。

何やら日本も似たような状況になりつつある。


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安倍友学園問題で明らかになった国政の問題点…ⅲ

2017年07月14日 | 国際政治
森友学園問題はしたたかな似非教育家の猿芝居に愚かな政治家達ががまんまと乗せられ、行政まで動員して、国費の無駄遣いを行った全くくだらぬ私的茶番劇であった。勝者はただ一人、半分逃げ腰・へっぴり腰の国会答弁で白を切りとおした次期国税庁長官である。(ただ世間の失笑を買い、社会的な評判を落としたことだけは確かである。)

加計学園問題は安倍首相や側近等取り巻き連中が絡む私的な関係を利用した利益誘導・利益供与等の問題が指摘されており犯罪性が高いと言わざるを得ない。
韓国朴槿恵大統領が政治権力の私物化で弾劾・罷免された。政治権力の私物化は政治の腐敗そのものであり、民主政治の根幹に関わる問題である。
加計学園の代表は安倍首相が自ら述べているように腹心の友であり、安倍夫人も含めた家族的付き合いのある人物である。又側近の下村博文安倍第二次文科大臣夫人も安倍夫人同様加計学園のPR活動に関与する等公私共親密な間柄である。自ら出来ないことを夫人を使ってやっていると非難されても仕方がない。
下村氏は加計から多額のパーテイ券購入名目での不正献金疑惑が取り沙汰されている。
又国家戦略特区推進の要で、官邸の中心人物である萩生田光一官房副長官が、加計学園系列の千葉科学大学での客員教授を務めており、加計トップとも極めて親しい。更に同大学学長の木曽氏が内閣官房参与として本件にも拘わっていることも明らかになっている。これだけの状況証拠が揃っていて加計学園に決まったことに一点の曇りもないなどと云う事は常識的にあり得ない。

これだけ親密な関係にある当事者であれば認可する方も申請する方も疑いを持たれぬように慎重な対応で臨み、場合によっては辞退するぐらいの矜持があってしかるべきだろう。
文科省の担当者から出た文書も彼等が想像して書いたことと突っぱねているが、通常このようなメモを残す場合、悪意でない限り相手が言ってもいないことを言った如く書く事などありえないのではないだろうか。


岩盤規制に風穴を開ける為、獣医学部の国家戦略特区の要件として作られた所謂「石破4原則」。加計学園への認可の際にこの条件がクリアーされたのか堂かが検証されるべきポイントであるが内閣府から明確な説明がなされていないし時系列的に見ても加計ありきで進められてきたことが窺い知れる。
官邸は警察権力迄私的に使って、前川前文科事務次官の行動まで調査し、スキャンダルを仕立て上げて口封じに躍起、見苦しいととしか言いようがない。相手を倒すには何でもあり、民主党政権時代小沢代表を抹殺しようとしたのと同じ手法である。

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仏マクロン政党の圧勝と米英大国の衰退…Ⅳ

2017年06月26日 | 国際政治
トランプはアメリカ・ファーストを実現する為の一環として、地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」からの離脱を表明した。オバマ前大統領が進めた石炭・石油等化石燃料への規制を緩和しこれら産業の復活によって雇用の拡大を図るというものである。
自動車産業は厳しい環境基準や安全基準を克服する事を企業戦略の最優先課題として各社競って技術開発を進めた結果、周辺産業も含めて膨大な技術革新を生み、自動車産業はもとより社会、経済の発展に大きく寄与しているという事実に気付くべきである。

化石燃料への回帰により期待される雇用の増大など微々たるものである。一時の人気取りで代替エネルギー開発の技術の遅れ、それにより長期的にみてアメリカ経済の生産性・経済成長へのマイナス効果に加え環境破壊やその対策に要する費用・労力等考えれば国家・社会が被る損失の大きさは計り知れないだろう。

「Make America Great Again」
トランプのこの叫びに酔いしれたプワー・ホワイト達は下記の様なトランプの経済政策を知って何と感じたのだろうか。
① 巨額の財政出動による公共投資
② 富裕層や企業に対する大規模減税
③ 金融規制の緩和・撤廃
④ 保護主義的通商政策
確かに10年間一兆ドルに昇るインフラ整備等への公共投資はオールドエコノミーの復活で短期的に経済成長率を引き上げ雇用創出に繋がるが、これが中長期的な潜在成長率を引き上げることを期待するのが難しく、巨額の公的債務だけが膨らんで後世に付けを残す,日本の例でも明らかである。
 
最近米議会に提出された税制改革案の中心は
①法人税率を35%から15%に引き下げるが、トランプの様な個人事業者の所得にもこれが適用されるとしている点に注目する必要がある。又富裕層に対する最高税率を39.6%から33%への引き下げも含まれる。
②相続税の廃止。
が中心である。
オバマケア廃止・代替案や金融規制の緩和等も併せ考えると明らかに富裕層優遇、低所得者いじめとしか見えない。
富裕層が豊かになればトリクルダウン現象の効果て低所得者層にもその恩恵が及ぶと言うレーガノミックスの幻想を信じているとすればトランプを熱烈支持をしたプアーホワイトにとって哀れな結果しか招かないだろう。アメリカ・ファーストは格差拡大、トランプ・ファーストであることが明白となった。
欧州貴族達の不平等な社会は民主主義に反するとして高い所得税(一時は最高82%)と相続税(一時最高70%)が導入され、レーガンでさえ出来なかった相続税の廃止に踏み切ったのである。
アメリカ社会は何処へ行くのだろうか。

トランプ氏が行わんとする巨額の公共投資や減税、保護貿易政策は一部の労働者に短期的な所得増をもたらし得るが、それらは痛みを一時的に和らげる麻薬に過ぎない。麻薬は格差是正やその長期的な是正に必要な経済成長を阻害しアメリカの体力を奪う事になるだろう。