今や、4人に1人が高齢者という時代である。笹木家も例外ではなく、隣接した4世帯のうち、3人に1人が65歳以上だ。
「テレビの音が大きいね」
我が家の1階に住む義母は耳が遠い。補聴器は頭痛がするからと言ってつけず、音量を最大の50にしてしまう。ニュース番組を見ているのか、バラエティ番組を見ているのか、2階にいてもわかるほど音が大きい。この頃は暑くて窓を開けているから、近所迷惑になっているのではないかと心配になる。
「うるさいから、ボリューム下げてくる」
息子である夫が動き、やっと音が小さくなる。でも、5分も経てば、義母は注意されたことをすっかり忘れ、また音量を50に戻すのだ。
高齢者とのつきあいには根気がいる。
夫も高齢者だから、従兄弟たちも高齢者である。先日はこんなことがあった。
「ルルルルル、ルルルルル」
義母宅の電話が、これまた最大音量で鳴り響いていた。音が大きいと、「ブブブブブ、ブブブブブ」と聞こえて耳障りだ。しかし、義母の耳には届かず、いつまでも鳴り続けている。
「しょうがないな。取ってくる」
夫が贅肉のついた腰を上げ、電話を受けにドスドス歩いて行った。すぐに、しかめ面で戻ってきた。
「ダメだよ、ピーッって音がするだけで、誰だかわからない」
「ああ、それはFAXだね。おばあちゃんちの電話にはFAXがついていないから、送信できないのに」
普通だったら、エラーが出た時点で諦めるはずなのだが、この人はそうではなかった。「またダメだった、今度こそ」と考えたのか、繰り返し繰り返し、何十回もFAXを送り続けるのである。
「ブブブブブ、ブブブブブ」
「ブブブブブ、ブブブブブ」
「ブブブブブ、ブブブブブ」
聞こえの悪い義母は気づかないが、2階の私たちにとっては相当なストレスだった。これはたまらない。
どうしたものかと思案していたら、今度はうちの電話が鳴り始めた。
「ピー、ピー」
FAXだ。送信者を見ると、夫の従兄弟になっている。従兄弟同士の交流会を企画したので、ぜひ来てくださいとの内容であった。
「わかった、おばあちゃんのFAXも、こいつが送ったんだ。いつも実家にかけてくるヤツだから」
うちに届くとわかれば、それで一件落着となるはずだったのだが……。
「ブブブブブ、ブブブブブ」
「ブブブブブ、ブブブブブ」
相変わらず、1階の電話が鳴っている。受話器を取れば「ピー」。もし、例の従兄弟だとしたら、FAXの届いた番号を忘れてしまったとしか思えない。
いい加減ウンザリして、義母の電話機の音量をゼロにしてしまった。もう解約した方がいいだろう。
呼び出し音は聞こえなくなったが、やはりテレビの音は聞こえてくる。
「5日は夕方から雨でしょう」
今度は天気予報を見ているらしい。夫がまた、お腹の肉をブルルと震わせ、義母のもとへ向かう。
高齢者の相手は、本当に根気がいる……。
↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「テレビの音が大きいね」
我が家の1階に住む義母は耳が遠い。補聴器は頭痛がするからと言ってつけず、音量を最大の50にしてしまう。ニュース番組を見ているのか、バラエティ番組を見ているのか、2階にいてもわかるほど音が大きい。この頃は暑くて窓を開けているから、近所迷惑になっているのではないかと心配になる。
「うるさいから、ボリューム下げてくる」
息子である夫が動き、やっと音が小さくなる。でも、5分も経てば、義母は注意されたことをすっかり忘れ、また音量を50に戻すのだ。
高齢者とのつきあいには根気がいる。
夫も高齢者だから、従兄弟たちも高齢者である。先日はこんなことがあった。
「ルルルルル、ルルルルル」
義母宅の電話が、これまた最大音量で鳴り響いていた。音が大きいと、「ブブブブブ、ブブブブブ」と聞こえて耳障りだ。しかし、義母の耳には届かず、いつまでも鳴り続けている。
「しょうがないな。取ってくる」
夫が贅肉のついた腰を上げ、電話を受けにドスドス歩いて行った。すぐに、しかめ面で戻ってきた。
「ダメだよ、ピーッって音がするだけで、誰だかわからない」
「ああ、それはFAXだね。おばあちゃんちの電話にはFAXがついていないから、送信できないのに」
普通だったら、エラーが出た時点で諦めるはずなのだが、この人はそうではなかった。「またダメだった、今度こそ」と考えたのか、繰り返し繰り返し、何十回もFAXを送り続けるのである。
「ブブブブブ、ブブブブブ」
「ブブブブブ、ブブブブブ」
「ブブブブブ、ブブブブブ」
聞こえの悪い義母は気づかないが、2階の私たちにとっては相当なストレスだった。これはたまらない。
どうしたものかと思案していたら、今度はうちの電話が鳴り始めた。
「ピー、ピー」
FAXだ。送信者を見ると、夫の従兄弟になっている。従兄弟同士の交流会を企画したので、ぜひ来てくださいとの内容であった。
「わかった、おばあちゃんのFAXも、こいつが送ったんだ。いつも実家にかけてくるヤツだから」
うちに届くとわかれば、それで一件落着となるはずだったのだが……。
「ブブブブブ、ブブブブブ」
「ブブブブブ、ブブブブブ」
相変わらず、1階の電話が鳴っている。受話器を取れば「ピー」。もし、例の従兄弟だとしたら、FAXの届いた番号を忘れてしまったとしか思えない。
いい加減ウンザリして、義母の電話機の音量をゼロにしてしまった。もう解約した方がいいだろう。
呼び出し音は聞こえなくなったが、やはりテレビの音は聞こえてくる。
「5日は夕方から雨でしょう」
今度は天気予報を見ているらしい。夫がまた、お腹の肉をブルルと震わせ、義母のもとへ向かう。
高齢者の相手は、本当に根気がいる……。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
テレビの音が大きいのはちょっと困りましたね。ウチではリビングに電話があるのですが、別の部屋にいると取りそこねてしまうことがあります。
ボリューム最大はかなりのものです。不快に思っているとは言え諦められる身内ならともかくご近所は相当のものかと(経験より)
ちなみに私は嫁が30以上にするだけで喧嘩になります
私も長く音楽と言うものに携わっておりますが、『音』と言うものは人によって感じ方が全く異なる面白いものですね
高齢者との付き合いで大変なことの一つはこの音。
うちの母も50まではいかないけど、40いくつ。
うるさいよ~。
先日の携帯電話騒ぎも、実は家の中にあったの。
私が自分の携帯からかけて鳴らしたのですが、聞こえなかったって…
そして電話がかかっても、ボリューム下げずに話してるし・・・
時間つぶしのためだけなら、あんなに大音量にしなくてもいいのに?
そう思うのは、まだしっかり聞こえる立場だからこそ?
本当にうるさくて困ります。
でも、音を小さくすると、聞こえなくなるようで、結局元通り。
その繰り返しですが、息子である夫の仕事だと思っています。
責任をとってもらわないと…。
高齢者との生活がこんなに大変だとは知りませんでした。
もし、私が隣家の立場だったら耐えられませんね。
頭に響く音量ですもの。
夏や冬で閉め切った室内ならば、さほど音漏れしないと思うんですよ。
でも、この気候では…。
私はテレビを見ないので、老後も静かに読書などをして暮らす予定です(笑)
穏やかな老後~♪
ああ、携帯電話は見つかったんですね。
本当に落としていた、うちの夫とは違っていたようで。
高齢者とのつき合いは、YUMIさんのほうが上級者。
私はまだまだ初心者です。
何かあると、オロオロしちゃいます。
こちらの両親のときに、役に立つものでしょうか。
余談ですが、私は携帯の通話音量を最大にしないと聞き取りにくいです。
あらっ、同じようなものでしょうか。
高齢者の性質は、さほど変わらないんですね。
目も耳も不自由になり、大変そうです。
そのうち、足腰も弱って動くのが面倒になるとか。
そうならないように頑張らなくては。
呼び出し音は変えられないのかな~、豆腐売りとかラーメン屋とか竿竹売りとかに…(笑)
町内の婦人部の役員も皆さん70代ですが、なぜか話が合います(笑)
というわけで私のブログも高齢者モードに入りました。
4人に1人どころか最近は還暦、古希、喜寿と取り揃え、今度は米寿が欲しくなってきましたよ(*^^*)ポッ
もちろん若い方が良いに決まってますが
呼び出し音は変えられると思いますが、通話が成り立たない状況なので、解約するのが一番かと。
70代の奥様方と話が合うのなら、モテてモテて大変でしょうね。
実は、今日は父の喜寿のお祝いをします。
話が通じるか、ちょっと心配(笑)