これは したり ~笹木 砂希~

面白いこと、妙なこと、不思議なことは、み~んな私に近寄ってきます。

ついでの幸運「ダリ展」

2016年12月04日 21時52分24秒 | エッセイ
 秋から冬にかけて、観たい展示が目白押しだ。
 デトロイト美術館展、ラスコー展、モードとインテリアの20世紀展などなど、せっせと美術館・博物館通いをしている。それなのに、職場の同僚と情報交換をしたものだから、ますます増えてしまった。
「シマダ先生、何かおススメの展覧会はありますか」
 シマダさんは、59歳の紳士で英語科教員である。若冲展のよさを教えてくれたのは彼だったので、感性が似ているのかもしれない。
「ダリ。ダリ展がよかったです」
「へ、ダリですか? あれって、シュルレアリスムでしたよね。マグリットがダメだったので、好きになれないかも」
「いやいや、マグリットよりもずっと上手いですよ。わけわかんないのもありましたが、そうじゃないのも多いですから、時間があれば行ってみてください」
「はーい」
 ダリ展は国立新美術館で12日まで公開している。行くなら早い方がいいだろう。
 2日の金曜日は、大きな会議が終了して肩の荷が下りたので、どこかに出かけたくなった。
「よしっ、ダリ展に行ってこようっと」
 そんな勢いで、乃木坂までひとっ飛び。行け行け~!
 ダリは1904年にスペインに生まれ、1989年に亡くなっている。つい27年前まで生きていたのだから、若い画家である。てっきり、19世紀に活躍したのかと勘違いしていた。構図や色彩に、モダンな印象を受けるのは当たり前だ。
 ピカソに影響を受け、キュビスム風の自画像などを残していることは知らなかった。1929年にはシュルレアリスムの仲間入りをするが、ヒトラーへの共感を公言したことから、1938年には除名されている。空気の読めないヤツだったのだろう。
 でも、ダリの人気は相当高いものだったらしい。除名後も、国際シュールレアリスム展などには必ず招待されていたというから恐れ入る。
 1929年には妻となるガラに出会い、互いに強く惹かれて、1934年には結婚している。ガラをモデルに描いた作品も多く、運命の人に出会えたダリを羨ましく思う。
 第二次大戦中は、戦禍を避けてアメリカに亡命するが、ヒッチコックの「白い恐怖」の舞台装置を手掛けるなど、活動範囲が広がっていく。1949年には宝飾品のデザインも始め、いくつかの作品が展示されていた。私は「トリスタンとイゾルテ」というタイトルの作品に心惹かれた。
 作品全般から、ダリの魅力は、安定感のある構図と卓越した色彩感覚なのではという印象を受けた。デッサン自体は、どの画家も上手い。しかし、色の塗り方が雑だったり、「ここにこの色?」と疑問を持ったりすることがある。でも、ダリにはそれがまったくない。完璧なグラデーションから生み出される立体感も、質感も、写真以上に表現されている。この画家は、自分で名乗ったように「天才」なのである。
 気に入った作品のポストカードを購入した。
「謎めいた要素のある風景」
 小さく描かれている画家は、ダリが敬愛したフェルメールだそうだ。



 この空の大きさがうれしい。生きている限り、人間関係の悩みは尽きないが、この絵の広大さに比べたら、人の一生なんぞ米粒のようなもの。「あんたが思い悩んでいることなんて、耳垢程度のもんさぁ」と軽くいなされた気分になれる。お守り代わりに飾っておこう。
「ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌」
 これは、1945年の広島、長崎への原爆投下を受けて描いた絵だという。「あの爆発の知らせが私に与えた大きな恐怖」と説明されていた。



 混乱、破壊、喪失、虚無……。
 そういった単語が次々に浮かんできた。ピカソの「ゲルニカ」に通じるものを感じたのは、私だけではないだろう。日本人として、この絵は手元に置いておきたい。
「素早く動いている静物」
 一番気に入ったのがこの作品だ。



 意味はまったくわからないけれど、テーブルクロスやボトルの質感が素晴らしい。



 こぼれる水が、上に流れていくところも好きだ。ツバメも飛んできて、何やらワクワクしてしまう。
 シマダさんに教えてもらわなかったら、こんなに素晴らしい絵を見逃すところだった。
 危ない、危ない。
 明日、出勤したら、真っ先にお礼を言わなくちゃ。


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切り紙の神様

2016年12月01日 21時58分58秒 | エッセイ
 進路の決まった高校3年生はやる気がない。
 授業をしていても、寝てしまったり、しゃべってしまったりで、集中力もない。
 私の科目は美術系。課題を仕上げるだけで、期末テストを実施しないから、余計に勉強モードにならないのかもしれない。ないないづくしである。
「ううーん、何かもっと、モチベーションの上がる教材はないかなぁ」
 ヒントを求めて図書室に行ってみた。
「ややっ、これはこれは!」
 すぐに、いいものが見つかった。



 切り紙というアートは知っているが、難しくて見るだけのものかと思っていた。
 でも、そうではなかった。
 この本に載っている型を使えば、簡単に素敵な切り紙が完成する。
 たとえばこれ。



 折り紙を半分に折り、ハサミで絵の外側を切れば天使が登場する。



「おお~」
 ちょうど、12月になったことだし、テーマはクリスマスにした。
 さて、これは?



 ろうそくでした。



 これは、おわかりになるだろう。



 クリスマスツリーでした。



 ちなみに、星の部分を切り取るのが難しく、下手するとこうなる。



「キエ~ッ!」
 星のもげたツリーにショックを受け、思わずキジのように、けたたましい悲鳴をあげた。
 じゃあ、これは?



 リボン!



 ふむふむ。今度は難しいですよ。
 紙は6つ折りにします。



 ????



 はい、雪の結晶です。
 最後に、8つ折りにした、これはわかりますか。



 いや、全然。



 薄氷です。難易度高いっす。
 すっかり気に入り、型紙を作って折り紙に印刷する。折り目と切り取り線がわかれば、ハサミを使って、誰でも切り紙を楽しむことができるからだ。
 さて、だらけた3年生にウケるかな?
「先生、何これ?」
 生徒は目新しいことが好きだ。教材を並べておいたら、すぐに近寄ってきた。
「点線で折って、実線のところを切るの。いろいろな絵ができて面白いよ」
「ふーん」
 多くの生徒が「全種類制覇する」と意気込んで折り紙を取っている。席に着き、ハサミを動かし始めると無言になる。
「できた」
 完成した図案を広げるときの期待感といったらない。予想を遥かに超える作品が出来上がるので、生徒の顔にも笑顔が広がる。
「すごい」
「やばい」
 今の子どもは、ゲームなどのバーチャルな遊びで育ってきたから、紙を切るなどのアナログ作業は経験が浅い。手先を動かせば、次々と美しい絵柄を生み出せることに驚いているようだ。
「面白いね、これ」
 次々と折り紙が減っていく。居眠りやおしゃべりもなく、彼らはひたすらハサミを走らせていた。できた作品は紙に貼り、クリスマスらしくデザインする。中には、切り取り線をアレンジして、オリジナルの絵柄を作り出す者もいる。「やっぱりプレゼントがないとね」などとつぶやきながら。
 もしかすると、今までで一番集中した授業だったかもしれない。
 何しろ、チャイムが鳴っても、まだ作業を続けている生徒がいたくらいだから。
「先生、余った折り紙、もらってもいい?」
 家でやりたいのか、持ち帰る生徒もいて、かなりビックリする。
 今日の授業はハナマルだ。
 こんなに高度な作業を、わかりやすく本にまとめ、誰にでもできるようにしてくれた作家さんに感謝感謝。
 すっかり、イワミ カイさんのファンになった。
 紙さま、もとい、切り紙の神様と呼ばせていただきます!


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こんな賞品あったらいいな♪

2016年11月27日 21時36分51秒 | エッセイ
 地元の駅ビルでワインを買った。



 クリスマス用にピッタリ。
 ついでに狭山茶とコーヒーも購入し、ポイントをためる。10ポイントで1回福引きができるから、これで6回分だ。
「参加賞のポケットティッシュが5つと5等が1つで~す」
 いつも参加賞ばかりだったのに、今年は珍しく5等が当たった。おお!
 賞品はスーパーマーケットの商品券であった。



 これはうれしい。過去には、100均で売っていそうなサラダカップだの、強烈な香料でむせそうな柔軟剤だの、ガラクタばかりだったから、初めて使えるものをいただいた気がした。福引きのいいところは、金額以上に得した気分になれることだ。
 うっふっふ~♪
 不特定多数の客が喜ぶ品物を用意することは簡単ではない。
 もし、私が福引きを企画したら、何を賞品にするかを考えてみた。
 まず、参加賞。
 ポケットティッシュはいらない。駅前でも配っていて、ありがたみゼロだからだ。
 チロルチョコがいいな~。
 5等は、今年と同じく500円の商品券でよい。
 4等はバウムクーヘンの詰め合わせ。
 3等は富士急ハイランドのフリーパスをぺアで。
 2等は柿右衛門の一輪挿し。



 そして、1等は、ホテル マンダリンオリエンタル東京のプレジデンシャルスイートにペアでご一泊。
 すべての人を満足させることはできないから、全部、自分がもらってうれしいものばかりを集めてみた。
 柿右衛門は皿でもいいのだが、誕生日にガーベラをもらった際、うちには一輪挿しがなくて不便だった。また、弁護士の妻である友人が、数あるラグジュアリーホテルの中ではマンダリンオリエンタルが一番だと言っていたので、一度は泊まってみたい。
 何でこんな記事を書いているのかというと……。
 運よく、福引きの担当者がこれを見て、来年の賞品に反映されることを期待しているからだ。
 もはや妄想に近いけれど、必死に念力を送っています!


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12/2まで 「ガンダムオリジンⅣ 運命の前夜」

2016年11月24日 21時06分57秒 | エッセイ
 11月21日月曜日夜7時、私は池袋の映画館にいた。



 まぎれもないガンダムファンではあるが、70分の短い映画のために、わざわざ土日祝日に出かける私ではない。休みの日はジムでスカッシュをしたいから、平日の夜を有効活用することに決めている。
 相変わらず、劇場内は中高年の男性ばかり。女子トイレの空いていること、空いていること。
 夕食は他店ですませたものの、量が足りなかった。胃が大きくなったのだろうか。売店でプログラムとワッフル、カフェラテを買って席に着く。メープルではなくチョコレートのワッフルを買ったら、これがやたらと美味しかった。ムシャムシャ。
 ちなみに、寝る前に体重をはかったら3kgも増えていたから、これが原因かもしれない。
 食べながら、プログラムをめくってみる。いきなり大きな衝撃が襲ってきた。
 表紙の裏のシャアが、まるでネアンデルタール人だからだ。



 なにこれ、キイッ! 安彦センセイ、描き直してよ!!

 予想外のひどい出来。マスクを外したシャアは貴重なのだから、もっと美しく描いてもらいたい。
 映画が始まった。待ってました~!
 1作目から4作目までのおさらいが長い。5作目、6作目になったら、さらに長引くのだろうか。おそらく、劇場内にいる全員が前作までを見ているから必要ないと思うのだが。
 早々にキシリアが登場した。ザビ家の人間では彼女が一番好きかもしれない。
 今回はいまだかつて見たことのない、女子力全開のセクシードレスをまとっているのだが……。



 女装に見えてしまった。
 ごめん、キシリア。貴女は、もともと女性だったね。
 ララァも出てきた。いつもの粗末なワンピース姿で、場違いなカジノに連れてこられている。彼女はルーレットに投げ込まれたボールを見て、いけ好かない顔の金持ちギャンブラーに当たりの数字を教える役目を与えられているらしい。脂ぎったギャンブラーの背中に、細い指で数字を描いていた。
 ピタリ、ピタリと当たりが続き、ギャンブラーの前にはチップの山が築かれる。なるほど、この能力は使える。ニュータイプは、宇宙よりもカジノで戦った方がいいのかもしれない。



 戦闘もあった。ブグ、ザクが自在に空を飛び回り、大地を蹴って走る。なんと精密な映像なのだろう。実写版のようなリアルさに見入り、ここまで再現できる技術に驚いた。
 シャアが戦闘で活躍したことは言うまでもない。工事現場でブルドーザーを動かすシャアも悪くはなかったが、やはりモビルスーツが一番だ。5作目、6作目を楽しみにしている。



 アムロとフラウ・ボゥも出てきた。



 フラウは、発達障害っぽいアムロを放っておけないようだ。一緒に帰ったり、自宅にラザニアを差し入れたりと、母親のように世話を焼いている。ウザい。私は次女で独立心が旺盛だからか、他人にあれこれ口出しされるのが大嫌い。見ていてイライラした。
 でも、中華と鍋を取り分けてもらうのは好き……。
 寄せ鍋パーティーには呼ぶからね、フラウ。
 な~んて、身勝手な言い草だろうか。
 さて、いつものように、いいところで映画が終了する。早く続きが見たい。スタッフロールの後に、次作の公開予定が流れるはずだ。でも、思ったよりも遅い時期だった。
「THE ORIGINⅤ 激突 ルウム会戦 2017年 秋」
 ええーっ、あと1年待たなきゃいけないの?
 しかも、6作目の「誕生 赤い彗星」は2018年らしい。
 まだまだ、まだまだ。
 ああ、3倍のスピードで製作してくれないかなぁ……。


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『走れメロス』に思う

2016年11月20日 22時21分30秒 | エッセイ
『走れメロス』を読んだ。
 あらすじはご存じの方が多いのではないか。まあ一応、おさらいをしておきたい。
 正義感の強いメロスが、旧友に会うためシラクスという市に行くが、どうも人々の様子がおかしい。聞けば、人を信じられぬ王が、毎日のように人を殺しているのだいう。激怒したメロスは、王を殺すために短剣を携えて王城へ乗り込む。しかし、警吏に捕えられ、あっけなく囚われの身になってしまう。このままでは当然、処刑される。
 死を恐れぬメロスではあるが、婚礼を控えた妹が気がかりだった。両親はとうに亡く、妹の婚礼を無事にすませるまでは生きていたい。王に「3日待って欲しい。もし、3日後の日没までに戻ってこなければ、旧友を絞め殺すがいい」と持ち掛けると、受け入れられた。
 しかし、3日間はあまりにも短かった。メロスは夜通し道を急いで妹の元へ戻り、婚礼の準備を整え、花婿を説得して強引に式を挙げてお祝いするが、必死で走っても、旧友の処刑までに間に合うかどうか……。

 明らかに、期限の設定ミスである。王が「3日で戻ってこい」と言ったわけでもないのに、なぜ3日にしたのだろう。4日にしておけば、もっとゆとりがあったのに。もっとも、「死にたくない」という気持ちが、たとえわずかでもあれば、戻ってくるのがギリギリになることに変わりはないだろうが。
 そもそも、なんの勝算もなく王城に乗り込むこと自体が間違っている。妹の婚礼がすむまで死ねないのに、計画性も作戦も仲間もゼロで突撃するとは狂人か。だったら、婚礼を終えてからにしろよと言いたくなった。
 細かいところは気になるが、ラストは期待通りのハッピーエンド。私はこの話が好きになった。太宰という作家の暗いイメージばかりが先行し、ろくに読みもしなかったことを悔やむ。遅ればせながら、他の話も読んでみようと文庫を注文した。ついでに、ずっと欲しかったPCメガネも追加する。
 今日は墓参りに行くため、9時半に家を出た。途中でコンビニに寄り、PCメガネと文庫の代金を払う。これで、商品の出荷手続きが行われるはずだ。
「いい天気だね。俺も行くよ」
 23日は義父の命日だ。娘と2人で墓参りに行こうとしていたら、息子である夫も珍しくついてきた。外出が嫌いなので、父親の墓には一度しか行ったことのない親不孝息子である。血のつながっていない妻が行くのに、実の息子の自分が行かなくてどうする、と奮起したのかもしれない。
 戻ってきたらジムが待っている。荷物を置いて支度をしていたら、夫が「何時になるの?」と尋ねてきたので「6時」と答えておいた。
 今日に限って、スカッシュのコートが予約で埋まっていた。私が取れたのは40分後のコマで予定が狂う。結局、帰宅が6時半になってしまった。でもいいのだ。私はメロスではないから、帰りが遅くなったからといって、何かの罰が待っているわけではない。存分に体を動かし、すっきりして帰ってきた。
「おかえり。荷物が来ているよ」
 おお、朝、代金を振り込んだから、日没には商品が届くのか! さすがはヨドバシ。いつも早い。3日後どころか即日到着である。
 段ボールを開けると、PCメガネと



 太宰の文庫本が2冊入っていた。



 しかし、本は後回し。まずはPCメガネを試してみる。
「うわあ~、目が疲れない! すごいねぇ、これ」
 PC操作の多い私には、ありがたい一品と感動した。太宰なんぞいつでも読める。私は目を労わりたいのだ。文庫本は出窓の積読に移動する。
『走れメロス』は、「人を信じることの大切さ」と説いた小説なのであろう。
 同時に「人のために全力を尽くすことは幸せ」と、「全力を尽くせる相手がいることは幸せ」という作家からのメッセージが込められている気がした。
 ベストセラーばかりを追わず、たまには明治にタイムスリップすると新鮮でよい。


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予約とりましょ

2016年11月17日 21時08分30秒 | エッセイ
 赤坂迎賓館は美しい。



 2月に前庭のみ見学したが、まだ内部を見たことがない。一体、どうなっているのだろう。
「ママ、迎賓館が映っているよ」
 一日テレビ漬け、ほぼ引きこもりの夫が私を呼んでいる。リビングに行ってみると、迎賓館の本館や別館、主庭、歴史などを特集した番組が放映されていた。金色をふんだんに使ったインテリアが、小型のヴェルサイユ宮殿を連想させる。
「ああ、きれいだな……」
 夫がジリジリとテレビに近づき、至近距離からじっと画面を見ている。どうやら気に入ったようだ。しばらく海外旅行もしていないから、刺激を求めて迎賓館に行きたいのだろうと察した。
 HPを見ると、今はwebでも予約ができるらしい。ただし先着順。たまには家族3人で出かけるのも悪くない。整理券をもらって入場することもできるが、並んで待つのはイヤなので、予約開始の10時に合わせて、大学生の娘に予約をとってもらった。
「10時ジャストに申し込んだよ。多分大丈夫でしょ」
「ありがとう!」
 ほとんど役に立たない娘だが、スマホを使う場面では活躍することもある。クリスマス後なら仕事を休めるから、帰りはニューオータニでランチを予約して……。
 そこまで考えてから現実に戻った。あれ、私、娘に3人分って言ったっけ?
 確認すると、案の定、2人分しか申し込んでいない。いつも、出不精の夫は抜きで行動するから当たり前か。
「3人だったら3人って言わないとわからないでしょっ」
 娘にきつく叱られた。くすん。メールでだけど……。
 時間はすでに11時。間に合うかどうかわからないが、追加で1名分を申し込んでもらった。
 2週間後に申し込みの結果がわかった。
「ねえ、ジャストに申し込んだ2人分しか参観証がもらえなかったよ、どうする?」
「ひええ、どうしよう」
 そもそも、夫を連れて行こうと申し込んだのだが。
 これは内緒で行くしかない……。


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モードとインテリアの20世紀展

2016年11月13日 23時04分28秒 | エッセイ
 たまには、都心のほうに行きたいという気持ちがあった。
 美しいドレスを見たいという願望もあった。
 パナソニック汐留ミュージアムで「モードとインテリアの20世紀展」が開催されていると知り、灯りに吸い寄せられる蛾のように、フラフラと出かけていったのは自然の成り行きである。



 その日は天候に恵まれた。パナソニック汐留ビルがタケノコのようにニョキッと、青い空に向かって背伸びをしている。



 4階建てで築28年のおんぼろ校舎で働く私にとって、このビルの存在はまぶしい。きっと、豪雨のあとでも天井から雨漏りすることはないだろうし、温調機能が損なわれた古いエアコンを手動でつけたり消したりするために、何度も席を立つ人はいないだろう。そもそも、私の職場と比べること自体が間違いである。
 ミュージアムはこのビルの4階で、入口に「一部撮影のできる箇所があります」などと書かれた掲示物があった。荷物はロッカーに預けたが、大事なカメラは手に持って入館した。
 第1章は1900年から1919年である。壁には説明の文字がズラリと並んでいたが、練馬から汐留まで来るだけで疲れてしまったのでスルーする。張り合いのない客だ。
 第2章は1920年から1939年で、写真撮影可能エリアである。待ってました!
 ポール・ポワレのデイ・ドレス。普段着ってことか?



 ガブリエル・シャネルのイブニングドレス。



 マドレーヌ・ヴィオネのデイ・ドレス2種。同じ普段着でもこちらのほうが好みだ。





 これは、テニス・ウエアらしい。走りにくいだろうなぁ。



 何度も凝視したのが、海水浴用シューズである。



 どうやらこれは1920年頃の作品らしいが、もう98年も経っているではないか。いい状態で保存されていたことに驚いた。
 こちらはイブニング・パンプス。



 すっかり色褪せてしまったが、品のよさが伝わってきた。
 スザンヌ・タルボットのイブニング・コート。暖かそう。



 エルザ・スキャパレリのイブニング・ドレス。ショッピングピンクは彼女のトレードカラーだったようだ。



 マドレーヌ・ヴィオネのイブニング・ドレス、ケープ。



 エリア内では、このドレスが一番素敵だった。ブドウのモティーフは刺繍らしいが、これを見たら「ああ、ワイン飲みたい」などと思うかもしれない。
 ジャンヌ・ランヴァンのドレスは、袖の唐草模様のようなアップリケが洒落ていた。



 電気スタンドも負けていない。



 第3章は撮影不可のエリアだが、エルメスの水着とエルザ・スキャパレリのビキニは撮影したかった。
 特に、スキャパレリのビキニの柄が面白い。漫画などの怒っている場面で、こめかみあたりに描かれる「怒りマーク」らしきものが使われているのだ。どんなセンスだよ、と笑ってしまった。
 第4章にも驚くべき作品が待っていた。パコ・ラバンヌのイブニング・ドレスはアルミ製で、すき間から体が見えてしまいそう。どうやって着るのか謎だ。
 べス・レヴィンのサンダル「ネイキッド・シューズ」に至っては超絶斬新。甲にかかる部分がなく、靴底を両面テープで足の裏に貼って歩いたとしか思えない。
「汗かいたらどうするんだろう……」
 今となってはどうでもいいことだが。
 衣装の展示は楽しい。
 他にも何かないかしらと手ぐすねを引いて待っている。


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太宰治とデトロイト美術館展

2016年11月10日 21時50分32秒 | エッセイ
 ルノワールの絵も見られる、「デトロイト美術館展 クリアファイル付き前売券」を買ったのは8月のことだ。
 先週になってようやく、仕事帰りに上野の森美術館に立ち寄った。



 11月に入り日が短くなった。まだ6時半なのに、深夜のような暗さである。
 入口の掲示を見て、早々にショックを受けた。
「本日は撮影できません」
 なに? 撮影できる日があったのか!!
 どうやら、月曜と火曜は撮影可能のようだ。もっと早くにわかっていれば、休みを取ってでも来たのに、後の祭りである。ロッカーに荷物を入れ、まあいいやと気持ちを切り替えて入場する。予定を変更するのは嫌いだ。
 印象派とポスト印象派のところはまずまず。
 ルノワールは相変わらず透き通る肌の女性を描いていたし、苦手なセザンヌも「三つの髑髏」はコミカルでよい。これって本物を並べて描いたのかしらなどと想像し、ワクワクしながら鑑賞できた。
 ところが、そのあとの、20世紀のドイツ絵画がいけない。
 日本初公開が多いとはいえ、「これは失敗作か」と疑うような魅力のない絵のオンパレードであった。陰鬱でロマンのかけらもなく、夢も希望も感じさせない絶望的なゾーンとなっている。作品は全部で52点しかないのに、12点がこれでは元がとれない。脳裏に浮かんだ言葉は「金返せ」……。
 しかし、ラストの20世紀のフランス絵画で救われる。ピカソの絵が光り輝いていたからだ。気に入った作品はポストカードを購入した。「読書する女性」と「座る女性」という絵である。日本初公開のため、SNS等への投稿を禁止されており、写真をアップできず残念無念。
 他にも心を惹かれる絵があった。アメデオ・モディリアーニの「男の肖像」である。この男が太宰治に似ていて、思わずプッと噴出した。太宰の生まれは1909年だが、1916年の作品なので、彼がモデルになっているはずはないのだが。
 お時間があれば、ぜひこの絵を検索していただきたい。ファンの方からは「全然似ていないわよ!」とお𠮟りを受けるかもしれないが、観る者を笑顔にさせる魅力を感じる。
 ふと、太宰の作品はほとんど読んだことがないことに思い当たった。彼の筆力には定評がある。ちょうど、朝活の「他人の文章書き写し」がマンネリ化してきたところだ。「明日からは太宰で行くぞ」と即決した。
 図書館で借りてきた本は『走れメロス』。



 中には『富獄百景』も入っている。実のところ、『斜陽』を読みたかったので、これをクリアできたら購入するとしよう。
 いただいたクリアファイルは、ゴッホの「自画像」であった。



 裏にはマティスの「窓」が隠れている。
 消化不良感は否めないけれど、思いがけない出会いもあったから、これでよしとしよう。


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割引券利用の客

2016年11月06日 20時30分56秒 | エッセイ
 運よくゲットした、帝国ホテルインペリアルラウンジでの、アフタヌーンティー割引券を使うときがきた。
 エレベーターで17階へ。ラウンジの向かい側はバイキング会場だからか、乗り合わせたオバさん客は大声でくっちゃべり、実に大衆的だ。
 電話で言われた通り、窓際席に案内される。



 景色もまずまず。



 しかし、フォークは曇っていてナイフは傷だらけ。
 サンシャインシティプリンスホテルでウエイトレス経験のある娘が「こんなシルバーを出すなんて信じられない」と驚いていた。「割引券利用の客だからいっか」とでも思われたのだろうか。
 まあよい。細かいことはさておき、せっかく来たのだから楽しまねば。
 おススメのブレンドティーからアフタヌーンティーが始まった。



 柿とリンゴとセロリのマリネ ヨーグルトソース
 本日のスープはカボチャであった。



 これを片づけると、3段になったお料理が運ばれてきて、「イエーイ」と両手を上げたくなる。



 下の段は
 ミックスサンドイッチ
 ポテトとアーティチョークとベーコンのキッシュ
 やはり、ここからいただくのが普通だろう。
 中段は
 蓮根とスモークチキンのフォカッチャサンドイッチ
 薩摩芋のプティパイ
 蟹とポルチーニ茸のクレープ包み
 上段は
 プリンの洋梨ソース添え
 マロンのショートケーキ
 チョコレートのタルト
 チョコレートのマカロンとなっている。
 紅茶のおかわりをした。
 いろいろあって迷うが、ここは大好きなアールグレイを選ぶ。2杯目からはポットで来るので、誰かとシェアするほうがよかったかもしれない。
 3つの皿をからっぽにすると、スコーンがやってくる。
 カボチャのスコーンとプレーンスコーンが、焼きたてアツアツで運ばれてくるので、とてもうれしい。
 クロテッドクリーム、蜂蜜、ブルーベリージャムを添えていただいた。外はカリッ、中はフワッで口当たりもよく、あっという間に平らげた。
「あ、写真……」
 バスケットの中には、娘の分がかろうじて残っていた。



 メルボルンでいただいたスコーンは重かったなぁと懐かしく思い出す。ここのスコーンは軽くて、何個でも食べられそうだ。もちろん、私ではなく夫が。この時点で、かなりお腹が満たされていた。
 スコーンのあとはチョコレート。ミルク、クルミ、アーモンドがトレイに載ってやってきた。



 ちょうど、アールグレイがなくなった。メニューを見ると、日本茶やコーヒーなどもあるらしい。その中に、「とうもろこしのひげ茶」なるものがあり、目が釘付けになる。
「えっ、何これ、おもしろいじゃない。誰か頼んでみたら」
「いらないよ」
「やめとくわ~」
 ……夫も娘も保守的なので、ここは私がいくしかないだろう。



 とうもろこしのひげは捨てるしかないと思っていたので、お茶になるとは知らなかった。ほうじ茶のような香りとまろやかな味わいは、渋みの強い紅茶よりも飲みやすい。
「そう? 何か、ほうじ茶に煎餅を入れたみたいな味がして、ミキは好きじゃないなぁ」
 娘は気に入らなかったようだ。何とノリの悪いヤツなのだろう。
 3時間いられると言われたのだが、そんなに暇人じゃないし、ほどほどのところで切り上げようと時計を見た。
「来週からイタリアンのアフタヌーンティーが始まりますので、よろしければどうぞ」
 お冷のおかわりを注ぎに来たウエイターが、すかさず小さなパンフレットを差し出した。受け取ったはいいが、なぜシワとシミがついているのだろう。これも割引券利用の客だから?
 お料理やお茶は申し分なかったが、サービスの面では興ざめが続く。
「アフタヌーンティーはいろいろ食べられていいね」
 夫は無邪気に喜んでいた。
「じゃあ、今度はパレスホテルに行こうよ。あそこは重箱に入って出てくるんだよ」
「へえ~」
 ここは一度で十分だ。
 都内に素敵なホテルはたくさんある。
 よそに客をとられる店ではなく、特別な気分を最大限に膨らませてくれるところを探そうっと。


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不法侵入

2016年11月03日 21時18分00秒 | エッセイ
 最近、よくカメムシを見かける。
 リビングの壁にへばりついていたり、何日も網戸から動かなかったりして不気味だ。


  (Wikipediaより)

「ねえ、家の中にいるってことは、カメムシの巣があるのかな」
 カメムシが大嫌いな娘が不安そうに尋ねた。
「まさか。そんなことはないでしょ」
「家で卵を産んじゃったとか」
「だったら、もっといるんじゃない」
「うえ~、考えたくない……」
 東京23区といえども、我が家の庭には桜の木が1本、柿の木が2本生えているから虫が多い。おそらく、洗濯物などにとまるのだろう。老眼で大雑把な夫は、カメムシに気づかぬまま洗濯物を取り込み、家に入れているようだ。
「見た目も気持ち悪いけど、臭いから余計にイヤなんだよ」
 先日は、玄関のすぐそばにカメムシがとまっていた。礼儀正しくドアから入ろうとしているのかもしれないが、許可したおぼえはない。
 そして、今日はもっと恐ろしいことが起きてしまった。
 掃除機をかけていたら洗濯機の近くに来た。洗濯物はすでに干したあとだが、シンクにボタンのようなものが残っている。服から取れたのだろうと、右手を伸ばしてヒョイとつかんだ。
 だが、それはボタンではなく、6本の足をすべて失ったカメムシの死骸だった。
「ひええええええ」
 反射的に死骸を投げ出し、逃走する。あとは夫が片づけることを期待して。
 果たして、カメムシの足はどこに行ったのか。洗濯機でシェイクされ、バラバラになったとすれば、服やタオルについているのかもしれない。
「ねえ、お母さん。今日はベランダでカメムシを見たんだよ。ほーんと、イヤになっちゃう」
 ……娘の服についていたら大変だ。
 これ以上、キイキイ騒がれるのは面倒なので、死骸のことは黙っておこう。
 なーいしょ、ないしょ。


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ワインセミナー

2016年10月30日 22時19分51秒 | エッセイ
 星占いによると、私は今「モテ期」なんだそうな。
 幸運が次から次へとやってきて、「うほほ」と喜ぶ時期になっているらしい。
 身に覚えはなかったので、「ホントかよ」と疑わしく思っていたが、間違いではなかったらしい。
「ワインセミナーに当選されました。おめでとうございます」
 先日、こんな電話がかかってきた。たしかに、応募したことはおぼえているが、まさか本当に当たるとは。文書が送られてきて、ようやく現実のものとして認識できた。



 今回は、妹と出かけることにした。
 埼京線の車内で待ち合わせ、会場に向かう。会場であるイタリアンレストランでは、どの席も4人掛けとなっており、相席であるらしい。18日生まれは直感に優れているという話なので、「ここがよさそう」と思う席に座る。
「こんばんは」
 向かい側に座ったのは30代前半らしい女性と、60代後半に見える女性である。どちらもオシャレで感じのいい人で、私の直感は間違っていないと自信を持った。
 セミナーは、サントリー種類株式会社所属のソムリエが講師となり、進められていく。



「お酒を作るには、通常、糖分、水分、酵母が必要となりますが、ワインにはこれらを添加する必要がなく、ぶどうそのものが原料という、最も自然なお酒です」
 講師の話は、ワインの長所を中心に組み立てられているようだ。
 焼酎やウイスキーに比べるとアルコール度数が低くて飲みやすいこと、酸味があるから食事と合うこと、赤ワインにはポリフェノール、白ワインにはミネラルが含まれ、体に良いことなどを熱心に語っていた。
 次に、ワインの造り方に進む。赤ワインは種や皮も一緒に発酵し、液体を取り出して熟成されるから色が赤い。白ワインは、ぶどうをプレスしてジュースだけを搾り発酵させるから赤くない。すでに知っていることだが、改めて説明を受けると、初めて聞いたような気がするから不思議だ。
「質問いいですか」
 相席のマダムが手を上げた。
「スパークリングワインやシャンパンには炭酸が入っていますが、あれはどうやって作るのでしょう」
 それは私も聞いてみたい。いい質問である。
「作り方ですか。まずは普通のワインを作ります。これに砂糖と酵母を加えると炭酸ガスが発生するので、二次発酵をして作るというわけです」
 だが、答えにはガッカリした。つまり、私の好きなスパークリング系には、すべて砂糖が加えられているわけだ。血糖値を下げたいと思っているのに、これでは無理だろう。
 その日、いただいたワインは4種類であった。
 フレシネ コルドン・ネグロという辛口スパークリング。



 サンタ バイ サンタカロリーナという白、サンタ バイ サンタカロリーナ カベルネソーヴィニヨン&シラーという赤。



 エル・グリル マルベックという赤である。
 おかわりもできるので、すっかり酔っぱらってしまった。
 おつまみは、生ハムとサラミ、フリットと



 ピッツァであった。



 食べ盛りではないが、これでは到底足りない。ほぼ無料のイベントだから、あまり贅沢はいえないのだが。
「私はもう若くないから、そんなに食べなくていいの。もっと食べてね」
 相席のマダムが気をつかう。
「私は2階の〇〇店で働いています。よかったら今度来てください」
 30代の女性ともあれこれ話をした。二人とも気さくな人柄だったから、海外旅行や家族の笑い話を聞かせてくれて、ほんの2時間ではあるが楽しく過ごすことができた。また会えたら嬉しく思う。
 セミナーは、おしゃべりが終わったころにお開きとなる。最後の方は話し声ばかりで、誰も講師の話を聞いていなかったかもしれない……。
 おみやげに赤の小さなワインをいただいた。



「物足りないね。デニーズでも行く?」
「行く行く」
 妹を連れてファミレスに向かう。大食漢の自覚はないけれど、もうちょっとお腹を満たしたい。
 パスタは2人でシェアし、パフェは1個ずつ食べた。



 締めはコーヒー。当然だろう。
 妹とは久しぶりにたくさん話をした。義弟の仕事のこと、甥のこと、姪のこと、両親のことなどなど、親族全員がいる場では話せない話題で盛り上がり、こちらがメインだったのではという気がした。
 日頃から姉らしいことはしてあげられないので、ひとときだけでも役に立てればと思う。
「ああ、楽しかった~!」
 パフェを食べ終わり、妹が笑いながらこう言ってくれたとき、ワインセミナーが当たってよかったと感謝した。苦労していないように見えても、あれこれ重いものを抱えていることがわかったからだ。
 すっかり遅くなってしまった。妹と別れて、足早に家に向かった。
 私の中でも重いテーマが渦巻いていた。
 スパークリング、シャンパン、血糖値……。
 えーん、砂糖を加えて二次発酵しているなんて聞いてないよ。
 モテ期の幸運はどこへ行った?


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テニブスの血

2016年10月27日 21時32分53秒 | エッセイ
 中学時代は軟式テニス部に所属していた。
 しばしば「テニブス」と揶揄されたが、短い丈のスコートをヒラヒラさせて走り回れば、それなりに格好よく見える。大して上達せずに卒業したのは、練習熱心ではなかったからだ。上手くなりたければ練習するしかないのに、それが面倒で仕方なかった。今から思うと、頭の悪いガキであった。
 すっかりオバさんになってからジムに入った。真っ先に「スカッシュをやりたい」と思ったのは、テニブスの経験があったからだ。「今度こそ、上手くなるまで頑張ろう」と気合を入れる。
 スカッシュのラケットはテニスよりも小さい。



 ボールもミニサイズなので、ときどき空振りする。
 ん? もしや、私だけ!?
 コートは狭い。幅6.4m×奥行き9.8mの床は、四方を壁に囲まれている。見上げれば、高さ5.6メートル以上の天井がコートに蓋をするように覆いかぶさり、開放感はゼロである。
 でも、この狭さがいいのだ。私はコントロールが悪く、テニブス時代はよくホームランをかっ飛ばしていた。ネットから場外に出たボールを、コソコソと拾いに行くのが情けなかった。これも練習嫌いの一因かもしれない。
 それに比べて、スカッシュは球拾いが全然苦にならない。壁に囲まれているから、ボールはビリヤードのように跳ね返ってくる。この競技を考えた人は、賢かったに違いない。
 隣のコートからは「パコーン」という高い打音が聴こえてくるが、私のラケットからは「ブヨーン」という鈍い音しか出てこない。テニス崩れの打球なんぞ、そんな程度だろう。球足は遅いし、フラフラと弧を描いて、まったくスカッシュらしくない。壁打ちの練習といったほうが正しいような気がするが、ごくまれに、「パコーン」と聞こえるときもあるから、やはり練習が肝心。めげずに続けよう。
 先日、ラケットバッグを買った。



 これさえあれば、ラケット持参で出勤し、帰りにジムに寄れる。
 スカッシュのいいところは、1人でも2人でもプレイできる点だ。娘がいれば2人でやるが、彼女は私以上に下手なので、球が返ってこない。1人のときは、コントロールが定まらないから、右に左に走る破目になり大汗をかく。休憩中に、水筒を持つ手がガクガクと震えたのには驚いた。
「そうだ、素振りをしよう」
 中学時代より、今の方が10倍も100倍も忙しい。でも、なぜか練習したくてたまらない。
 フォア100回、バック100回とラケットを振ること自体が楽しい。
 ああ、テニブスの血が騒ぐ。


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ポイントで祝う誕生日

2016年10月23日 21時35分23秒 | エッセイ
 誕生日でうれしいのは「おめでとう」の温かい言葉。
 お皿に載った豪華な料理。
 加えて、丁寧にラッピングされたプレゼントがあればなおいい。
 去年は、たまっていたデパートのポイントでバッグを買った。自分の懐は痛まないし、気兼ねなく好きなものが手に入ることから味をしめ、今年は狙って貯めてみた。買い物はなるべく一か所ですませ、少額でもクレジットカードを使う。ショッピングのポイントと、引き落とし時のポイントの両方が増えていき、またまた結構な額になった。
「さあて、何をゲットしようかしら」
 物欲はさほど強くない。でも、洋服となれば話は別だ。着ていない服を整理してでも、新しい服が欲しい。
「ブラウスがもう一枚あるといいな」
 よし! ポイントカードを持って出発だ!
 ブラウスだったら、ナラ・カミーチェがいい。店員さんと相談しながら、今ある服に合わせられるデザインを探した。シックで大人っぽいものが見つかった。



 これから寒くなるから、上に羽織れるものも必要だ。ブラウスに合うカーディガンも並んでいた。



 おっと、予算オーバー。
 しかし、慌ててはいけない。夫と娘から「好きなものを買って」と現金をもらっているので、これと合併すればよい。
 かくして買い物終了~!
 デパートとは別に、スーパーのポイントもたまっている。6月からクレジットカードに切り替えた途端、ポイントがたまりやすくなり、わずか5カ月で6000以上になった。1ポイント1円で利用できるから、これを使わない手はない。
「えっと、シャンパンないかな、シャンパン」
 陳列棚を探すと、モエ・エ・シャンドンの隣にヴーヴ・クリコのハーフボトルが行儀よく並んでいた。
「きゃあ、ヴーヴちゃん♪」
 元は姉から勧められたシャンパンなのだが、口当たりがよくて私も好きになった。夫も娘もシャンパンは飲まない。私一人だけならハーフボトルで十分。これで3700ポイントを消費し、残りはチーズやスモークサーモンなどのつまみにあてた。



 ポイントの有効期限は1年。また温存して、「来年はドンペリ白19800円と交換できるかも」とたくらんだ。
 自分の財布から買うのではダメなのだ。買い物のおまけが雪だるま式に膨らみ、ブラウスやシャンパンに化けるとなると、お得感が格段に大きい。まさにこれこそプレゼントではないか。
 ささやかだけど、愉しみがあるから主婦は頑張れる。


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2016のバースデイ

2016年10月20日 21時56分29秒 | エッセイ
 珍しく夫が私の誕生日を思い出したようだった。
「ママ、ちょっと画面見て。誕生日はここで食事しようと思うんだけど、どうかな」
 池袋の鉄板焼きらしい。「お誕生日コース」なるものが映っていた。
「いいよ。楽しみ」
「じゃあ予約しておく」
 夫は今年で70歳になった。歳を重ねるごとに、ボケが進んできた感はあったが、やはり……。
 いきなり受話器をとると、私の目の前で電話をかけ始めた。
「はい、18日の火曜日19時に3名、お誕生日コースでお願いします。プレートの名前は……」
 ……それって、本人の前ですること?
 唖然としている様子には気づかない。他人の反応には無関心になり、自分の行動ばかりに注意が向くらしい。あとから娘に「何であとにしなかったのよ!」と叱られていた。
 クイズ番組を見ていても、珍答が飛び出したりする。
「北条政子」と答えるべきところで、「徳川政子だ!」と叫んだときは笑った。日本史に弱い娘が「そんな人いたっけ」と首をかしげても、「勉強不足だなぁ」と取り合わない。時代が全然違うんだが。
 しかし、美味しいものの前では、細かいことを気にしてはいけない。
「かんぱーい」
 店員からはシャンパンと言われたが、これは絶対スパークリングワイン。



 夫は飲まないし、娘はワイン系が苦手。
「へっへっへ。私が3杯飲んで進ぜよう」
 全部いただきました!
 前菜2種に





 シーザーサラダ。



 アワビ。



 茶碗蒸し。



 フォアグラ。



 オマールエビ。



 フランベするときに、ハロウィンに登場するゴーストのような炎が上がった。
 イェ~イ!



 肉はサーロインだったかな……。



 ガーリックライスのあとには



 お目当てのバースデープレートがやってくる。



 ロウソクだけではなく、花火が刺さっているところが新しい。
 バチバチ、バチバチと景気のいい音を立てて、賑やかに祝ってくれるのだ。
「じゃあ、お写真撮りますよ。はいチーズ」
 3人で記念撮影もしてくれた。
 さて、この店はORCA(オルカ)という。シャチという意味らしいが、なかなかおぼえられない。
 火の残像が強すぎて、私のイメージでは「炎(ほむら)」なんだけどな。
 ごちそうさまでした。


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土日必見「眞葛󠄀ミュージアム」

2016年10月16日 21時49分00秒 | エッセイ
 ワインディナーをいただくため、横浜まで行くついでに、寄りたい場所があった。
 今年で没後100年となる宮川香山の作品を紹介する「眞葛󠄀ミュージアム」だ。ブロ友さんに、土日しか開館していないと教わっていたので、日曜日のその日を逃すわけにはいかなかった。
「えーと、セブンイレブンの通りを直進……。あった、あそこだ」



 小さな建物なので、15分から30分で見られるようだから、終わったらエッシャー展をはしごしようと思っていた。時計は15時15分を指している。閉館は16時だし、慌てることもなさそうだ。
「こんにちは」
 建物の外には警備員の男性がいたが、来客とわかると笑顔で声をかけてきた。受付の女性も感じのよい対応で、わざわざ練馬くんだりから駆け付けた甲斐があると感じる。



 入館料はわずか500円。しかも、この日はスペシャルなオプションつきであった。
「あのう、よろしければ、ご来館のお客様に解説をしたいのですが、お時間ございますでしょうか」
 白地のシャツに、紺のコットンパンツを組み合わせた40代前半とおぼしき男性が、降ってわいたように登場し声をかけてきた。館内にいたのは私と年配の女性2人組の計3人であった。
「はい、大丈夫です」
「ぜひ」
 何だかよくわからないが、とってもラッキーなのではという予感がした。
 男性は「こんな格好をしていますが、私はこちらの館長をしている者です」と名乗り、宮川香山のエキスパートらしかった。
「香山は京都で代々焼き物を生業とする家に生まれました。眞葛󠄀が原という場所だったので、眞葛󠄀焼きという名がついています。坂本龍馬の7歳下になります」
「幕末の京都は戦乱期です。とても創作には向かず、香山は横浜に1000坪の眞葛󠄀窯を構えます」
「このジャンルでは、明治期の重要文化財が2つしかないのですが、どちらも宮川香山です。でも、香山の作品は国内にはほとんど残っていません。大部分を海外に売っていますし、横浜大空襲で3代目は亡くなっていますから」
 ああ、という落胆の声が聞こえた。惜しい人を亡くした、というのはこのことだろう。
「香山は、作風を変えていくところに特徴があります。最初は薩摩焼風で、上絵付の作品なんです。明治9年頃には高浮彫りに変わります」



「明治15年には、シンプルで落ち着いたものが好まれるようになったため、清朝の磁器がブームになりました。香山はこれを研究し、明治20年には釉薬作品でアールヌーボーの作品を送り出します」



 なるほど、「超絶技巧」の代名詞がつくのは、複数の作風でトップに躍り出た尋常ならざる技量を褒めたたえてのことか。
「アールヌーボーは曲線の美です。香山の作品は絵付けと曲線が見事に融合しています」
 そういえば、姉もこの写真が好きだと言っていた。彼女は、高浮彫はくどくて受け付けないらしい。私はどちらも好きだけれども。
 ちょうど、増上寺に貸し出し中の作品が、写真だけになっていた。



「これではない、ワタリガニの作品があるのですが、そちらが重文になっています」
 そこで、ピンときたため、館長さんに質問をしてみた。
「その作品は、サントリー美術館で展示されていたものですか?」



 このワタリガニはやたらとリアルで、お見事というしかなかった。
「正確にいうと、ワタリガニの作品は3つあるんです。ひとつは東京国立博物館が所蔵していて、2つめは田辺さんという人が持っています。サントリー美術館で展示されたものはこちらです。3つめは和菓子の源吉兆庵のものです」
「へええ~」
 明確なお答えをありがとうございます。
 顔料についての説明も興味深かった。赤や青の色は、高温で発色する。低温では違う色なのだ。何度でどの色が発色するかを試行錯誤しながら見つけ出し、美しい色彩の作品を生み出したとか。誰よりも研究熱心な方であったことは間違いない。
 明るい緑色は他の窯ではなかなか出せず、眞葛󠄀色といわれたらしい。さきほどのアールヌーボーのような色彩である。気品があっていい色だと思う。
 他にも、気に入らない作品は割っていたので、眞葛󠄀窯には磁器の破片が砂利のように敷き詰められていたこと、初代は絵も上手だったこと、ロイヤルコペンハーゲンと眞葛󠄀焼きが並ぶと「コペンハーゲンが青ざめる」と言われたことなども聞き、ますます香山が好きになった。
 解説を聞くまで、高度な技巧に気づかない作品もあった。



「下地の模様は手作業でつけているんですよ。乾燥しないように工夫をしながら、規則正しく線を入れています」
「ええっ」



 指摘され、初めて理解した。ラーメンの丼に描かれているような模様が、花瓶全体を覆っている。これを全部手でつけたというのか。何と粘り強く精密な作業だろう。私だったら、気が狂ってしまうかもしれない。まったくもって、尋常ではない。
 解説は30分ほど続いたろうか。閉館までの残りの時間は自由に見学し、お土産を買って駅に戻った。


 (ポストカード)


 (クリアファイル)

 すご過ぎて、エッシャー展にはもはや興味がなくなった。
 栗原はるみの「yutori no ku-kan」という店で休憩する。



 6種類のデザートから4種選び、飲み物つきで1080円は安い。しかも美味!
 バニラアイスクリームにベイクドチーズケーキ、プレーンシフォンケーキ、カボチャのプリンにした。



 とろける味のデザートプレートをいただきながら、入館してから退館するまでの45分を振り返る。
 今日は運がよかった。他人様のアドバイスは素直に聞くものだと実感する。この施設を教えてくれたブロ友さんには感謝するばかりだ。
 人生は宝探しのようなもの。いたるところに宝が埋まっているから、どこで何に巡り合うかわからない。
 感性を研ぎ澄まし、これからも自分の信じる方向に「エイヤッ」と進んでいこう。


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