これは したり ~笹木 砂希~

面白いこと、妙なこと、不思議なことは、み~んな私に近寄ってきます。

終業30分前のマジック

2016年07月28日 22時19分15秒 | エッセイ
 主任と呼ばれる立場になって、何年経っただろう。
 今はベテランと呼ばれる年齢であるが、30代半ばで、周りがみんな年上だったときの主任はツラかった。
「今日は9時から○○、10時から××の予定です。資料の準備をお願いします」
 打ち合わせ一つするにも、言葉に気をつかう。
「じゃあ、それは□□ってことですね」
「今やっちゃいますよ。どうせ時間あるし」
 年配の男性はまずまず協力的だったが、8歳上の女性がいけない。
「えっ今ですか? 私はイヤだな」
 よく言えばマイペース、悪く言えばワガママで、納得しないと動かないタイプだ。職員の間でも相当評判がよくない。でも、すべてに非協力的というわけでもなく、やるときはやる。じゃあ、これもお願いしようと調子に乗ると、返り討ちにあう。
 そんなやりとりを繰り返していると、徐々に彼女の行動パターンが読めてきた。
 朝は悪い人。口をへの字に結び、青白い顔でギリギリの時間に飛び込んでくる。瘦せ型の体型から低血圧なのではと察した。自分が準備をすることしか考えていないから、ここで仕事を振ると逆ギレする可能性が高い。出勤時は挨拶程度にとどめておくのがいいようだ。
 昼は普通の人。血圧が正常値となり、おしゃべりを楽しむ余裕も出てくるらしい。こちらから話しかければ、笑いながら返事が返ってくる。でも、電話の受け答えはぶっきらぼうである。
 終業前の30分だけはいい人。「もうすぐ帰れる」という喜びが心を広くさせるのだろう。自分から積極的に話しかけてくるし、机の上を整理したり雑事を片付けたりと、こまめに体を動かしている。

 仕事を振るなら今だ!

 ひらめいて、先の予定を話題にしてみる。
「○日までに、××をすませたいと思っているんですよ」
「ああ××ですか。明日、みんなで手分けしてやれば、そんなに時間はかかりませんよね」
 よかった、断られなかった。これからもこの手でいこう。
 帰る30分前に先の仕事を頼む作戦が功を奏して、気まずい雰囲気になる回数が減った。その分会話が増えて仲良くなり、16年経った今でも、彼女とは年賀状のやりとりを続けている。

 タイミングって大事だな。

 ベテランになった今でも、面倒くさい仕事は人に頼まず自分でやるなど、気をつかうことが多い。
 今日は、18時過ぎまで誰かが職場で電話番をしなければならなかった。当番は今年定年を迎える紳士である。彼は、朝には強いが早く帰りたがるタイプ。21時くらいに寝るのかもしれない。文句は言わないけれど、不満を抱え込んでしまいそうだから、代わってあげたほうがいいだろう。
「今日は何も予定がないから、私が残りますよ。定時になったら上がってください」
「えっ、いいんですか。じゃあお言葉に甘えて」
 紳士は左手を曲げて、うれしそうに腕時計をのぞき込む。もしや、ストレスになっていたのかもしれない。終業30分前には、いそいそと帰り支度を始めていた。
「あ、そうだ」
 紳士は何かを思い出したように、冷蔵庫まで歩いて行った。
「じゃあ、大好きなバウムクーヘンをどうぞ」
「わぁっ♪」
 前に、焼き菓子ではバウムクーヘンが一番好き、と発言したことをおぼえていたらしい。休憩時間にわざわざコンビニまで買いに行き、差し入れをしてくれるとは感激である。
 終業30分前は、不思議なことが起きやすい?


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脱プラスチック生活

2016年07月24日 21時24分28秒 | エッセイ
 先日、生協主催の有害化学物質削減連続学習会「環境ホルモン・プラスチック容器・ダイオキシン」というイベントに参加してきた。
 一時はマスコミでも繰り返し取り上げられた内容だが、解決したわけでもないのに、今では話題にのぼってこない。どうなっているのか知りたくて申し込んだ。
「プラスチックは有害化学物質の曝露源です」
 講師は東京農工大学の高田秀重教授である。2時間もの長丁場で、まったく退屈しなかったのは、教授の話が相当ショッキングだったからかもしれない。
 以下、わかったことをまとめてみた。
●ノニルフェノールやビスフェノールAといった物質は、女性ホルモンと非常が似ているため、細胞が勘違いして反応を起こす。
●男性は精子数が減少し、生殖器が萎縮する。
●女性は子宮内膜症や乳がんなどが増加する。
●プラスチック容器に含まれるノニルフェノールは、脂っこい食品や加熱によって溶け出し、人体に侵入してくる。
●プラスチック容器のままレンジでチンするのは危険。必ず陶器に移すなどして加熱する。
●アイスクリーム、ラップで握ったおにぎり、使い捨てプラスチックコップ、食品用保存袋、使い捨て手袋、お弁当箱などからノニルフェノールが検出されている。
●炭酸飲料のペットボトルは蓋にノニルフェノールが添加されている。
 などなど。
 
 プラスチックのあるところ、環境ホルモンもありというわけだ。人類の繁殖を妨げる大問題だし、私も娘もがんになりたくない。ひとまず、できるところから解決しなくては。
 まず、余ったご飯の処理方法だ。わが家では、ラップに包んでご飯を冷まし、冷凍保存をしている。



 食べるときは、このままレンジでチーンとなるが、これではまずいらしい。
 プラスチックではなく、耐熱ガラスの容器を購入し、ここに入れて保存することにした。



「そもそも、余るほどご飯を炊かなければいいんだよね」
「そうそう」
 この件に関しては、夫も素直に耳を傾ける。
 それから、食品用保存袋に入れたタマネギ氷。



 健康を目指して作ったものが、環境ホルモンに汚染されていたら話にならない。
 こちらも環境ホルモンゼロの安全な容器を購入した。



 ここに収納すれば安心だ。



 パーティーで余った料理を持ち帰る容器や、プラコップなども、もう使う気になれない。



 廃棄処分決定!
 アイスクリームは、ジャイアントコーンのように紙で包装されていれば大丈夫なのだろうか。少なくとも、プラスチック製品に入っているものは避けよう。
 この話には続きがあって、次回は8月に開催される。ぜひ聞きたいが、人数が多いと抽選になるからドキドキしながら待つしかない。
 高田教授は最後にこんな発言をした。
「この話を周りの人に伝えてください。なかなかマスコミには取り上げてもらえません」
 なるほど。
 あなたも、脱プラスチック生活を始めませんか。


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魔法のグラス

2016年07月21日 23時54分50秒 | エッセイ
 毎日暑い。
 しかも、7月は繁忙期。連日、帰りが9時、10時になるときた。
 バテないよう食事に気をつかい、平日はお酒も飲まない。
「今日はいいよね」
 一週間頑張ったご褒美として、金曜の夜から日曜日まではアルコール解禁となる。
 缶ビールだったら「プシュッ」という音が、景気よく響くだろうが、私はスパークリングワインかシャンパンだ。ボトルからコルクが吹き飛ぶ瞬間の「ボンッ」という音に安心感をおぼえ、コルクの抜けた穴から立ち上る水煙にワクワクする。グラスに注げば、シュワシュワと弾ける炭酸がバカンス気分を演出して、雑多な日常から解放される。
 夫はよく私のグラスを割る。わざとではないけれど、手を滑らせるのだ。
 渡りに舟か。先月開催された「有田の魅力」展で出会ったシャンパングラスに魅せられ、予算オーバーだったけれども買ってしまった。



 これは自分で洗うことにする。
 台座が有田焼でできているこのグラスは、ガラス部分が割れても再生できるそうだ。
 ロゼのカヴァを注ぎ、娘と乾杯した。
 ところが、娘の反応が悪い。
「なんか、ロゼって美味しくないね」
 白と違って、かすかな苦みや渋みのあるところが、どうにも気に入らないらしい。「そうかなぁ」と私は首を傾げ、結局、一人で2杯飲んだ。
 たくさん飲めないので、カヴァが余る。残りのボトルは、カルディで買った「シャンパンストッパー」で栓をすれば安心だ。次の日も「ボンッ」という威勢のいい音と、シュワシュワ感が健在である。安価な割に、しっかり働いてくれて、コスパが高い。



 せっかくだから、グラスの記念撮影をしようと思った。
 どうやら、この色にはロゼより白が合うらしい。背景はダークカラーがよさそうだ。暗くなりそうな足元にライトを当てると、光が液体に反射して、キラキラと輝いている。浮き上がる炭酸につられて、気分も高揚しそうな気がする。



「うん、美味しい」
 ちょっと辛口だけど、キレがあって飲みやすい。
 ん?
 こういう味は、苦手じゃなかったっけ?
 ふと、そんなことを思い出す。
 もしかして、このグラスで飲むから美味しく感じるのかもしれない。
 魔法のグラスだね。 


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たまには人間ドック

2016年07月17日 22時08分39秒 | エッセイ
 定年退職後、一度も健康診断を受けていない夫に人間ドックを勧めたのは先月のことだ。元々太っていたが、仕事がなくなり、さらに肥えて、今では霜降り牛のような体形になっている。自分でも気にしていたのか、素直に予約をとって出かけていた。
 おととい、帰宅時に郵便受けをのぞいたら、病院からの結果が届いていた。
「これ、検診結果じゃない?」
「そうだね」
 そのときは忙しかったので、夫に封筒を渡しただけで内容までは聞かなかった。が、この3連休は特に予定がない。昨日は夫が出かけていたから、検診結果を勝手に見ることにした。
「どこだろう。……あった、あった」
 一般に、男性はものを隠すのが下手である。すぐに、キッチンの本棚に挟まっている、ピンクの大きな封筒が目についた。
 中を開けてみると、「総合判定 D」の文字が見えた。さらに先を読むと、「脂肪肝」「腹部大動脈石灰化」「要治療」と書かれている。大丈夫だろうか。
 血圧や血糖、尿酸などは正常値だが、コレステロール値は「D」で「肥満」などの判定もある。「食後にウォーキングなどの運動をすることを勧めます」とのアドバイスも幅を利かせていた。
 近所のスーパーですら、常に車で行くような男である。耳の痛い結果であったに違いない。
 少々気になったのが「喫煙歴」だ。夫は20代から40代まで愛煙家であったが、その後はやめている。20年間も吸っていたくせに、ちゃっかり「喫煙歴なし」と申告しているところが図々しい。
 封筒を元に戻し、「脂肪肝」「腹部大動脈石灰化」について調べてみる。うちでは脂っこいものは作らないので、パンやご飯、麺類などの炭水化物が原因と思われる。朝はご飯、昼は麺類で腹を膨らませ、運動もせずに寝転がっているから、消費し切れない炭水化物が中性脂肪となって蓄えられたのだろう。
 加えて、夫はおやつにパンを食べる習慣がある。スーパーでバターロールなどを袋買いし、たっぷりバターを載せて一気に5個ほど平らげるのだ。これでは脂肪肝になっても不思議はない。



 腹部大動脈石灰化については、情報量が少なくてよくわからなかった。しかし、動脈硬化と似たようなものと書いてあったので、危険であることには違いない。
「ただいま」
 夫が帰ってきた。話は、彼が着替えてくつろいでからにしよう。
 私は何食わぬ顔をして、「そういえば、この前の結果はどうだったの?」と切り出した。
「ああ、ほとんど、Aだったよ」
 そのまま、結果良好で押し通すつもりかと思ったら、彼は自分でピンクの封筒を取り出した。私に手渡すと、中を見るように促す。
「総合判定D、要治療って書いてあるじゃない。病院に行かないと」
「でも、Aのほうが多い」
「そういう問題じゃないんだよ。治療が必要なんだって」
「…………行くよ」
 夫はそっぽを向いたまま、近くのかかりつけ医を受診すると約束したが、かなり不本意であったようだ。
 不健康であることを認めるにも勇気がいる。もはや、猶予はないので、本人にも自覚を持ってもらいたい。

 私も、たまには人間ドックを受けたほうがいいのだろうか。
 ホテルニューオータニの宿泊プランを見ていたら、「東都クリニック人間ドック宿泊プラン」なるものがあって驚いた。(詳細はこちらから)
「1泊夕食つきか、むむむ」
 さらに調べてみたら、アムス丸の内パレスビルクリニックという病院では、「1泊コース~選べるホテルプラン」として、パレスホテル、東京ステーションホテル、丸ノ内ホテル、ロイヤルパークホテルと提携してるではないか。(詳細はこちらから)
「すごい! ゴージャス」
 少々値は張るが、検査というよりバカンス感覚で受けられそうな気がする。
 1人より2人のほうが安くなるので、誰かを誘って計画したくなってきた。
 健康管理は大事です!


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好きです、白バイ

2016年07月14日 22時25分43秒 | エッセイ
 去年、私のクラスから警察官採用試験に合格した男子がいる。
 今は警察学校に入っていて、2月に卒業する予定らしい。
「今年も、警察官になりたいっていう生徒さんはいませんかね」
 先月、警視庁からのリクルーターが来校し、仕事の内容や採用試験について熱心に説明してくれた。東京オリンピックを控えて、採用枠を広げているのなら、今がチャンスかもしれない。
「いないこともないのですが、他の職種と迷っているようです」
「そうですか。じゃあ、お近くですから、一度、施設見学にいらしたらどうですか?」
「いいですね」
「できれば先生もご一緒に」
 見学や体験という言葉には弱い。公務員希望の男子に声をかけると、彼らも大いに乗り気だった。
 早速、弾んだ声でリクルーターに電話をかけ、見学の日どりを決める。もちろん、私も引率でついていくことにした。
「お邪魔しまーす」
 男子生徒3人と一緒に庁舎に入り、まずは職務内容のDVDを見る。地域警察官、交通警官、刑事警察、生活安全警察、警備警察などから始まって、一般職としては事務職員、鑑識、電気、自動車運転免許試験管などなど、予想以上に多様な職種があるとわかった。
 警察学校は府中にあり、毎年1500人が入校するという。法学・倫理を学び、取り調べや職務質問のやり方を身につけるのはもっともなことだ。だが、華道、茶道、道徳、伝統文化もカリキュラムに含まれていることは知らなかった。柔道、剣道、合気道などの武道に射撃訓練、応急措置、心肺蘇生法に取り組む様子は、まさに警察官の卵。苦労して迎える卒業式では、涙涙のオンパレードらしい。
「どうですか、仕事についてご理解いただけましたか?」
「はい」
 生徒たちは目をくりくりと動かして答える。自分も、警察官になった気分に浸れたのかもしれない。
「じゃあ、白バイを見に行きましょう」
 リクルーターは現役の白バイ隊員である。青と水色の中間くらいの色で塗られた制服がりりしい。
 一番多いのはホンダ製だというが、ヤマハ製やモトクロス仕様の白バイも見せてくれた。
「それぞれに、スピーカーとサイレンがついていますから、転倒したら修理代が大変なんですよ。みんな慎重に運転しています」
「へー」
 私は白バイをじっくり観察していたが、男の子たちは喜びの余り、落ち着きを失っていた。リクルーターは彼らの心理を十分に理解しているようで、言葉もなく動くと、280kgものバイクを彼らの前まで持ってきた。
「どうです? 乗ってみませんか」
「わあ、いいんですか!」
 ここで断る男の子がいるのだろうか。乗車したところで写真も撮ってくれる。普段は無口な男の子たちだが、この日ばかりははしゃいでいた。
「先生もよかったら」
「はいっ」
 私まで……。調子に乗り過ぎたかもしれない。



 このあと、パトカーにも乗せてもらって、館内を見学したあと出口に向かった。
「ありがとうございました!!」
 到着時と、挨拶のボリュームが違う。普通はできないことをさせてもらって、彼らも満足したようだ。
 警察官になれるかどうかはともかく、警察の仕事を理解することは一市民として必要だと思う。
 さて、本校には、自衛隊のリクルーターもときどきやってくる。
「どうですか、自衛官になりたいという生徒さんはいますか」
「公務員志望は多いので、いるかもしれません。体験や見学はないですか」
「潜水艦に乗る体験はありますが、有料なんですよね」
「えー、警視庁は白バイやパトカーに乗る体験をさせてくれたのに」
「じゃあ、調べておきます……」
 ちょっと図々しい?


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わが家の主権者教育

2016年07月10日 22時20分03秒 | エッセイ
 今日は第24回参院選の投票日である。
 今回から投票権が18歳に引き下げられ、どの高校でも主権者教育に熱を入れている。同僚の公民科教員は、先週、一人で3年生の全クラスを指導したばかりだ。果たして成果はあったのだろうか。
「ミキにも投票のお知らせが来たよ」
 5月に20歳を迎えた娘も、初の選挙を迎える。高校生は学校で選挙の仕組みや歴史を教えてもらえるが、大学生は違う。多少は親が教えてあげなければいけないと気づいた。
「10日は朝から晩までバイトなんだよね」
「お母さんも仕事だから、不在者投票に行こうか」
「そうしよう」
 投票所の緊張感を見せられないのは残念だ。次回の知事選に期待しよう。
 私と娘の都合を合わせ、午後7時に駅前で落ち合うことにした。
「投票する前に、誰に入れるかと、どの政党に入れるかを決めておきなよ」
「2つも?」
「そう。最初に選挙区選で個人の名前を書いて、次に比例選で政党の名前を書くの」
「ふーん」
 十分理解してるとは思えず、少々不安だったが、待ち合わせ時間はやってくる。
「お待たせ。さあ行こう」
 投票所の看板を見て、新たな発見があった。
「きじつぜん、ってフリガナが振ってある。ずっと、きじつまえだと思ってた」
「ミキも」
「音読みで統一するんだね」
 警備員が「こんばんは」と笑顔であいさつしてきた。若者が一緒のせいか愛想がいい。
「ところで、どの候補者にするか決めたの?」
「うん。ずっと演説の動画を見てて、この人いいな~って思った」
「ならいいけど」
 ところが、いざ候補者名を書く段になると、なぜか鉛筆が動かない。
「なんて名前だったかな……。忘れちゃったよ」
「えーっ」
「スマホ見てもいい?」
「禁止だよ。候補者の一覧から選びなさい」
「うーん」
 投票所での会話もご法度だが、どうやら初の選挙であるとわかってもらえたようで、大目に見てくれた。私は心の中で「早く早く」と念じるばかりである。願いが通じたのか、まもなく「あった」という声がして鉛筆が動き始めた。2人そろって投票箱に入れたあと、次は比例選の投票用紙を受け取る。
「政党名または候補者名って書いてある」
「どっちでもいいんだよ」
 こちらはスムーズに記入でき、娘は人生初の投票を終えた。
「これだけ?」
「そう」
「あっけないんだね」
 あとからわかったことだが、娘と私は同じ候補者に投票したようだ。
「ひらがなで書いてあったから、全然見つけられなかった」
「画数の多い名前は誤字の原因になるから、ひらがなにしたんでしょ」
「漢字が間違っていたらどうなるの?」
「無効になる場合もあるらしいよ」
「そうなんだ」
 2人で選んだ候補者が、当選するといいな。


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桃色クローゼット

2016年07月07日 22時46分52秒 | エッセイ
 私のクローゼットにはピンクの衣類がいくつも吊るされている。
 入学式にも着られるスーツ、淡い色合いのワンピースにコート、半袖のツーピース、アンサンブルなどなど、茶や紺よりも多いくらいだ。



 一番のお気に入りはこれ。



 ゴチャゴチャして賑やかな感じが好きだ。
 最初から揃えていたわけではなく、15年ほど前に母からパンプスをもらったことがきっかけとなった。
「これ、よかったら履いてみて」
 当時、母は靴や帽子などを扱う店で働いており、お買い得と思ったものを買ってくることがあった。手渡された新品のパンプスは、パステルピンクのフェイクスエード。こんな色に合わせる服なんてある?
 使い道がないわと決めつけ、靴箱に押し込んだままだった。
 母は味音痴なだけでなく、色音痴でもある。目に突き刺さりそうなくらい濃い紫の服を買ってきたり、ヤクザが選びそうな柄物のネクタイをプレゼントしたりする。ブラウスとスカートの組み合わせは奇妙だし、どこに行くにも一緒に歩くには勇気がいる。
 そのときは、また変なものを買って、くらいに思っていた。
 何年か後に通販のカタログで、ピンクのクロコダイル柄のバッグに一目ぼれした。お弁当が入る割には大きすぎず、留め具に金色のリングがついていてカッコいい。コーディネートを考えようと靴箱を探し、放置したままのパンプスを発見した。
「あれ? これ、使えるんじゃ……」
 思った通りバッグとの相性は抜群だ。ようやく日の目を見たパンプスが、やけに張り切っているように見えた。手元も足元も明るくなり、こりゃいいわと私の気分も上を向く。
「そうだ、ピンクの服も買ってみよう」
 派手すぎるかしらと心配しつつ、試着室で袖を通すと、実際よりも肌がキレイに見え、何歳か若返ったような気がした。こうして、私のクローゼットには、ピンクの衣類がぞくぞくと集まるようになった。
 一方、黄色は着こなせない。やけにくすんだ肌に見え、鏡の中には十歳上の自分がいる。黄色は私の敵に違いない、いや絶対にそうだ。
 何色が似合うかは、試してみるまでわからない。
 今年は青にチャレンジしてみよう。


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新宿リゾート

2016年07月03日 21時53分17秒 | エッセイ
 梅雨のはずなのに、この暑さは何なのか。
 耐え難くて、今日は親友の幸枝を誘い、プールに行くことにした。
 目指すは京王プラザホテル。ここはプールプランが充実していて、ランチやディナーと組み合わせるとお得な料金で水遊びが楽しめる。
「ランチプランにする?」
「そうしよう、そうしよう」
 土日祝だとプールの入場料は7000円なのに、ランチプランにすると7500円となり、4500円相当のランチがついてくる。平日だと入場料5500円でさらにお得らしいが、仕事があるから無理だ。
 昼頃待ち合わせ、まずはフレンチ&イタリアンレストランでランチ。ちょうど、館内では「ホテルで楽しむ有田焼」というイベントを開催中で、有田・伊万里焼の食器を使った「セラミーカ」というランチコースをいただいた。
 メニューも大事だが、お皿にも注目していただきたい。
 平政のマリネ。



 カボチャを練りこんだリガトーニ。



 コテキーノのロースト。



 ピーチメルバ。



 どの料理も美味しかったし、どのお皿も素敵だった。しいて言えば、リガトーニの赤がよかった。
 食後は7階のプールに向かう。いつもより時間をかけて食べたので、お腹が重くなっていない。これからも、ゆっくり食べるようにすべきだろう。
 さあ、プールだ!



 思ったよりも小さかったけれど、14時以降はほとんど日が当たらないそうで、日焼けをしたくない者にはありがたい。何しろ、周りに高層ビルがたくさんあるのだから。









 隙間から都庁も顔を出す。



 思ったよりも家族連れが多く、若いパパママとちびっ子の歓声が上がっていた。水はまだ冷たい。くるぶしまで入れた足を、引っ込めたくなった。でも、思い切って水に飛び込んでみる。水深は120cmから130cmである。
「顔を濡らしたくないから、背泳ぎにしようかな」
 幸枝は水泳が得意だ。水泳だけでなく、スポーツなら何でもござれ。人魚のようにスイスイと泳ぎ、思わず見とれてしまう。
「よーし、私も」
 対する私は、やっとのことで平泳ぎができる程度だ。いや、平泳ぎに入るのかわからないレベルだから、泳ぎ始めた途端、係員のお姉さんが動き出した。おそらく、「この人は泳いでいるのかしら、溺れているのかしら」と迷ったのだろう。結局、声をかけられなかったので、「変わった泳ぎ方をする人」に分類されたらしい。
「寒くなってきた。ちょっと上がるね」
 幸枝は寒がりなのか、少し泳ぐとデッキチェアに寝そべって暖をとっていた。もしや、怠けているだけかもしれない。
 しかし、たかだか4往復で、私も疲れて休みたくなった。水から上がり、幸枝の隣で横になる。
 静かだ。
 ここでは家事も仕事も、何もしなくてすむ。
 ビル風に吹かれて、自由と解放感が押し寄せてきた。
 新宿という都市にいながら、心だけは南の島にいるような錯覚を起こす、そんな場所である。
「あれ、人が増えてきたね」
「ホントだ」
 15時を回ると、ディナーやアルコールと組み合わせたプランが始まり、プール内の人口が増える。そろそろ帰るとするか。
 存分に怠けたせいか、また明日から頑張れそうな気がした。


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「デッドプール」4DX2D

2016年06月30日 21時28分45秒 | エッセイ
 6月30日まで有効の映画割引券があった。
「ミキ、何か見たい映画ある?」
「デッドプールがいい! 友達が面白いって言ってた」
「ふーん、じゃあそれにしよう」



 時間を調べると、IMAXもあるが、4DX2Dなるものもあった。時間も18時台で都合がいい。
「4DXにしようよ! 楽しみ~」
 4DXとは、体感型映画上映システムのことである。たとえば、車に乗っている場面ならシートが左右に傾いたり、クラッシュしたら前後に大きく揺れたりと、アトラクションのような動きをする。耳元に空気をプッと吹きかけられ、雨の場面では背もたれから水が飛び出し、爆破シーンでは劇場内に煙が上がる。
 劇場スタッフが「傘の持ち込みはできません。お荷物はロッカーに預けることをお勧めします」と説明した意味がわかった。飲み物やポップコーンを持ち込んだら、激しく動かされて吹っ飛んでしまうかもしれない。
 同僚がこのシートをいたく気に入っており、都立高の教室にもぜひ導入してほしいと話していた。
「寝ている生徒がいたら、前後左右に揺らして、水をかけて起こせるじゃないですか~」
 ……なるほどね。
 そんなわけで、期待度がグングン上昇したところで劇場に入った。
 しかし裏切られた。肝心の映画が面白くない。下ネタが多すぎて下品だし、登場人物にほとんど魅力を感じない。こりゃダメだ、キャストをミスったのではないか。
 アクションは見ごたえがあったけれど、人が簡単に死にすぎる。まさにゲーム感覚で進行する戦いに違和感をおぼえた。R15指定というのも頷ける。
 加えて、デッドプール役のマシンガントークが不愉快である。まるでラジオのように、いつまでもいつまでもしゃべっている。
 なんて騒々しい男なんだ!
 おしゃべり男は大、大、大っ嫌い。敵役のフランシスが「頼むから黙ってくれ」と吐き捨てるように言ったとき、「そうだそうだ」と拳をあげて同意した。
 仕事のあとで疲れていた上、映画はイマイチとくれば、普通なら寝てしまうところである。昨日もその前も、忙しくて睡眠時間は4時間半だった。
 だが、この劇場は4DXだ。
 ガタガタガタッ
 プッ
 ピチョーン
 グラグラグラグラ
 同僚の言った通り、これでは眠れない。強制的に起こされ、ウトウトすることもなく、最後まで観ることができた。期待通りではなかったが、スピード感や重量感には圧倒されたし、まあ楽しめたかな……。
 そういうことにしておこう。
「パンフレットはいらないね」
「うん」
 手ぶらで帰るのは久しぶりかもしれない。
 4DXは癖になりそう。
 慢性睡眠不足で、年中睡魔と戦っている人におススメします!


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英EU離脱の恨み節

2016年06月26日 17時46分23秒 | エッセイ
 6月24日は忘れがたい日になった。
「離脱ですよ、離脱」
 背中合わせに座る社会科教師が、半生だったトンカツを食べたような機嫌の悪さでつぶやく。職場では、朝からイギリスの国民投票が話題となっていたが、ついにEU離脱という結果が判明したわけだ。
 離脱となれば、世界経済の大混乱は必至。英国債は大量に売られて大暴落、ポンド安はもちろんのこと、つられてユーロも安くなり為替変動が起こると予想される。金融業では、英国の金融当局から取得した単一免許制度が適用されなくなる可能性が生まれ、輸出業では単一市場が見直されると、EU加盟国との貿易で関税や非関税障壁が復活するかもしれない。また、労働ビザ不要の現状が変わった場合に、イギリスは他国から有能な人材を集められなくなる懸念がある。
 GDPは大幅に低下、政府の年間税収は450億ポンド減少、1世帯当たりの年収は5200ポンド減少の見込みというから、投票結果はまったく理解しがたい。
「そもそも、国民投票がいけないんですよ。政治や経済を知らない人たちに、国の行く末を任せるんだから」
 社会科教師のイライラは果てしなく、その通りだと大きくうなずく。国民の言葉として「離脱に票を投じたが、本当に離脱するとは思わなかった。投票をやり直したい」などという呆れたものもあるからだ。もっとも、残留派の嘆きはこの程度で収まるはずがなかろうが。
 私だって怒っている。至極、個人的な事情で怒っている。
 何年か前に、米ドル建終身保険なる金融商品を購入した。当時、1ドル=100円くらいで、その後はグングンと円安が進み「ウホホ」と喜んでいた。ところが最近は円高傾向が続き、「むむむ」と眉間にしわを寄せる日が増えた。そこへ、イギリスEU離脱である。
「円相場は1ドル99円台まで上昇しました」
 キャスターが、冷静にニュースを読む。しかし、私は冷静になれない。
「ゲゲッ、ふざけるな~!」
 私の為替差益を返して~!

 昨日の夜、久しぶりにゴキブリが出た。
「冷蔵庫の下に潜って逃げちゃったよ」
 夕食の後片づけをしていた夫が、申し訳なさそうに話す。部屋にはコンバットがいくつもあるのだが、窓を開けていると、隙間から入ってくるらしい。
 殺虫剤よりも、私は新聞で叩き潰すほうが好きだ。
「そうだ、この新聞を使おう!」



 もろもろの恨みをこめて。
 覚悟しなさい、ゴキブリくん。


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管理職を管理スル

2016年06月23日 22時57分42秒 | エッセイ
 校外での研修が間近に迫っているのに、時間や内容、場所などの詳細資料が一向に送られてこない。
 都が実施する研修は、たいてい副校長経由で連絡が来る。4月から副校長が変わり、着任したばかりの彼は不慣れなためか、デスクの上に未決裁書類の山を築いていた。仕事が滞っている証拠だ。
「あのう、来週の研修の連絡はまだですか」
「うん。メールは毎日見ているけど、それらしいものはないよ」
「でも、一週間前になっても何の連絡もないのはおかしいですよね」
「そうだね」
 聞くのはこれで3回目。いつも同じ答えが返ってくるばかりで埒が明かない。他校でも、私と同じ立場の教員は同じ研修に行くはずだ。副校長を頼りにするのはやめて、他校の誰かに聞くことにした。
「あ、それ、うちの夫も行くと言ってましたよ」
 誰かはすぐに見つかった。同僚の由里さんのダンナは隣の区の教員で、同じ研修の対象者であるらしい。由里さんはすぐに連絡を取り、ダンナがとっくに資料を受け取っていることを確認してくれた。
「笹木さんあてに、メールで転送するそうです」
「よかった~! ありがとうございます」
 やはり、副校長のミスだったのだ。まもなくメールが届き、別ルートで資料を手に入れることができた。
 メールをよく見ると、CC欄に由里さんのアドレスが載っている。妻以外の女性にメールを送る手前、極めて事務的な内容だったことを証明するためだろうか。浮気を疑われた過去があるのかもしれない。
 夫婦間の力関係が見えてきて、思わず「くくくっ」と噴き出した。
 さて、これに返信しなければならない。こちらも負けず劣らずの、超事務的文面にして、ダンナと由里さんの双方に送る。無用な争いに巻き込まれるのは御免だ。
 翌日、ゲットした資料をプリントアウトして、嫌味たっぷりに副校長に見せた。
「見つけましたよ。日付が4月になっていますが」
「あれえ、あった? 来てたんだね。気が付かなかったよ。じゃあそれでお願いします」
「…………」
 この無責任さが羨ましい。
 そんなこんなで、無事研修を終えることができた。
 もっとも、研修に行くまでの手続きに、何倍もの手間がかかったが。


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父の日二重奏

2016年06月19日 21時06分21秒 | エッセイ
 今日は父の日だから、夕飯は、夫の好きな神戸牛にしようと思った。
「夕飯はいらないよ。出かけるから。前に言ったでしょ」
「そうだっけ?」
 興味のないことはすぐ忘れる。主役がいないなら、値の張る神戸牛にする必要はない。スーパーの牛ヒレステーキ用で十分だろう。
「肉……」
 夫は、それでも欲しそうな顔をしていたが、時間になると出かけて行った。
 そんなわけで、わが家の父の日イベントはなし。でも、私の父にはこっそり用意をしていた。
 父は月末に誕生日を迎える。毎年、誕生日に合わせて冷凍菓子を送っていたが、不意にひらめいた。
「別に誕生日まで待たなくたっていいのよね。今年は、父の日に間に合うように送ってみよう」
 那須の父にあてて、コーヒー、好物の冷凍たい焼き2袋、冷凍パフェ、冷凍シュークリーム、冷凍ローストビーフを段ボールに詰める。
「あ、バースデーカードがない。富士山のポストカードでいっか」



 お気に入りの富士山。裏面には「秋晴れコスモス」などというタイトルが書かれており、季節外れということに気づく。まあ、老眼だから読めないだろう。大きな字で「父の日ありがとう、誕生日おめでとう」としたため、菓子類と一緒に送った。
「荷物が着いたよ、ありがとう」
 昼前に、母からメールが来た。「お父さんがたい焼きを喜んでいる」と続いていたので、2袋でちょうどよかったらしい。
 結びは「さっそくいただきます」。
 お恥ずかしい話だが、2人の飲食風景は、とても行儀がいいとは言えない。
 母は唇にしまりがなくて、ものを噛むときに「パカッ」と開くことが多い。そのたびに、「ベシャッ、ベシャッ」と汚らしい音が聞こえてくる。何度注意しても聞く耳を持たず、「年をとるとダメだねぇ」と開き直る始末だ。
 一方、父からは「ピチャッ、ピチャッ」と母より高い音が漏れてくる。口の中は、どういう仕組みになっているのだろう。そこに夫がいれば、「ゾゾゾゾッ」と汁物を吸い込む低音と、ときには「ヘックショイ」という破裂音が加わり、わが家の高齢者たちは実に騒々しい。
 だが、すでに両親を亡くした同僚や友人から見ると、父の日や母の日を祝う相手がいること自体が羨ましいのだという。食事のマナーが悪くても、元気でいてくれることが一番大事。いなくなってしまうと、お祝いごとは何もできなくなる。
 なるほど、たしかにそうだ。二重奏だろうが三重奏だろうが、自分の力で食べられることは生きている証。
 那須の両親が、ベシャッ、ピチャッ、ズルッ、ボボッ、グチャッと食卓で不協和音を立てても、演奏中なのだと広い心で受け止めようと決めた。
 特に、父の日の今日は賑やかかもしれない。
 食欲があって結構なことだ。


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誰の誕生日?

2016年06月16日 21時41分57秒 | エッセイ
 先週の今日は、六本木で開催されたワインフェスに姉と参加していた。
 赤や白、泡物を何杯もいただき、カヴァ6本、白6本を買ってニンマリした。買い物はもちろん、いろいろな種類を次から次へと飲めるのがうれしい。



 昨日、商品が届いたものだから、ひっくり返って足の裏で拍手したくなるくらいウハウハした。ワインセラーはないけれど、冷蔵庫に入れて冷やしておこうっと。
 さて、今日は夫の誕生日である。
 何回目かはあえて言わないが、高齢者であることには違いない。先日も「炊き込みご飯」という名詞が思い出せず、苦し紛れに「醤油ご飯」などとのたまっていた。
 どんな飯だよ?!
「パパ、今日は誕生日だね。夕飯は寿司でいいかな。最近食べていないし」
「うん」
 夫も、お祝いをしてもらうことを、それなりに喜んでいるらしい。
 主役でもない私ですら、気分が舞い上がって仕方ない。
「ケーキ買わなくちゃね、ケーキ。ラ・メゾンにしようかなぁ」
 浮かれる私の横で、娘が夫に聞こえないようにボソッとつぶやいた。
「プレゼントはどうするの?」
「ギクッ!」
 しまった、自分が飲み食いすることばかりに気を取られ、誕生日プレゼントのことはすっかり忘れていた。なんたる不覚!
「商品券とかでいいんじゃない。セブンイレブンで使えるやつ」
「……適当だな」
 夫はここ何年かで相当なデブ……もとい出不精となり、スーパーかコンビニにしか出かけない。とりわけ、お気に入りがライフとセブンイレブンで、週の半分以上は通っているようだ。
「いらなければ、私たちが使えばいいし」
「ケケッ」
 誰のためのプレゼントなのか、よくわからないまま準備が進み、いよいよ当日を迎えた。
「パパ、お誕生日おめでとう!」
 乾杯に使った飲み物は、冒頭のカヴァである。夫は「豚汁があるからいらない」と言い、娘と2人で乾杯した。



「主役抜きで乾杯って、何か変じゃね?」
 娘は口をへの字に結び、納得していないようだったが、「いーよ、いーよ」と宥めておいた。
 カヴァ、うまいッ!
「今日は蒸し暑かったから、寿司でよかったよ」



 夫は久々の寿司に満足げだった。
 私も寿司は好きだが、もっと楽しみだったのが食後のケーキ。最近、甘いものを控えているので、脳が糖質を欲しがっている。
 結局、ラ・メゾンに行き、「チェリーのクッキークリームタルト」を買った。



 チェリーの下のクッキークリームが、ハーゲンダッツの「クッキー&クリーム」をほうふつとさせる。チェリーには弾力性があり、みずみずしい果汁ともマッチして、今月のタルトにふさわしい出来だ。甘いものを制限していたこともあり、禁断の甘美さに酔いしれた。
「パパ、誕生日おめでとう」
 娘が、夫に商品券を手渡した。



 夫がこれを使うかどうかはわからない。使い道がなければ、私が消費してあげるから、遠慮せずに言ってねと伝えるべきだったか。
「ごちそうさまぁ」
 誕生日ではなかったが、非常に満ち足りた気分になった。もう、もらった気でいるのだ。
 こんなに明るい気持ちになれるなら、父の日も、これとは別にお祝いするべきか。今度は白を飲みたいものだ。
 はてさて、誰のための父の日なんだか……。


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1泊83万円ナリ

2016年06月12日 22時24分58秒 | エッセイ
 最近、ありきたりのディナーでは物足りなくなってきた。
 食材や価格だけでなく、そこでしか味わえないものがないと面白くない。何か、興味を引くものはないかと探していたら、東京ステーションホテルの館内見学付きフレンチディナーというものを見つけた。
「えっ、あの格式高いホテルを見学できるの? 行きたい、行きたい」
 日程は限定されているが、ちょうど都合のつく日があり、申し込んでみた。
「えーと、17時に4階アトリウムに集合か」
 この日は20人くらいだったろうか。女2人というのは私たちくらいで、夫婦やカップルでの参加が多い。開始まで、ソファーに腰かけて待つよう勧められる。



 茶を基調とした館内は、落ち着きがあって大人のムードである。食事も大事だが、雰囲気も非常に重要だ。始まる前から「これは期待できそうだぞ」という予感があった。
「お待たせいたしました。まずは南側のドームからご案内いたします」
 ホテルスタッフについて3階に下り、廊下を歩いていくと、ところどころに愛らしいアレンジメントか飾られていた。細部まで気配りが感じられる。
 さて、東京駅は工部大学校を最下位の補欠で入学し、首席で卒業した我が国を代表する建築家、辰野金吾氏の作品である。東京大空襲で屋根が焼け落ち、1947年に修復したが、3階建ての部分が2階建てになるなど元通りではなかった。2007年より復原工事が行われ、2012年に現在の姿に至っている。
「こちらからドームをご覧いただけます。壁の色は当時の資料や、白黒写真をカラーに復元する技術から、卵の黄身のような色であったことが確認されています」



 白と黄卵色の組み合わせは、まったく思いつかなかった。レモンパイのようで、見ていると緊張がほぐれ、心にゆとりができてくるから不思議だ。これに茶色が加わると、少々引き締まった印象となって見事に調和する。



「干支のレリーフがありますが、8角形ですので、子、卯、酉、午の4つがありません」
 私の干支は未。ちゃんとあってよかった。



 あとから知ったことだが、干支は方角を示しているのだとか。未は南南西を表す役目をしている。
 姉の干支は巳。こちらが示すのは南南東。



 鷲型、花飾りのレリーフや、秀吉の兜のキーストーンなどの説明もあったが、私は全体を一つの単位として見るのがいいと思った。
「本日は、ロイヤルスイートルームが空いておりますので、このあとご案内いたします」
「ほー」
 ドームのあとは、173平米という広さを誇るロイヤルスイートルームの見学である。



 まず、目に飛び込んでくるのが黄色の椅子だ。



 たとえ会議でも、心が弾むに違いない。



 ソファーはグレーだが、クッションにはやはり黄色の刺しゅうがあしらわれている。



 天井には、4階のアトリウムで見たシャンデリアとよく似たデザインの照明が下がっていた。



 この統一感が素敵だ。
 壁際の調度品にも、高級感がある。





 社長席のようなデスクもあり、面白半分に座ってみた。



 貫禄ゼロだな、こりゃ。
「メモ帳をご覧ください。こちらには川端康成、内田百聞といった文豪も滞在されていたので、原稿用紙となっております。よろしければどうぞ」



「あっ、本当だ! すご~い」
 人間の性で、つい枠の中に収めようとして文字を書くかもしれない……。
 椅子に腰かけたり、トイレや流しをのぞいたりと、かなりの時間を過ごしたような気がする。バスルームやベッドルームは見られなかったが、この部屋の空気を吸うだけでリッチな気分になれた。
「ちなみに、こちらは1泊83万円でございます」
「うわぁ~」
 ツアー客から悲鳴が上がる。8万3千円だったら泊まりたいのに残念だ。
 ロイヤルスイートルームのあとは、北側のドームを見学してアトリウムに戻る。いよいよディナーの始まりだ。ちょうどお腹もすいてきた。
 前菜。パテがイチ押し。



 スープ。コクのある味。



 甘鯛のポワレ。皮がカリカリで身はふんわり。



 黒毛和牛のローストビーフと牛タンのシチュー。ソースが絶品。



 しかし、一番気に入ったのはデザートだ。
 ヴァニラ香るマフィンココット焼 ストロベリーソース
  キャラメル風味のアイスクリーム添え



 しっとりふんわりのマフィンが、適度に甘くフルーティーで、アイスクリームとの相性も抜群にいい。
 ラストまで手を抜かない構成に脱帽である。
 美味しかった、楽しかった。
 また来よう。


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月刊フラワーズ7月号をゲットせよ

2016年06月09日 20時00分00秒 | エッセイ
 活字を読むようになったのは30代からだ。
 それまでは、もっぱら漫画。絵の粗い少年漫画は対象外で、写実的な劇画タッチのアクションだったり、ロマンティックなラブストーリーだったりする少女漫画に夢中だった。
 とりわけ好きだった漫画家が、萩尾望都さんである。『ポーの一族』は不朽の名作だし、『11人いる!』もファンタスティック。『トーマの心臓』『訪問者』などなど、時間がたつのも忘れて読んだ。
『ポーの一族』は1976年に連載を終えているが、今回、40年ぶりに最新作が『月刊フラワーズ7月号』に掲載されるとブロ友さんが記事にしていた。

 なにっ、買わなくちゃ!

 翌日、早速書店に向かったが、完全に出遅れたようで、どの書店も売り切れである。ブロ友さんはお住まいが福井ということもあり、「まだ残っている」と書いていた。しかし、都内の私が住んでいるエリアでは、すでに入手困難になっているらしい。

 ネットで見てみよう。

 PCから「月刊フラワーズ 2016年7月号」で検索すると、「売り切れ」という予測ワードが登場する。私と同じことを考えた中高年ファンが、我先にと本屋に押し掛けたのだろう。
 アマゾンでは在庫があるようだが、プレミアム価格の3000円超えで売られている。定価は590円なのに信じられない。おそらく、転売目的の輩がいち早く買い占めたのではないか。ファンでもないくせに、やめてほしい。
 けしからぬ人間を儲けさせることはない。もう月刊フラワーズはいいや、とあきらめた瞬間、富山の友人からメールが来た。
「若冲のお返しは、梨と新酒でいい?」
 先月、若冲展に行った際、気持ちばかりのものを若冲ファンの友人に送ったら、「家宝にする」と喜んでもらえた。律儀な彼は、何かお返しをしたかったようで、メールが来たというわけだ。
 北陸つながりで、福井と富山がダブって見えた。私はボタンを連打し、前のめりになってメールの返信をした。
「お願い! 梨と酒はいいから、月刊フラワーズ7月号を送ってぇ~!」
 富山でも売り切れていたようだが、その書店では7日に再入荷する予定になっていたらしい。ただならぬ気配を感じた友人が、書店で受け取ったあとすぐに送ってくれたので、わが家には8日に到着した。



 やった、やった~!

 思わず両手を上にあげ、力強くガッツポーズを決めちゃったもんね。
『月刊フラワーズ 7月号』は重版が決まったというが、部数がさほど多くないので、ここでゲットできたのは幸運である。つくづく、人とのつながりはお金に代えられないと実感した。
 ところで、友人は職人だから、少々いかつい外見をしている。多分。
 どんな顔をして少女漫画を買ったのかと想像すると……。
 感謝の気持ちが2倍、3倍になってきた。



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