これは したり ~笹木 砂希~

面白いこと、妙なこと、不思議なことは、み~んな私に近寄ってきます。

ブラックキャップ

2017年05月25日 21時14分33秒 | エッセイ
 このところ、やたらと暑い。日本はいつから、5月が真夏になったのだろう。
 暑さとともにやってくるのが害虫である。夫はすでに蚊に刺されている。蝿も好きではないが、何といっても楕円形の茶色いヤツが一番憎い。
 今年は耳より情報をゲットした。ブロ友さんが、毎年3月末から家中の角という角にブラックキャップを置くようにしたところ、8年間で2匹しかヤツらに遭遇していないのだとか。
 もっぱら我が家ではコンバットだった。だが、去年は何匹も見つけている。これでは、効き目があるとは言いがたい。風呂上がりに退治すると、もう一度浴室に戻りたくなる。本当に不衛生で腹立たしい。日中、網戸にしておくのが悪いのだろうか。それとも、家の中に巣があるのだろうか。濁点をつけると余計に汚く感じるので、「コキ」と呼ぶことにしよう。
 ブラックキャップは売れているようだ。4月上旬、スーパーに行ったら一つも残っていなかった。どの家も、この時期からコキ対策をするのかと焦ったが、ドラッグストアにはたくさん残っていたため入手できた。部屋に何個もセットして、コキの迎撃態勢をとっている。



 さあ、くるなら来い!
「おっと、加湿器をしまわなくちゃ」
 わが家は2階で、3階は収納庫になっている。ひな人形や衣類、ブーツ、タオル、毛布などが所狭しと積み上げられており、この暑さでは何分もいられない。空調もなく熱帯のようだ。
「ん? コキは湿度と温度の高い場所が好きなんじゃなかったっけ……」
 気づいた瞬間ゾッとした。
 ここだ! ここがヤツらのアジトに違いない!
 道理で、いくら退治しても、もぐら叩きのように切りがないわけだ。3階にこそ、ブラックキャップを置かなくてはいけなかった。
 1箱12個入り。ありったけを床や柱に並べて収納庫を閉めた。ときはすでに5月。はたして間に合うだろうか。一週間経ったが、見るのが怖くて、あれから3階に行っていない。


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2017 けやきひろばビール祭り

2017年05月21日 20時43分26秒 | エッセイ
 国内最大級といわれる「けやきひろばビール祭り」に行ってきた。クラフトビールは大好きだ。今日で最終日を迎えるのが残念である。
「どこからいこうか。いっぱいあって迷うなぁ」
 近場は今日でなくてもよい。やまぐり鳴滝高原ブルワリーという店を選んだ。決め手となったのは、4種類のお試しセットが美味しそうだったから。



 以前、横浜のオクトーバーフェストに行ったときは、プラカップではなかった。デポジット制とはいえ、グラスで飲めたのが懐かしく思い出される。
「うん、うまっ」
 全部美味しかったけれど、特にヴァイツェンが気に入った。プラカップでもこれだけ美味しいのだから、グラスだったらもっとイケただろう。でも、グラスだったら、少量の飲み比べはできないと思う。
「まあ、どっちもどっちってことか」
 ついでに日本酒風のビールも購入し、5種を試してみたところ、すべてが合格点。山口に行ったら、ここのビールをみやげに買いたい。
「お腹すいた。あっ、宇都宮餃子がある」



 お酒だけでなく、食べ物メニューも充実している点も嬉しい。
 私たちは、立ち飲み専用の丸テーブルにいたのだが、レジャーシートを広げている人が多かった。テントの下には予約席もあるのだが、有料だし、きゅうくつな印象を受ける。雨が降らない限り、開放感のある場所で飲みたい。
「じゃあ次。松坂牛ホルモンっていうのと、松坂牛フランクもいいね」
 本格的に食べ始めると、飲むのを忘れてしまうのは私の悪い癖だ。松坂牛を売っている、伊勢角屋麦酒というお店で、またまた4種飲み比べをすることにした。



 レッドエールとブラウンエールが品切れでガッカリ……。でも、伊勢茶エールやら、ヒメホワイトやら、聞いたことのないビールが買えた。



 こちらも合格点。クラフトビールらしく、少々苦みがあって、私は好きだ。
「ついでに、チャーハンと焼きそば~♪」
 私はすっかり食べる方に集中してしまった。
 宇都宮餃子は保温してあったけれど、チャーハンと焼きそばは冷たい。店の特徴を、しっかりおぼえておいて、次回に反映させよう。
 お腹いっぱいになり、予定していた田沢湖ビールを飲み損ねた。メジャーなビールみたいだから、またどこかでお会いできるだろう。
 ここには、仕事帰りにフラッと立ち寄り、珍しいビールを1~2杯飲んだら帰るというスタイルがよさそうだ。レジャーシートに寝転がってウダウダしているところを、知人に見られたら大変だし。
 帰ってから、チラシをじっくり見て、霧島ビールを飲めばよかったと後悔した。瓶がやたらとカッコいいのだ。これもまた来年かな。
 出店された方々、ごちそうさまでした。


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定期がない!

2017年05月18日 20時47分08秒 | 過剰エッセイ
 6:58の電車に乗るため家を出た。改札口で定期券を出そうとしたら、スカッと空振りをする。
 あれれ?
「うわ、大変。定期を忘れた」
 前の日は、書類の入る大きめのバッグを持っていった。定期券は、まだそこにあるのだろう。名刺入れをいつものバッグに戻しただけで、定期がそのままとは不覚である。
「しょうがない。切符を買うか」
 家から駅までは徒歩10分。再度、往復する元気はない。交通費の800円を払った方がマシだ。
 財布を開けると、小銭がジャラジャラしている。ちょうどいいからこれを使ってやれ、と券売機にぶち込んだ。
「ん? いつの間にか240円になっている……」
 最後に切符を買ったときは、池袋まで230円だった。IC定期になると精算もしないから、値上がりしたことにも気づかないままだ。
「IC専用? ダメだ、ここもあそこも入れない」
 さらに、自動改札が行く手を阻む。ICカード専用改札ばかりで、切符が使える改札がなかなか見つからない。ようやく見つけて、ホームにたどり着いたときは安堵した。
 定期がないだけで、こんなに面倒なのかと驚く。池袋に着いたら、今度はJRの切符を買わねば。
 いつもの電車に乗れるかなぁ……。
 20年ぶりに定期券を忘れ、時代の移り変わりを実感する。今の世の中は、カードを持たない人に冷たい。運賃は高くなるし、切符対応の改札でないと入れないとは何事か。券売機が「カードのご利用をおすすめします」などと表示してきたので、カチンときて「忘れたんだってばよ!」と言い返したくなった。
 去年の5月に、スーパーのクレジットカードを作った。支払いは楽になったが、1000円札が不足しがちだ。これまで、スーパーで5000円くらいの買い物をして1万円札を出し、釣りとして1000円札を手にしていた。このサイクルが狂うと、ちょっとした支払いのときに困る。急いでいる朝にタクシーを使い、万札を出すのはいかがなものか。コンビニで、500円足らずのものを買うときも同じだ。
「そうだ、機械だったら気にしなくていいんじゃない?」
 機械はせっかくだから、券売機で1万円札を使わせてもらうことにした。気が弱いワタクシにはピッタリの作戦である。
「えーと、JRは160円だから……」
 券売機で160円のボタンを押し、10060円を投入した。50円玉は使わず10円玉6枚が減り、財布が一気に軽くなる。釣銭は9900円。ついでに、最寄駅までの240円の切符も1万円で買った。もう10円玉は残っていなかったが、9760円をゲットする。



「よし、これでしばらく1000円札には困らないぞ!」
 800円は無駄になったが、転んでもただでは起きないのが笹木流である。
「帰ったら、すぐバッグに定期を入れよう」
 ……ちょっと、やせ我慢したかもしれないが。


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2017 おねだり母の日

2017年05月14日 21時48分52秒 | エッセイ
 今日は母の日だが、大学生の娘は出かけている。帰りは夜だ。何か買ってあげるとも言われていない。
「ママ、カーネーション買ってきたよ」
 夫が気を利かせたつもりで、スーパーから戻ってきた。気持ちはありがたいのだが、1輪だけというのが引っかかる。
「ありがとう。でも、おばあちゃんのは?」
「おふくろの?」
 義母は認知症を患い寝たきりだ。二世帯住宅の一階に住んでいるから、これをあげればいいのにと思った。
「おばあちゃん、花が好きだったじゃない。きっと喜ぶよ」
「そうだな。じゃあ、そうさせてもらうよ」
 カーネーションは夫に連れられ、階段を下りていった。



 義母のそばには、夫の弟がいたらしい。
「おふくろ、起きてる? カーネーションなんだけど」
「今トイレ。ああ、花瓶がキレイだね」
 おっと、花瓶かい……。どうにも嚙み合わない会話である。男の兄弟は、こんなものなのだろうか。
 ともあれ、義母は母の日であることを理解し、大喜びしたとか。
 めでたし、めでたし。
 携帯電話を取り出し、娘にメールを送る。スマホではなくガラケーだ。
「母の日スイーツは、ねんりん家のバウムクーヘンがいいな~」
 私の母は、意外に控えめな人間で、自分から〇〇が欲しいなどとは決して言えない。思っていても口に出せないのである。察してくれるのを待ち、もらえなかったら我慢する。子どもの側からすれば、「言ってくれればいいのに」となるから、不思議で仕方なかった。
 そんな母には先に、クッキーとチョコレート、ドリップコーヒーを渡してある。これで安心だ。
 夕方になり、やっと娘から返信がきた。
「わかった。お店で電話するから、何を買えばいいのか決めておいて」
 やった~!
 




 賞味期限が先の、丸いものからいただいた。ふわふわしていて、口当たりがよい。いくらでも食べられそうだが、血糖値を心配して4分の1にとどめておく。
 細いほうは21日まで日持ちする。でも、その前に確実になくなるだろう。
「おいしい」
 夫も娘もガバガバ食べている。義母はすっかり食が細くなり、スイーツどころではなくなった。元気に食べられるうちが華である。
 実は、スイーツだけでなく、他にも欲しいものがあった。
「ねえ、今度は黒のワイシャツ買って~。ワンピースの下に合わせたいのよね」
「…………」
 バイト代が入り、娘の懐が潤っていることは知っている。断られなかったから、近いうちに買ってくれるだろう。
 図々しいくらいがちょうどいい、ってことでいいかしら。


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ハンコ愛

2017年05月11日 23時00分52秒 | エッセイ
 今年は思いのほか、授業がスムーズだ。開始後すぐに寝てしまう生徒はいないし、おしゃべりに明け暮れたり、教科書も開けずにボンヤリしている者もいない。
 優秀な生徒が集まったわけではないから、おそらく、授業内検印制にしたことがよかったのだろう。
「これから検印票を配ります。毎時間、使いますから、問題集に貼っておきましょう」
 最初の授業でこう宣言して、検印の数が成績に入ることを伝えておいた。
 3ページから4ページまでできたら、チャイムが鳴る前に検印をペッタン。次の授業では、5ページから6ページができたらペッタンという具合に、毎回1つずつ増えていく。



 私は「野村」さんではないが、こんな感じのハンコを使っている。
 以前は、課題を提出させて、職員室で検印をしていた。でも、提出物に不備があるとハンコが押せない。返却して直させるのは、結構手間である。欠席者の課題は返せなくてたまるし、課題の山を見るのがストレスだった。
 そこで、生徒の目の前でハンコを押すスタイルに変えたら、これが彼らにとっても私にとっても、ベリグ~ッなのである。
「ここ書いてないよ。これじゃ検印が押せない」
「あっ、本当だ。待って先生、今書いたからハンコちょうだい」
「よし、ここに押しておくからね」
「わーい」
 という具合に、生徒は1時間分の努力を認められて満足する。また、ハンコの数が少ないと気後れするのか、他の子に負けないよう授業に参加する。成果の「見える化」を図るだけで、居眠りや無気力が激減するとは思わなかった。
 また私も、提出物の山を持ち帰らずにすむから、次の授業準備に時間をかけることができる。いいことだらけだ。
 もし、これがハンコではなく、〇などの記号やサインだったら、こんなに頑張らないのではないか。日本はハンコ社会である。日本人のDNAには、「ハンコをもらいたい」という根本的な要求が刻み込まれているのかもしれない。
 そういえば、小学生の夏休み、毎朝神社に集まってラジオ体操をした。参加すると、日にちのところにスタンプを押してもらったものだ。これが実にうれしくて、1回でも欠けてなるものかと早起きに励んだのだっけ。
 今日も、やんちゃな男子が検印票を持って話しかけてきた。
「先生、この前押してもらえなかったところ、終わったから見て」
「どれどれ。あっ、できてる」
「頑張った」
「じゃあ、ここに押すね。追い付いてよかったじゃない」
 彼は隣の子の検印票と見比べて、安心したような笑みを浮かべた。生徒も私も、検印が大好きなのである。
 ネットでスタンプを見ていたら、こんな印を見つけた。



 可愛いカルガモ! 欲しくなっちゃった~!


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2017 ゴールデンウイーク

2017年05月07日 20時14分36秒 | エッセイ
 毎年、ゴールデンウイークは遠出しない。3日には娘の誕生会、5日には甥の節句を祝うため、親族が集まるからだ。
 誕生会はわが家で行うが、今年は寿司やすき焼きを注文せず、自分で作ってみたくなった。きっちりとした計画性はなく、ちょっとした思いつきである。もう一つフライパンが必要とわかり、妹にメールをする。
「ねえ、フライパンを貸してくれる?」
「フライパン? いいよ」
「来るときに持ってきてね。忘れたら料理が作れなくて大変よ」
 借りる分際にしては、少々脅迫めいた言い回しである。しかし、妹はドライバーを務める義弟のノンアルコールビールを忘れたこともあるので、「もし持ってきてくれなかったら……」と不安になったのだ。
「こんばんは。ケーキとフライパン持ってきたよ」
 不安を吹き飛ばすように、妹一家が時間通りにやってきた。これでパエリアが作れる。だが、早くから準備をした割に、料理が追いつかない。
「ねえ、奈津、この本見て、カルパッチョのソースを作ってくれる?」
「えっ、アタシが?」
 戸惑いつつ、妹は手伝ってくれた。から揚げ、キッシュ、マグロのカルパッチョができ上がる。だが、チーズとクラッカーを食べすぎたのか、ホタテのグラタンが焼きあがったときには、「もうお腹いっぱい」などという悲鳴が上がっていた。
 これはまずい。
 親族も高齢化が進み、たくさん食べられなくなっているようだ。気づいたのは、一番食べてほしかったパエリアが出来上がったときである。
「入るかなぁ」
「ひと口あれば十分」
 パエリアは、フライパンひとつで4人分できるのだが、結局、それしか売れなかった。妹のフライパンで作ったパエリアは、手つかずで丸々残っている。



「しょうがないなぁ。奈津、悪いけど、フライパンごとおみやげに持ち帰ってよ」
「ははは、じゃあいただくわ」
 妹を脅してまで、フライパンを借りた意味がわからなくなった。しかし、無謀な計画を立てる姉に、嫌な顔もせず助けてくれたことには、ひたすら感謝するばかりだ。奈津、ありがとう!
 5日は、妹の家に集まった。今度は、私が子どもの日ケーキを持っていく。
「おお~、いつ見ても立派な兜だねぇ」



 うちには男の子がいないので、兜もこいのぼりもない。実は、毎年、これを拝むのを楽しみにしている。
「ちょっと。座っていないで手伝ってちょうだい」
 この日は、姉と姉の夫が先に来ていた。サラダを分けている姉が、ダンナをこき使おうとしており、私の出番はなさそうだった。母も、割り箸を与えられて、用事を言いつけられている。早く着くと、ろくなことがないような気がする。
「これ、食べてみる? いぶりがっこっていうんだよ」
「いぶりがっこ?」
 鉄道マニアの義兄は、全国各地を旅行している。今回は秋田まで足を延ばしたようだ。



「焚き木たくあんだってさ。ここに説明が書いてあるよ」



「ほお~」
 ひとつもらって食べてみたら、まさにスモークたくあんではないか。なかなかイケた。ビールにも合う。
「おいしいじゃん」
 子どもたちにも好評である。さすが、学力テスト上位県の秋田、きっちり計算された味だ。
「岡山の『ママカリ』っていう魚もあるよ。食べる?」
 義兄のみやげは果てしない……。
 妹の用意した料理は多すぎず、少なすぎずで、ちょうどよい量だった。食後のケーキも楽々胃袋に入る。
「こどもの日おめでとう」
「おめでとう」



 ケーキを撮っているとき、義弟がふざけて写真に入り込んできたのだが、さすがにそれはアップせずにおこう。
 今年のGWは、「ごはん、わんさかいらん」だったようだ。


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心が広くなれる場所

2017年05月04日 21時22分51秒 | エッセイ
 5月1日は仕事が休みだった。仲良しの幸枝を誘い、横須賀に行く。
 紫外線を天敵とする私にしては珍しい選択だ。毎日PCとにらめっこして、室内で一日の大半を過ごしていると、開放感のある場所が恋しくなる。子どものとき、毎年のように海水浴をした観音崎に行きたくなった。
 観音崎は、三浦半島の端っこにある海水浴場である。横須賀駅からでも、馬堀海岸駅や浦賀駅からでもバスで行くことができる。10時半に浦賀駅で待ち合わせをしたら、幸枝はすでに到着していた。
「横須賀には来たことないの。すごく楽しみ~」
 幸枝はどちらかといえば肉体労働が多い。最近は、腹の立つことも頻発するようで、日常生活を忘れられる場所に行きたかったのだとか。利害関係が一致し、ウキウキとバスに乗り込んだ。
「バーベキューやってる人がいるね」
 観音崎は、ほどよい人出だった。誰もいないと不安になるが、人がいすぎても落ち着かない。海岸で火器をセッティングしている若者や、幼い子どもを連れた家族連れ、ラブラブなカップルなどが目に入る。
「海だ」



 空はイマイチ青くない。午後からは雷雨の予報だから、晴れているだけありがたいと思うべきだろう。石畳に下りて水辺に近づいた。
「見て、透明度が高いね」



 幸枝は興奮気味だ。セルカ棒を出して自撮りに励んでいる。
 私は、やたらと立派なカメラを構えた人の多いことが気になった。ここは撮影スポットなのだろうか。
「あ、船が見える」



 幸枝の指さす方を見ると、やたらとデカい船がゆっくりと航行していた。すかさず望遠レンズをのぞき込む。やけに長くて、客船ではないようだ。



 ヨットも出ていた。初夏の風に吹かれて、さぞかし心地よいのではないか。



 さきほどの船の後ろに黒い影が見えてきた。写真を撮りながら、幸枝に耳打ちする。
「あれが房総半島だって。千葉の富津までは7kmしか離れていないそうよ」
「えー、そんなに近いの? 知らなかった」



 きっと、富津からも三浦半島が見えるのだろう。泳いで渡れる人がいたりして。
 観音埼灯台には、絶対に登りたかった。急な上り坂を歩き、ゼイゼイしながら入口までたどり着く。



 ここにはマムシがいるらしい。ついでに、食べ歩きをしていると、悠々と飛んでいるトンビが急降下してきて奪うそうだ。注意を促す掲示物があった。



 灯台からの眺めは素敵だ。



 海は限りなく広く大きい。いろいろな種類の船が水しぶきを上げて通り過ぎていく。





 山には藤がたわわに開き、新緑に彩を添えていた。



 こんな景色を見て暮らしたら、イライラムカムカしたりせず、寛大な気持ちで毎日を送れるに違いない。
「いいねぇ。心が広くなれそう」
「ホントだね。来てよかった」
 すっかり気をよくして灯台を下りると、受付のオバちゃんが話しかけてきた。
「今日はね、護衛艦のいずもがこの浦賀水路を通りましたよ」
「いずも? そういえば、朝のニュースでやってたっけ……」
 画像を調べてみたら、最初に見たバカでかい船が、まさにそれだった。道理で、カメラをのぞき込んでいた人が多かったわけだ。
「うそぉ、いずもだったの!?」
「すごいじゃない、見ちゃったね!」
 政治的な問題はさておき、新聞の一面を飾るような大ニュースの現場に出くわすことはめったにない。米艦防護の任務は3日に終了したようだが、その瞬間にいたというだけで、関連記事を読み漁るようになった。我ながら現金なヤツである。
 トンビに隠れてソフトクリームを食べたあとは、横須賀行きのバスに乗り、どぶ板商店街に向かう。雲行きが怪しくなり、雨がポツポツ降ってきた。
「TSUNAMIってところだよ」
「あったあった」
 ここはネイビーバーガーが有名な店だ。ショーウインドウでは、背の高い「第7艦隊バーガー」のサンプルが光っていたが、とても食べきれそうにない。



 小さめの「ジョージ・ワシントンバーガー」を注文した。



 これでも、かなり食べごたえがあり、あごが疲れてしまった。
「ドナルド・トランプバーガー」や「バラク・オバマバーガー」もあったが、こちらは次回のお楽しみに。
 心が広くなる成果は十分あった。昨日も今日も、夕食の支度に手間取ったのに、イライラしたり慌てたりしなかったのだ。「なるようになるさ~」と緩く構え、平常心でいられるのが不思議である。
 もっとも、家族は「まだ?」とジリジリして待っていたが……。


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眼鏡生活はじめました

2017年04月30日 21時27分27秒 | エッセイ
 ブルーライトカットの眼鏡は素晴らしい。
 ドライアイになってから、コンタクトレンズをやめて裸眼で過ごしているが、そろそろ限界だ。ブルーライトカットの加工レンズで、新しい眼鏡を作ることに決めた。
「今、ラインアートという軽い眼鏡が流行っていますよ」
 店員さんに勧められ、かけてみると違和感がない。
「あっ、本当だ。これ、いいですね」
「デザインは幅広いので、お好きなものがあれば試していただきたいです」
「ワタシ、青が好きなんですよね」
「では、こちらはいかがでしょう」



 かけてみたら、結構似合う。いや、似合う気がするだけかもしれないが。
「これはどうかしら」
「あれもかけてみたい」
 15分ほど、あれこれ試してみたが、やはり最初の青が一番よいと見た。
「じゃあ、これにします」
「ありがとうございます。では、視力を測らせていただきます」
 ここではすでに3回眼鏡を、2回コンタクトレンズを作っている。私の視力の変遷も、しっかりデータ化されているから安心だ。
「前回は手元が見やすいようにと、度を弱くされていますね」
「はい」
「今、ちょっと度が進んでしまったようで、矯正して右が0.15、左が0.3です」
「ひええ~」
「でも、両目だと0.6見えています」
 乱視のせいか、両目になると多少は遠くまで見えるようだ。前回は0.8になるよう調整したから、激落ちというほどでもなかった。ホッ。
「裸眼で過ごされている間に、目がピントを合わせるのに疲れてしまったようですね。やはり、矯正して休ませてあげた方が、目にはいいです」
「はい。常時かけるようにします」
 眼鏡はもうすぐでき上がる。それまで、古い眼鏡を使うことにした。
 しかし、ブルーライトがまぶしい。
「そうだ、サングラスかければいいんじゃない?」
 私は引っ張り出したのは、眼鏡の上からかけられる、オーバーサングラスである。



 思った通り、全然まぶしくない。
 しかし、夫と娘からの評判はすこぶる悪い。
「わあ、何だ。家の中でサングラスかけてるヤツがいる」
「そんなのかけたって、ブルーライトカットできないんじゃないの?」
 ふん。まぶしくなければ何だっていいのだ。
 早く眼鏡ができ上がりますように。


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もらって嬉しい引き出物

2017年04月27日 21時13分28秒 | エッセイ
 もらって嬉しい結婚式の引き出物は?
「食器かしら。カレー皿とスプーンのセットは重宝するわ」
 じゃあ、もらって困る引き出物は?
「花瓶ね。大きすぎて使いにくいから、箱にしまったまま放置しているの」
 これが20年前の私の答えである。
 今は、カタログから好みの品を選ぶことのできる引き出物が主流のようだが、昔はそうではなかった。あちこちから似たような品をいただき、捨てることもできずに収納庫で眠っている。そういえば、グリルパンは2つあるし、サラダボウルセットも使っていない。
 おそらくは、私が贈った引き出物も同じ運命を辿っているのだろう。外側がパステルグリーン、内側が乳白色の大皿、中皿、小鉢の食器セットにしたのだが、気に入ったと言ってくれたのは母と義母くらいだ。
 18年前、友人の結婚式からの帰り道で、私はつい「引き出物が重い」と弱音を吐いた。しかし、並んで歩いていた友人からは、「砂希のときよりは軽いよ」という返事が返ってきた。「えっ」と驚き苦笑したが、案外、苦労して持ち帰ったものだから大事にしているかも……と都合のいい解釈をするしかない。うむうむ。
 さて、使えない引き出物代表の花瓶だが、収納庫を整理していて久しぶりに対面した。
「あっ、なにこれ、いいじゃない」



 20年ぶりに再会した花瓶は、やけに妖しく艶めかしく見えた。
 中学時代の洟垂れ坊主が、渋いロマンスグレイになったわけではない。おさげ髪のイモ娘が、真紅のバラのごとく咲き誇っているわけでもない。花瓶は最初から変わらないから、この20年間で私の好みが変わったのだ。白地に映える赤に加えて、華やかな金色が輝いている。でっぷりせずに、ほどよくシェイプされたシルエットにも惹かれる。もっと早く、この魅力に気づけばよかった。
「こんなにキレイなんだから、しまっておいたらもったいない」
 花はなくてもよい。せっかくだから、日常的に目にする場所に、この美女を飾っておきたいのだが、それらしい場所が見当たらない。
「出窓だと、地震が来たら落ちて割れちゃうよね」
「床に置いたら、夫が蹴って割れちゃうよね」
 うーむ。
 結局、破損することが心配で、収納庫に戻してしまった。
 貧乏性とは、こういうことをいうのだろうか。


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小田急山のホテル

2017年04月23日 21時28分10秒 | エッセイ
 小田急山のホテルには、ちょっとした思い入れがある。
 高校生のときから、秋里和国(わくに)さんの漫画が好きだった。ある作品で、主役の女の子が意中の男の子を山のホテルに誘う場面を思い出す。結局、彼らはお泊りせずに帰るのだが、外観も部屋もシチュエーションも「何てロマンティックなんでしょう」とウットリしたものだ。いつかは行きたい場所のひとつになっていたから、銀婚旅行でそれが実現したことを、私はこっそり喜んでいた。
 漫画と違って、私たちが泊まったのはトリプルルーム。



 三人家族にはちょうどよい。ついでに、三角関係の人たちにも、喜ばれるかもしれない。
 ベッドの向かい側にはテレビがある。



 バスルームの外にはドレッサー。



 しかし、女子力のない私と娘は、ついにこの場所を使わなかった。それをいいことに、夫がカバン置き場にしていたところは申し訳なかったと思う。
 山のホテルは、色とりどりの花の咲く庭園が有名だが、4月上旬はまだまだ。



 5月上旬から下旬が見ごろというから、これからが本番であろう。
 評判通り、フレンチディナーは花丸。スタッフのサービスも非常によかった。
 しかし、朝食ではちょっとした問題があった。
「おはようございます。こちらへどうぞ」
 スタッフの男性に案内された席は、なんとオヤジ団体客の巣窟であった。若手がいないところを見ると、社員旅行ではなさそうだ。研修か会議か。脂ののった中高年ばかりが20人、数人ずつ5つのテーブルに分かれて座っていた。
 私たちが勧められたのは、オヤジ席の隣である。椅子を引いた途端、ぶしつけな視線が飛んでくる。時おり「うっへっへっへ」だの、「いいっひっひっひ」などといった下卑た笑い声も聞こえてきて、朝からげんなりした。一角には、整髪料の臭いと加齢臭が漂い、二酸化炭素濃度も濃いようだ。
「お母さん、この席いやだ。替えてもらおう」
 娘が静かに立ち上がり、スタッフを探しにいった。
「失礼いたしました。別のお席にご案内します」
 かくして、落ち着いた席に替えてもらったのだが、満席だったわけではない。空いていた席はいくつもあったのに、なぜ、あの席が選ばれたのか。どうにも理解しがたい。
 意思表示をすることは大事だ。気に入らなかったら交渉する。おかげで問題は解決したし、美味しい朝食をいただくことができた。



「うえっへっへっへ」
 下品な笑い声が近づいてきた。先ほどのオヤジ団体が、朝食を終え引き揚げてきたのだ。私たちが席を移動したことなど、まったく気にしていないように見える。考えてみれば、彼らは何も悪いことをしていないのだから、そんなものだろう。
 出発前に、ホテルの外観を撮影する。



 霧が深くて、全景が見えないところが憎い。



 Facebookのカバー写真にしたかったから、かなり残念である。



 秋里和国さんも、このレトロなホテルに魅せられたのではないか。



 同感だ。霧に浮かぶクラシカルな姿も、なかなか乙なものである。



 リベンジで、また泊まりに来たいものだ。
 次も、トリプルルームを予約しなくちゃ。


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結婚記念日

2017年04月20日 21時14分27秒 | エッセイ
 結婚式当日は雨だった。披露宴の前に一度やんだのに、帰る頃には土砂降りである。
「雨降って地固まるといいますからね、今日は吉日ですよ」
「そうですとも。お幸せに」
 式場スタッフは口を揃えて、雨であることをめでたいと言う。半信半疑で送り出されたが、先日、25回目の結婚記念日を迎えたことを考えると、あながち嘘ではなさそうだ。ここはひとつ、一大イベントを企画せねば。
「今年は銀婚式だから一泊でお祝いしよう」
「さんせーい。温泉がいい」
「ごちそう食わせてくれ~」
 結婚5年目で生まれた娘はもう20歳。家族三人、箱根にある山のホテルでお祝いすることにした。
 ところが、朝から雨模様である。箱根に近づくにつれ激しくなり、風も強まってきた。
「あっ、見て。あの人の傘、壊れたよ」
 ホテルへのシャトルバスを待っていたら、男性の差すビニール傘が風に煽られ、瞬く間に骨は曲がり、ビニールをはぎ取られたようだ。横殴りの雨だというのに気の毒に。
 私はうんざりしながら呟いた。
「誰よ? 今日がいいって言った人」
「お母さん」
「ははは、そうだったね」
 自分で決めたのだから仕方ない。チッ。
 傘を守りながらバスに乗り込み、ホテルにチェックインする。



 時間はまだ4時だ。夕食までカフェでお茶する予定だったが、この雨の中、5分歩いて別館に行く気はない。部屋で湯を沸かし、ドリップコーヒーで我慢した。
「芦ノ湖はどこだ~」
「霧でなんも見えん~」
 窓の外は、煙に包まれているように白い。浦島太郎の開けた玉手箱からも、こんなモヤモヤが立ち昇ったに違いない。
 おやつを食べていないので、お腹が空いた。空腹も手伝い、夕食はエクセレントな美味しさだった。



 料理に合ったワインを3杯飲み、デザートタイムにはアニバーサリーケーキの登場である。



 ケーキと一緒に記念撮影し、切り分けてもらったら、夫も娘も「もうお腹いっぱい」などと気弱な発言をする。結局、私ひとりで半分以上食べた。ノリの悪い家族を持つと苦労する。
「ちょっと、お母さん。いびきがうるさいよ」
 娘に体を揺すられて目が覚める。夕食後、部屋に戻ってすぐに、私はベッドで大の字になり寝てしまった。夫と娘はテレビの推理ドラマを見ていたようだ。死体が見つかったところで「ガガゴゴー」。新たな事実が判明したところで「グオオオ~」。うるさくて聞こえず、たまりかねて起こしたらしい。ケーキの天罰が下ったのであろう。
「さて、お母さんも起きたし温泉に行こうか」
「行こう行こう」
 女湯はほんの20m先にある。近いしオシャレだし湯音も絶妙。最高に気持ちよかったばかりか、お肌もツルツルになった。
 翌日も雨。樹木すら霞んでしまうほどの濃霧が立ち込めている。相変わらず芦ノ湖は見えないし、ホテルの茶色い屋根すら、輪郭がぼんやり浮かぶだけだ。



 こんな景色を目にするのは初めてではないか。
「雨降って地固まる」ところから始まった結婚生活は、銀婚式で「五里霧中」となった。この先、判断に困り途方に暮れるような難題が待っているのかもしれない。
 でも、霧はやがて消え失せる。慌てず焦らず、「雲の中にいるみたいで楽しいね」と図太く構えよう。好機は必ずやってくる。
 霞んだホテルの写真を撮り、成川美術館で芸術作品を愛でたあと、箱根湯本駅に向かった。お土産と駅弁を買ってロマンスカーに乗り込む。
 五年後は真珠婚式。雨や霧は卒業し、雷だったりして。
 さあて、記念旅行はどこにしましょう。


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国立新美術館「ミュシャ展」

2017年04月16日 21時05分08秒 | エッセイ
 30年来の友人から「ミュシャ展」のチケットをもらった。



 国立新美術館で開催されていることは知っていたが、2013年に森アーツセンターギャラリーでの展示を見ていたから、今回はスルーするつもりでいた。(「ミュシャ展 あと2週間」はこちらから)
 しかし、今回の展示は、リトグラフ中心の前回とは、まったく違うようだ。
「晩年の精魂込めた油彩画の大作が初公開されています」
 友人のメールを見て、「ほおお」と俄然興味を持った。
 ミュシャという名前はフランス語読みだ。華麗なアールヌーボー代表にふさわしく、チャラい……もとい、軽快な印象を受ける。


  (リーフレットより)
 だが、50歳で故郷のモラヴィアに帰ってからは、まったく画風の異なるメッセージ性の強い絵を描いている。6m×8mといったサイズも多く、相当な大きさだ。ここでは、チェコ語読みのムハという名前で表記されており、骨太な響きがピッタリであると思った。
 たとえば、リーフレットやチケットの顔となっているこの絵。



 スラヴ叙事詩「原故郷のスラヴ民族」というタイトルがついている。隅から隅まで丁寧に描き込まれているので、絵の前に5分はいた。巨大なカンヴァスを選んだ理由を、「等身大の大人や子どもを描きたかったからでしょう」と評する知識人もいたが、私は「絵に閉じ込めた想いに、奥行きと広がりが必要だったから」ではないかといいう気がした。遠近感を生かしたアングルに、人々や動物の表情、動作などをこまかく描き分け、風景や建物には陰影をつけたりスポットライトを当てたりして、全力で絵を完成させている。どの作品も素晴らしい。
 一番長く見ていた絵は、スラヴ叙事詩「スラヴ式典礼の導入」である。


        
 輪を持っている青年は、とてもきれいな腰ひもをつけている。巫女の男版なのかもしれない。中央の明るさとは対照的に、逆光となり、影ができているところも好きだ。
 タイトルにも解説にも、カタカナが多くて泣かされた。たとえば、「ニコラ・シュビッチ・ズリンスキーによるシゲットの対トルコ防衛」などと言うタイトルを見ても頭に入らない。たどたどしく読むので精一杯となり、意味を理解するなんてとてもとても。解説も同様で、疲れた頭には難し過ぎた。途中からは絵だけを見て、心で感じることにした。
 撮影可能エリアには、5つの作品が並んでいる。人の切れ目を狙って、「エイヤッ」とシャッターを切ってみた。
「イヴァンチツェの兄弟団学校」



 前列左から4人目が、若き日のムハだそうだ。インテリジェンスでイケメンではないか。
「スラヴ菩提樹の下で行われるオムラジナ会の誓い」



 これは「未完成」となっているが、どこを描き足すつもりだったのだろう。
「独立のための闘い」というコーナーには、チェコの郵便切手と紙幣がある。「金だ金だ」と顔を近づけると、ムハが無報酬でデザインしたと書かれており、国家の役に立ちたいという想いが伝わってきた。
 ほとばしる郷土愛を感じたまま、レストランでミュシャ展特別ディナーをいただいた。



 料理はもちろん美味しかったし、ワインも3杯いただいた。
 アルコールよりも、残りの人生を故郷に捧げたムハの情熱と、素晴らしいチケットをもらった自分の幸運に酔った。
 友人よ、ありがとう。


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服は生協かイッセイミヤケ

2017年04月13日 20時17分13秒 | エッセイ
 タンスの中の半分以上が、生協で買った服かもしれない。
 生協は手軽で便利だ。カタログを見ながら、肉や牛乳と同じ注文書にブラウスなどの商品番号を書き、翌週届くのを待つだけ。サイズが豊富で7号があるし、綿100%のものも多く、価格の安さが魅力である。厚手のタートルが1900円台、ブーツカットのパンツが2900円台であれば、ためしに買ってみるかという気にもなる。ときには、チクチクするセーターや、イヤな臭いのするチュニックがあるけれど、返品票に記入して注文書と一緒に回収してもらえば、お金が返ってくるから安心だ。
 やれ、お買い上げ額5000円未満は送料600円いただきますだの、やれ、返品・交換はできませんだのと、融通の利かないことは言わない。裏起毛のチノパンは真冬に大活躍し、グレーのパンツスーツは3シーズン着ている。ただし、「それ素敵ね、どこで買ったの?」とお褒めの言葉をいただいたことはないし、縫製が雑、スナップの位置がずれているなんてこともあるのだが。
 小さな不満が重なると、大胆な行動につながるらしい。ある日、デパートをフラフラしていたら、はっと目を引くファッショナブルな服に出会った。イッセイミヤケだ。詳しくは「自分へのクリスマスプレゼント」や、「ボーナスが出た~!」をご覧になっていただきたい。どちらも着心地抜群で、薄手なのに暖かい。加えて、「面白い素材ね」とか「中はどうなっているの」などと興味を持ってもらえるところが気に入っている。
 卒業式前には、パリコレの商品も扱うという、イッセイミヤケに行ってみた。meやプリーツプリーズより遥かに高価なのだが、デザイン性の高さはピカイチだ。店員さんのおススメで、軽くて華やかな装いをコーディネートしてもらった。



 他にも、あれこれ欲しくなる。



 決して人目を引く服ばかりでなく、普段着として活躍してくれる服が欲しかった。



 誤算だったのは、私の買い物につき合っていただけの娘が「あら、このパンツいいじゃない」などと言い始めたことだ。店員さんは、ニッコリ笑顔で「着るだけでもどうぞ」と試着室に勧めてくれた。
 ところが、これが曲者なのだ。試着したら最後、柔らかな肌触りと体になじむ素材に離れがたくなり、どうしても欲しくなってしまう。
「ねえ~、これ買って。こんなにカッコよくて着心地のいい服持ってないよ」
 ……気持ちはよくわかる。結局、買ってやったのだが、私の分と合わせてカードの限度額ギリギリになってしまった。生協で節約している分を、一気に使い切った感じだ。
 でもまあ、死んだらお金は使えない。残したところで、ガッポリ相続税を取られるだけだ。だったら、シワシワのおばあちゃんになる前に、施設入居の資金だけは残して、好きな服を買うのもありだと思う。
 浪費しているうちに、イッセイミヤケに慣れてきた。ちょっと遠いけれど、買うなら横浜そごうに限る。ここには、me、プリーツプリーズ、イッセイミヤケの3店舗が揃っているし、限定商品も並ぶ旗艦店だそうだ。セゾンのポイントがたまるところも外せない。地元の池袋店とは劇的に品揃えが違うので、遠出するだけの価値はある。
 嘘だと思った方は、一度行かれて、試着してみてはいかが?


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江川る、斜める、アマリリス

2017年04月09日 21時48分49秒 | エッセイ
「江川る」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
 この言葉は、元プロ野球選手の江川卓氏が、巨人軍に入団するまでに大きな騒動を起こしたことから、「強引に自分の意見を押し通す。物事を強引に進める。ゴリ押し」といった意味を持つ。当時、私は小学生か中学生だった。江川騒動には興味がなかったけれど、「こんな言葉が通用するのか」という点に驚いた。
 実際、「斜める」という言葉はよく使う。決して正しいとは思わないが、イメージが伝わりやすくて便利だ。
 たとえば、わが家のアマリリス。



 日の当たる方向に伸びていくので、真っ直ぐにならない。「傾いている」と表現するのが正しいのかもしれない。でも、「斜めっている」と表現するのがピッタリな気がするのだ。まさに、ピサの斜塔状態。
 このアマリリスは、前後左右4面に花が咲く。通常であれば、12時の方向、3時の方向、6時の方向、9時の方向に咲くのだろうが、こちらも日差しを求めて成長するから、いびつな形になっている。



 11時の方向、12時の方向、2時の方向、4時の方向と、思い切り偏ってしまった。
 それでも、咲いた花はきれいだ。



 ピンクに次いで、白のアマリリスも咲く。こちらは、多少、日当たりを改善したので、斜めった茎が途中から真っ直ぐになっている。



 この種類は5面に花を咲かせるのだが、やはり均等ではない。



 それでも、美人、美人。





 自分の子は可愛い。
 来年はもっと可愛くなるよう、植木鉢を定期的に回して、日当たりを均等にしてやらねば。
 ところで、「安倍る」という言葉もあるそうだ。検索すると、「アサヒる」「小沢る」なども出てきたけれど、どうも新鮮味がなくていけない。
 私も今年は大台に乗るのだから、「斜める」から卒業して、清く正しく美しい言葉づかいをしようっと。


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カマキリ屋敷

2017年04月06日 21時59分42秒 | エッセイ
 視界に入っていても、見落とすものがある。
 先日、久しぶりに庭を散策したとき、それにようやく気がついた。
「あれっ、これって、カマキリの卵なのでは……」
 1階の応接間の出窓に、楕円形の膨らみができている。



「やっぱりそうだ。いつの間に」
 今は4月である。カマキリが冬を越すとは思えないから、11月あたりに産み付けたものだろう。5カ月も気づかないとは何事か。
「たしか、前にもここに産んでいたような気が……」
 気のせいではなかった。卵の周辺には、去年やその前にも産卵の形跡が残っている。



 親から教わるわけでもないのに、なぜカマキリは同じ場所に卵を産むのだろう。とたんに興味が湧いてきた。パソコンに「カマキリの卵 同じ場所」と入力し、検索してみる。ヒットしたサイトはいくつもあり、「毎年同じ場所に、カマキリが卵を産んでいきます」といった内容が書かれていた。日当たりがよくて、外敵の少ない場所を選ぶと、毎年同じような場所になるのではないかという分析には「うんうん」と強く同意する。
 わが家の応接間は日当たり抜群である。本など置いておこうものなら、ひと月足らずで色が褪せる。加えて人通りが少ない。蜂もいない。何でも、オナガアシブトコバチという蜂は、カマキリの卵に自分の卵を産みつけるものだから、幼虫はカマキリの卵を食べて育つのだとか。悪どいヤツである。
 さらに調べてみると、卵の形状からカマキリの種類がわかるらしい。ヒメカマキリ、ヒナカマキリ、ウスバカマキリ、コカマキリなどの卵が並んで表示されているサイトがあった。
「うーん、どれも違うみたいだな」
 私が一番好きなのは、オオカマキリだ。しかし、これも違っていた。
「あっ、ハラビロカマキリだって。これだ」
 ハラビロカマキリの卵は、木の幹や家の壁などで見られるという。色が濃くてツヤがあり、突起が特徴だから間違いないだろう。


  (wikipediaより)
 ついでに、うちの夫は、ハラビロニンゲンである。肩幅や腰よりも腹の方が太い。類は友を呼ぶというから、カマキリも安心するのかもしれない。
 孵化するのは、4月から5月らしい。
 そういえば、近所でカマキリを見かけることが何度かあったが、うちの庭から巣立った子ではないか。今年も、来年も、再来年も、カマキリだらけになることを期待して、卵を守ってやらねば。
 カマキリ屋敷にしたいので、カマキリ嫌いな人はご遠慮ください。


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