寝ている姿は、誰にも見られたくない。
中3の修学旅行では、2日目の朝、同じ部屋の友達にからかわれた。
「あたしたち、2時まで起きてしゃべってたんだ。そしたら、暗闇からギジッギシッて気味の悪い音が聞こえてきたから、思い切って電気をつけてみたら……」
私が下あごを左右に動かし、歯ぎしりをしていたのだという。
居合わせた誰もが笑った。私だけは苦笑いだった……。
10代の頃は、歯ぎしりがひどかったらしい。私自身はまったく知らないけれども、一緒に寝ていた妹からは毎日のように苦情が寄せられた。
「大体はキュッキュッて音が聞こえてくるんだよ。ギリギリってときもあるし、昨日はカチカチだった。毎日毎日うるさいんだよ。もう、いい加減にして!」
本人だってやめたいのだが、寝ているときの行動には責任がとれない。かくして、二段ベッドの上で寝ている妹は、毎晩、下から聞こえる歯ぎしりの音に悩まされた。
しかし、妹は泣き寝入りするタマではない。
「始まってすぐに『うるさいっ』て怒鳴れば、ほとんどの場合は収まるね。それでも聞こえるときはこれで……」
出てきたものは長い竹尺だった。彼女はこれをベッドに忍ばせ、歯ぎしりをやめない私をビシビシ叩き、やめさせていたのだった……。
20代になると、歯ぎしりをしなくなったようだ。
大学生のとき、サークル合宿で伊豆に行った。酔っぱらった私は眠くなり、みんなが起きている隣でさっさと寝てしまったのだが……。
「『ねるとん』を見ていたのに、砂希ちゃんのイビキがすごくて聞こえなかったんだよ」
翌朝、友人に指摘されても信じられなかった。
「イビキ?! 言われたことないよ。歯ぎしりはしてなかった?」
「してなかったよ」
飲んだから、たまたまだろうと高をくくっていた。
結婚してからも夫にイビキを指摘されたことはないが、彼は遠慮していただけなのかもしれない。
30代前半のころから、朝起きると喉がヒリヒリすることが続いた。風邪かと思っていたのに、遠慮をしない娘から衝撃の事実を知らされた。
「ママは夜中にイビキかいてうるさいよ! ガーガー言ってるから喉が痛いんだよ」
なんと!!!!!
確かに毎晩飲んではいるけれども、そんなにやかましいとは知らなかった。夫と違って、娘は騒々しい私に容赦しない。
「ママのイビキで目が覚めちゃったから、やめさせようとして起こしたのに、全然起きないんだよ。しょうがないから蹴ったら静かになった」
悪びれもせず、さらりと言ってのける。道理で、体にアザができているわけだ。
娘の安眠のためにも何とかしなくてはと焦ったものの、仕事が忙しいことを言い訳にして結局何もしなかった。
そして、迎えた30代後半……。
「ママ、昨日はイビキの合間に歯ぎしりしてたよ! ギリギリ、ガー、ギリギリ、ガーって今までで一番うるさかった!」
あああ……。ついにここまで来たか! こうなりゃ、もうヤケだ。
「すごいね! そんなこと出来る人、ママくらいしかいないよ! 友達に自慢できるよ」
「そんなこと、恥ずかしくて言えるわけないでしょ!」
ムキになって反論する娘を放置して、私は真剣に「どうにかせねば」と考え出したが、浮かんでくるのは歌のフレーズばかりだった。
♪試練は続く~よ~、ど~こまで~も~♪
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中3の修学旅行では、2日目の朝、同じ部屋の友達にからかわれた。
「あたしたち、2時まで起きてしゃべってたんだ。そしたら、暗闇からギジッギシッて気味の悪い音が聞こえてきたから、思い切って電気をつけてみたら……」
私が下あごを左右に動かし、歯ぎしりをしていたのだという。
居合わせた誰もが笑った。私だけは苦笑いだった……。
10代の頃は、歯ぎしりがひどかったらしい。私自身はまったく知らないけれども、一緒に寝ていた妹からは毎日のように苦情が寄せられた。
「大体はキュッキュッて音が聞こえてくるんだよ。ギリギリってときもあるし、昨日はカチカチだった。毎日毎日うるさいんだよ。もう、いい加減にして!」
本人だってやめたいのだが、寝ているときの行動には責任がとれない。かくして、二段ベッドの上で寝ている妹は、毎晩、下から聞こえる歯ぎしりの音に悩まされた。
しかし、妹は泣き寝入りするタマではない。
「始まってすぐに『うるさいっ』て怒鳴れば、ほとんどの場合は収まるね。それでも聞こえるときはこれで……」
出てきたものは長い竹尺だった。彼女はこれをベッドに忍ばせ、歯ぎしりをやめない私をビシビシ叩き、やめさせていたのだった……。
20代になると、歯ぎしりをしなくなったようだ。
大学生のとき、サークル合宿で伊豆に行った。酔っぱらった私は眠くなり、みんなが起きている隣でさっさと寝てしまったのだが……。
「『ねるとん』を見ていたのに、砂希ちゃんのイビキがすごくて聞こえなかったんだよ」
翌朝、友人に指摘されても信じられなかった。
「イビキ?! 言われたことないよ。歯ぎしりはしてなかった?」
「してなかったよ」
飲んだから、たまたまだろうと高をくくっていた。
結婚してからも夫にイビキを指摘されたことはないが、彼は遠慮していただけなのかもしれない。
30代前半のころから、朝起きると喉がヒリヒリすることが続いた。風邪かと思っていたのに、遠慮をしない娘から衝撃の事実を知らされた。
「ママは夜中にイビキかいてうるさいよ! ガーガー言ってるから喉が痛いんだよ」
なんと!!!!!
確かに毎晩飲んではいるけれども、そんなにやかましいとは知らなかった。夫と違って、娘は騒々しい私に容赦しない。
「ママのイビキで目が覚めちゃったから、やめさせようとして起こしたのに、全然起きないんだよ。しょうがないから蹴ったら静かになった」
悪びれもせず、さらりと言ってのける。道理で、体にアザができているわけだ。
娘の安眠のためにも何とかしなくてはと焦ったものの、仕事が忙しいことを言い訳にして結局何もしなかった。
そして、迎えた30代後半……。
「ママ、昨日はイビキの合間に歯ぎしりしてたよ! ギリギリ、ガー、ギリギリ、ガーって今までで一番うるさかった!」
あああ……。ついにここまで来たか! こうなりゃ、もうヤケだ。
「すごいね! そんなこと出来る人、ママくらいしかいないよ! 友達に自慢できるよ」
「そんなこと、恥ずかしくて言えるわけないでしょ!」
ムキになって反論する娘を放置して、私は真剣に「どうにかせねば」と考え出したが、浮かんでくるのは歌のフレーズばかりだった。
♪試練は続く~よ~、ど~こまで~も~♪
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いや~、しかし、「ギリギリ、ガー」事件は忘れられないね
今となればおかしな思い出だけど、うるさかったなぁ
・・・母イビキ・・・
今夜もあります?
夜中にどついて起こすのはやめてくれ~。
絵文字を上手に使ったね~。
母は面倒くさくて、滅多に使いませんが…。