隠岐諸島のひとつ、海士町には、公立の大きな図書館がない。そこで、「本を読むことを通して、こどもたちの心や国語力をはぐくんでもらい、それをたしかな学力へつなげてもらいたい」ことを目標に、一昨年から『島まるごと図書館構想』をスタートさせたという。
これは、学校の図書室を使いやすく改良したり、港の待合所などに図書コーナーを設置したり、公民館の蔵書数を増やすなどの工夫を凝らすことで、いろいろな本と出会う機会を増やすというものである。
地元に住む私の友人は、この取り組みを紹介する冊子を編集している。
島のこどもたちの詩や作文・俳句を集めたり、島外の知人に短編や書評、短歌を依頼したりして、原稿を調達したらしい。
かくいう私も、エッセイの寄稿を頼まれたので、大喜びで一大イベントに参加させていただいた。
「砂希先生、図書館冊子が出来上がりましたので送ります」
先日、彼女からこんな連絡を受け、念願の完成品を手にすることができた。
題して『この島の、本棚から。』
ページをめくると、小学生の作品がズラリと並んでいる。私は読書感想文のひとつに目を留めた。
『片耳の大シカを読んで』
これは私も読んだことがある。児童動物文学のパイオニア、椋鳩十の作品は、小学生のときにほとんど読みつくしたものだ。
かつて、猟師の鉄砲で片耳を失ったシカのリーダーが、再度猟師に追われる。猟師たちは大シカを捕らえることができないばかりか、激しい雨に見舞われ、ほうほうの体で洞穴に逃げ込む。しかし、そこには先ほど捕らえ損ねたシカの群れがいたのだった。シカは逃げたり襲ったりせず、静かに猟師たちを迎え入れた。彼らはずぶ濡れになって凍えた体を、シカたちの毛皮で温め、命拾いをしたという話である。
「いい本を読んでくれた」と思い、私はうれしくなった。『島まるごと図書館構想』バンザイだ。
娘のミキは、残念ながらこれを読んでいないが、題名だけは知っている。まだ、小学生のときのことだ。
「お母さん、『片耳の大シカ』っていう本、読んだことある?」
「あるある。いい話だよ」
「この前、隣の席の子が読んでいたんだけどさ、本の表紙に黒いシミがついていたの。ちょうど『大』の右上あたり」
「シミが?」
「だから、『片耳の犬シカ』だと思ってビックリした~!」
「はははっ、どういうシカだよ~!!」
そりゃまた、うまい具合に汚れたものだ。さらに、ミキは続ける。
「もし、このシミが『大』の下にあったら、片耳の太シカだね!」
今、ミキは中学生になってしまったけれども、1952年に文部大臣奨励賞を受賞したこの名作を、何としても読ませたくなった……。
海士町は、後鳥羽院が流罪となった地でもある。
私も流されたいわぁ……。
海辺でのんびり本を読み、まったり暮らしてみたい。
楽しんでいただけましたか? クリックしてくださるとウレシイです♪
※姉妹ブログ 「いとをかし」 へは、こちらからどうぞ^^(5/25更新)
これは、学校の図書室を使いやすく改良したり、港の待合所などに図書コーナーを設置したり、公民館の蔵書数を増やすなどの工夫を凝らすことで、いろいろな本と出会う機会を増やすというものである。
地元に住む私の友人は、この取り組みを紹介する冊子を編集している。
島のこどもたちの詩や作文・俳句を集めたり、島外の知人に短編や書評、短歌を依頼したりして、原稿を調達したらしい。
かくいう私も、エッセイの寄稿を頼まれたので、大喜びで一大イベントに参加させていただいた。
「砂希先生、図書館冊子が出来上がりましたので送ります」
先日、彼女からこんな連絡を受け、念願の完成品を手にすることができた。
題して『この島の、本棚から。』
ページをめくると、小学生の作品がズラリと並んでいる。私は読書感想文のひとつに目を留めた。
『片耳の大シカを読んで』
これは私も読んだことがある。児童動物文学のパイオニア、椋鳩十の作品は、小学生のときにほとんど読みつくしたものだ。
かつて、猟師の鉄砲で片耳を失ったシカのリーダーが、再度猟師に追われる。猟師たちは大シカを捕らえることができないばかりか、激しい雨に見舞われ、ほうほうの体で洞穴に逃げ込む。しかし、そこには先ほど捕らえ損ねたシカの群れがいたのだった。シカは逃げたり襲ったりせず、静かに猟師たちを迎え入れた。彼らはずぶ濡れになって凍えた体を、シカたちの毛皮で温め、命拾いをしたという話である。
「いい本を読んでくれた」と思い、私はうれしくなった。『島まるごと図書館構想』バンザイだ。
娘のミキは、残念ながらこれを読んでいないが、題名だけは知っている。まだ、小学生のときのことだ。
「お母さん、『片耳の大シカ』っていう本、読んだことある?」
「あるある。いい話だよ」
「この前、隣の席の子が読んでいたんだけどさ、本の表紙に黒いシミがついていたの。ちょうど『大』の右上あたり」
「シミが?」
「だから、『片耳の犬シカ』だと思ってビックリした~!」
「はははっ、どういうシカだよ~!!」
そりゃまた、うまい具合に汚れたものだ。さらに、ミキは続ける。
「もし、このシミが『大』の下にあったら、片耳の太シカだね!」
今、ミキは中学生になってしまったけれども、1952年に文部大臣奨励賞を受賞したこの名作を、何としても読ませたくなった……。
海士町は、後鳥羽院が流罪となった地でもある。
私も流されたいわぁ……。
海辺でのんびり本を読み、まったり暮らしてみたい。
楽しんでいただけましたか? クリックしてくださるとウレシイです♪
※姉妹ブログ 「いとをかし」 へは、こちらからどうぞ^^(5/25更新)
次号の発行に向けて、また忙しくなりますね。
図書館のよさは、売れない本や流通していない本など、本屋さんでは手に入らないものが読めるところにあると思います。
ベストセラーの順番待ちなんてナンセンス!!
幅広い蔵書になるといいですね。
私もご主人と同様、フェリーに2回乗る新婚旅行は拒否すると思います(笑)
かなはなさん、『片耳の大シカ』、ぜひ読ませてくださいね。
動物が好きな子どもだったら、絶対椋鳩十にはまると思います。
読書も、作家との相性ですからね。
気の合う作家の本は、強制されなくても読みたくなるものではないかしら。
それが見つかる子と、見つからない子の違いなのかもしれませんね。
ちなみに、ウチの娘は、推理小説だったら一生懸命読みます。
だいたい本って人から強制されるもんではないのわかってますが、自分が小さい時本に夢中だったので、正直自分の子はどうして読書の習慣ないのか落ち込みます。。。
片耳の大シカ、ね。
覚えときますよ。
ひとが良いって言ってくださるのは、読みたいですぅ
エッセイに書いていただき、ありがとうございます!
わたしも、ほかの島に行ったらぼぉ~っとしたいです。
地元だと、知り合いの方とかに会ったら時候のあいさつとかしないといけませんので、外を歩くときでもあまり気が抜けないのです。
新婚旅行先の候補に、五島列島の小値賀島があったのですが、主人には『フェリーに二回も乗るのヤダよ。』と言われ却下されました。
本を読むということは、作家の心に触れることではないかと思います。
作家の考えや想いが伝わってきて、「なんていい発想なんだろう」と感心したり、共感したりしますもの。
いわば、本を媒介に、作者と出会っているんですよね。
「また会いたい」と感じる作家が増えるといいなぁ。
最近読んでいないけど、続きはどうなったのかしら。
人造人間……私は読まなかったなぁ。残念。
寄生虫の本があればいいのにね(笑)
私は昔話が好きで、よく読みましたね。
日本のはもちろん、外国の昔話が面白かったです。
読み逃げは全然気にしませんよ。
じゃんじゃん遊びに来てくださーい!
私も読ませてもらいましたが、ショートショートというジャンルに惹かれましたね。
特に、未来の社会を描いた話が印象に残っています。
睡眠中の人が入ったカプセルが自動で電車に搭載され、移動途中に目覚めるようになっていて、車内で身支度を整えたころに下車、なんて内容でした。
ぜひ実現してほしいなぁ。
『行くところ何でもアリ』は800字から1200字でまとめてあるので、コンパクトなんですよ。
表現はやや堅いかも……。
ご愛読ありがとうございます(笑)
美子さん、それは間違いなく『片耳の大シカ』でしょうね。
椋氏の作品は『マヤの一生』のように、哀しい話もあるのですが、これは希望があっていいと思います。
新見南吉さんも読みましたよ!
かぶってますね~、さすが姉妹(笑)
私は読んでない本10冊と、見てないDVD20本と、イケメン5人と一緒に流されたいです☆
恩田陸の『夜のピクニック』で登場人物のひとりが、従兄弟から本を贈ってもらったその時になぜ読まなかったのだろうと後悔している件があります。
「従兄弟が選んでくれた順番に、素直に読んでおけば、この本は絶対に大事な本になって、今の自分を作るための何かになったはずだったんだ。」
本を読むってホント大事なことだと思います。
その「出会い」でその後の人生が変わってしまうくらいに・・・。
僕は映画・ドラマ・アニメの原作やノベライズ的なものが多いのですが、それでも今の自分に影響してるだろうなあ・・・って思います。
島まるごと図書館構想、素敵です。
私のいた小学校でも、本の読み聞かせなどがありました。
そう思うとちょっとは考えてくれてたのかも…
でも私は小学生のころは、図書室にある変なのしか読んでませんでした。ドラキュラとか、人造人間とか(笑)
それは今も変わりませんが。
ところで、家のパソコンがおかしかったらしく、ずっとコメントができず読み逃げしてました。すみません(´・ω・`)
ひっかかりましたよ♪ 心が☆
1952年ですか・・兄の教科書にあって きかされたのににてます。今 題名と一致しました、たくさんのぬくぬくした獣にあっためてもらうんですよね。兄は「これ よくない?」みたいな感じで 二人で いいな いいなと想像してました!新見南吉さんの「おじいさんのランプ」とかいうのも なんともいえずせつな ~なのですよね。本っていいな~すきな本5冊 まだよんでない本50冊くらいと イケメンとともに 流されたいです~♪ だめ?
「行くところ 何でもアリ」でしたね。
by笹木砂希
(笑)
面白いので思わず一気に読みきりました。今の砂希さんの文章と少し違いますが、両方共好きですね。
ディズニーはまだ出版されていませんでした。
年代の差を感じますね~。
努力すれば自分にもできるかもしれない、という気持ちは大切ですよね。
実現するかどうかはともかく…。
ウチには福沢諭吉の伝記がありますが、誰も読みません(笑)
あれは、お札で見るものですよね!
ジョバンニさんって、本をたくさん読む子どもだったのではないでしょうか。
B型は好きなことには没頭しますよね。
私は、図書の時間だけ一心不乱に読み、あとは漫画ばっかりでした。
文学少女だったのでは?と決めつけられることもありますが、全然違います~。
とりあえず、字が読めてよかった(笑)
図書館構想いいですね
自分も小学校のころ、好きなジャンルの本は
全部読んでましたね
本に触れ合えるのは
いい事です
自分もまったり流されたいです・・・
小学生のときはあんまり物語りは読みませんでした。。エジソンとかディズニーの伝記ばっかりでした☆この二人は勘違いでオレにもできるかもと思わせてくれるあたりがにくいです(笑)
中学か高校のときに読んだ辻仁成さんのミラクル!?だったかな~!あと山田詠美さんのひよこの目がすっごく感動したの覚えてます♪
両方とも教科書でしたけど(笑)