※ このエッセイには、テレビ放映された怖い話のエピソードが含まれていますのでご注意ください。
私の母は、原付で10分くらいの場所にある眼科で、長年受付事務という仕事をしていた。
話は、20年ほど前にさかのぼる。
私たち3人娘がまだ中高生だった頃、夏休みの間だけは、母が12時から1時半までの昼休みに、昼食を作るため家に戻ってきた。
これはなかなか骨だったようだ。汗びっしょりになって帰ってきて、娘たちには食事をさせたあと、すぐにとんぼ返りをするのだから、母は些細なことでイライラしていた。
たとえば、家に着いたとき、玄関の鍵が開いていないと怒り出す。
「昼休みが短いんだから、気を利かせて開けておいてよ!!」となるのだ。
他にも、朝食で使った食器が片づいていないと、かんしゃくを起こす。
「何で洗っておかないのよっ!!」と、ガミガミガミガミ小言を聞かされる羽目になる。
夏休みの楽しみといえば、某テレビで放映される怖い話だった。正午から始まるワイドショーで、特定の期間のみ、読者から寄せられた恐怖体験などを特集していたのだ。
娘3人も母も、この手の番組が好きだったので、欠かさず見たおぼえがある。
怒りっぽい母も、これを見ているときはおとなしくなり、「こんなことがあるんだね~」などと不思議がっていた。
一番印象に残っているのは、オフコースの『YES-YES-YES』にまつわる話である。司会の男性が、神妙な面持ちで重々しく語り始めた。
「この曲には、コンサート会場に行く途中で事故死した、女性ファンの声が入っているというんです」
ちょうど、その日は母の帰りが遅かった。午前の診察が長引くと、その分昼休みが短くなり、母の機嫌がさらに悪くなるから注意が必要だ。私は時計をチラリと見て、時間を確認した。
司会者は、さらに声を落としてささやいた。
「そして、この声を聞いた人の多くが、金縛りにあっているのです……」
「ええっ!!」
テレビに釘付けだった私たちは、仰天して顔を見合わせた。これまで、怖い話はいくつも見たり聞いたりしたが、金縛りにあうというものは初めてだ。
一体、どんな声なんだろう……。
ドキドキしながら次を待っていたら、外で「バリバリバリ」という原付のエンジン音がとどろいた。母が帰ってきたのだ。
何でこんなときに!!
鍵を開けて出迎えないと、またヒステリックにわめき出すと予想がついた。
しっしかし、テレビが……。
「では、再生、スタート!」
司会者がお構いなしに進めるので、姉も妹も動く気配ゼロだ。霊の声は聞きたいが、母の怒鳴り声は聞きたくない。こうなったら、さっさと鍵を開けに行き、一刻も早く戻るしかない。
私はダッシュで玄関に向かい、鍵を開けて母を出迎えたあと、大あわてでリビングに戻った。が、一歩遅かったようだ。
画面には、ゲストが恐怖に震える様子が映っていた。
姉と妹は、「こわ~ッ!!」と悲鳴をあげて抱き合っていた。
やがて画面はコマーシャルに変わり、私は肝心要の場面を見逃したのだと悟った。
姉と妹が静かになったので、私は説明を求めた。
「……どうだった?」
「すごーく、怖かったよ~」
「『私にも聞かせて』って聞こえたんだよ!!」
二人は思い出したように、「ひーッ」と叫んでつけ加えた。
「こんなに怖いんだったら、聞かない方がよかった!!」
その夜からしばらくの間、姉と妹は並んで寝るようになった。
「一人じゃ怖くて眠れない!」のだと言う。
「一人で眠れる」私は、運がよかったのか悪かったのか、いまだにわからない……。
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※姉妹ブログ 「いとをかし」 へは、こちらからどうぞ^^(7/19更新)
私の母は、原付で10分くらいの場所にある眼科で、長年受付事務という仕事をしていた。
話は、20年ほど前にさかのぼる。
私たち3人娘がまだ中高生だった頃、夏休みの間だけは、母が12時から1時半までの昼休みに、昼食を作るため家に戻ってきた。
これはなかなか骨だったようだ。汗びっしょりになって帰ってきて、娘たちには食事をさせたあと、すぐにとんぼ返りをするのだから、母は些細なことでイライラしていた。
たとえば、家に着いたとき、玄関の鍵が開いていないと怒り出す。
「昼休みが短いんだから、気を利かせて開けておいてよ!!」となるのだ。
他にも、朝食で使った食器が片づいていないと、かんしゃくを起こす。
「何で洗っておかないのよっ!!」と、ガミガミガミガミ小言を聞かされる羽目になる。
夏休みの楽しみといえば、某テレビで放映される怖い話だった。正午から始まるワイドショーで、特定の期間のみ、読者から寄せられた恐怖体験などを特集していたのだ。
娘3人も母も、この手の番組が好きだったので、欠かさず見たおぼえがある。
怒りっぽい母も、これを見ているときはおとなしくなり、「こんなことがあるんだね~」などと不思議がっていた。
一番印象に残っているのは、オフコースの『YES-YES-YES』にまつわる話である。司会の男性が、神妙な面持ちで重々しく語り始めた。
「この曲には、コンサート会場に行く途中で事故死した、女性ファンの声が入っているというんです」
ちょうど、その日は母の帰りが遅かった。午前の診察が長引くと、その分昼休みが短くなり、母の機嫌がさらに悪くなるから注意が必要だ。私は時計をチラリと見て、時間を確認した。
司会者は、さらに声を落としてささやいた。
「そして、この声を聞いた人の多くが、金縛りにあっているのです……」
「ええっ!!」
テレビに釘付けだった私たちは、仰天して顔を見合わせた。これまで、怖い話はいくつも見たり聞いたりしたが、金縛りにあうというものは初めてだ。
一体、どんな声なんだろう……。
ドキドキしながら次を待っていたら、外で「バリバリバリ」という原付のエンジン音がとどろいた。母が帰ってきたのだ。
何でこんなときに!!
鍵を開けて出迎えないと、またヒステリックにわめき出すと予想がついた。
しっしかし、テレビが……。
「では、再生、スタート!」
司会者がお構いなしに進めるので、姉も妹も動く気配ゼロだ。霊の声は聞きたいが、母の怒鳴り声は聞きたくない。こうなったら、さっさと鍵を開けに行き、一刻も早く戻るしかない。
私はダッシュで玄関に向かい、鍵を開けて母を出迎えたあと、大あわてでリビングに戻った。が、一歩遅かったようだ。
画面には、ゲストが恐怖に震える様子が映っていた。
姉と妹は、「こわ~ッ!!」と悲鳴をあげて抱き合っていた。
やがて画面はコマーシャルに変わり、私は肝心要の場面を見逃したのだと悟った。
姉と妹が静かになったので、私は説明を求めた。
「……どうだった?」
「すごーく、怖かったよ~」
「『私にも聞かせて』って聞こえたんだよ!!」
二人は思い出したように、「ひーッ」と叫んでつけ加えた。
「こんなに怖いんだったら、聞かない方がよかった!!」
その夜からしばらくの間、姉と妹は並んで寝るようになった。
「一人じゃ怖くて眠れない!」のだと言う。
「一人で眠れる」私は、運がよかったのか悪かったのか、いまだにわからない……。
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そんなのありましたね!
今日は1人で寝ましょうね。
懐かしい~…
怖くて怖くて仕方なかったです(i_i)
いまも、怖い話はニガテです。
以前、夜中に故人の話を書いていたら、ラップ音が鳴りました。
電気が消えるっていうシチュエーションが一番嫌いですね。
いつも宵っ張りの私ですが、今日のネタはお昼ご飯のあとに書きましたよ。
屏風に描かれた生首の目ですか…
え~ん、意地悪~~
もう忘れてしまいましたが、こんな風に声が聴こえるレコード(CD)は結構沢山あると紹介していましたね。怖~い〓
寝る前にちゃんとトイレに行っておこうっと。(笑)
姉と妹は一週間ほど一緒に寝ていましたが、暑さに堪えかねて、ある晩姉が私に助けを求めてきました。
「奈津(妹の名前)を移動させたいんだけど、足のほう持ってくれる?」
姉は一人で涼しく寝たかったのです。
ガーガー眠っている妹を、姉と2人で一生懸命運びました。
重かったなあ。
結局、2人は金縛りにあわなかったようです。
ネットで検索すると、「万華鏡」も出てきました。
「あれはやらせ」と切り捨てる意見もありましたし。
妹の記憶によると、「YES-YES-YES」は、最初に録音したテープだけに金縛り効果があると言っていたとか何とか。
残念ながら、聞けませんでしたので……。
純さん、また夜中に起きて日記を書くんでしょ~!
怖かったのは、旦那と怖い漫画を読んでて色々話してた時。円盤型の照明のフタ(下から押し上げてガチッと2~3ヶ所はめるタイプ)がいきなり落ちてガラガラ転がった時は二人で固まりました。そんな簡単にハズれる物じゃないのにねぇ…。
怖かったのは、すっぴんの自分……。
私の記憶装置は相当ボロくなったようで、途切れ途切れにしか思い出せない……。
それにしても、照明のフタはヤバイね。
普通は外してもなかなか取れないし、そんなタイミングで落ちてくるはずないでしょ。
でも、そのあと、「ほら、直してちょうだい」とか言って、旦那に戻させたんじゃないの?
使う、使う(笑)