冬は缶コーヒーの美味しい季節。
「僕は出勤前に、公園で温かい缶コーヒーを飲むのが楽しみなんです」
同僚の山本さんの、ささやかな喜びだそうだ。男性は女性よりも、缶コーヒーを好む傾向があると感じる。
私は缶コーヒーをほとんど飲まない。あれには砂糖がたくさん入っているし、微糖や無糖は美味しくない。やはり、きちんと豆からいれたブラックでないと。
そういえば、やたらと缶コーヒーが好きな人がいたな……。
ちょうど今くらいの季節だった。まだ子供もいなかった20代の半ば、私は前の前の勤務校で、女子バレーボール部の顧問をしていた。
実は、バレーボールは全然得意でない。生徒に教えるのはOBである建設会社勤務のコーチで、私はもっぱら球ひろいをしていた。
このコーチは、もうじき40歳を迎える2児の父だった。高田さんという名前で、いつも缶コーヒーを何本も持ってやってくる。練習前にゴクゴク、休憩中にガブガブ、練習後にグビグビといった具合だ。
せっかくの日曜日でも、試合があれば会場に駆けつけて、ベンチ入りしてくれる熱心な指導者だったけれども、缶コーヒーばかり飲んでいては体に悪い。たまには別の飲み物にすればいいのにと思っていた。
ある日曜日、たまたま試合が2時頃に終わった。
「乗っていきませんか? 今日は寒いし、この時間なら道路が空いていますよ」
高田さんは車で来ていたので、同じ方向の私に乗っていくよう促した。お言葉に甘えて、同乗させてもらうことにした。
見ると、フロントガラス内側のドリンクホルダーにも、飲みかけの缶コーヒーが置いてある。
私は内心、「ここにまである」とあきれた。
ところが、この缶コーヒー、意外なことに相当な暴れん坊だった。
彼が赤信号でブレーキをかけたら、飲み残しのコーヒーが勢いよく飲み口から噴き出して、フロントガラスにかかったのだ。
バシャッ!
まるで泥水のような液体がフロントガラスを流れ落ち、ダッシュボードにたまる様は実に汚らしい。私はビックリ仰天した。
一回ならまだしも、高田さんがブレーキを踏むたびに、それは何度も繰り返された。
キキッ、バシャッ、キキッ、バシャッ。
しかし、高田さんは一向に気にする様子もなく平然としている。
信じられない、きったなーい!!
私がぼう然とダッシュボードの水たまりを凝視していたら、高田さんに気づかれた。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ、別に……」
乗せてもらってケチをつけるわけにもいかない。私は言葉を濁して目を逸らした。
少し走ったところで、信号が赤になった。高田さんは車を止めると、運転席のドアを開け、急いで外に走っていった。
何? 何が起きたの??
見ると、彼は自動販売機の前にいた。何かを買って信号が変わる前に、走って運転席に戻ってきた。
「はい、どうぞ」
彼は温かい缶コーヒーを私に手渡した。
いつまでも握っていたい温かさなのに、私の心は凍りついた。
ちがーう!! 欲しくて見ていたわけじゃないっっ!!
お気に召したら、クリックしてくださいませ♪
※姉妹ブログ 「いとをかし」 へは、こちらからどうぞ^^
「僕は出勤前に、公園で温かい缶コーヒーを飲むのが楽しみなんです」
同僚の山本さんの、ささやかな喜びだそうだ。男性は女性よりも、缶コーヒーを好む傾向があると感じる。
私は缶コーヒーをほとんど飲まない。あれには砂糖がたくさん入っているし、微糖や無糖は美味しくない。やはり、きちんと豆からいれたブラックでないと。
そういえば、やたらと缶コーヒーが好きな人がいたな……。
ちょうど今くらいの季節だった。まだ子供もいなかった20代の半ば、私は前の前の勤務校で、女子バレーボール部の顧問をしていた。
実は、バレーボールは全然得意でない。生徒に教えるのはOBである建設会社勤務のコーチで、私はもっぱら球ひろいをしていた。
このコーチは、もうじき40歳を迎える2児の父だった。高田さんという名前で、いつも缶コーヒーを何本も持ってやってくる。練習前にゴクゴク、休憩中にガブガブ、練習後にグビグビといった具合だ。
せっかくの日曜日でも、試合があれば会場に駆けつけて、ベンチ入りしてくれる熱心な指導者だったけれども、缶コーヒーばかり飲んでいては体に悪い。たまには別の飲み物にすればいいのにと思っていた。
ある日曜日、たまたま試合が2時頃に終わった。
「乗っていきませんか? 今日は寒いし、この時間なら道路が空いていますよ」
高田さんは車で来ていたので、同じ方向の私に乗っていくよう促した。お言葉に甘えて、同乗させてもらうことにした。
見ると、フロントガラス内側のドリンクホルダーにも、飲みかけの缶コーヒーが置いてある。
私は内心、「ここにまである」とあきれた。
ところが、この缶コーヒー、意外なことに相当な暴れん坊だった。
彼が赤信号でブレーキをかけたら、飲み残しのコーヒーが勢いよく飲み口から噴き出して、フロントガラスにかかったのだ。
バシャッ!
まるで泥水のような液体がフロントガラスを流れ落ち、ダッシュボードにたまる様は実に汚らしい。私はビックリ仰天した。
一回ならまだしも、高田さんがブレーキを踏むたびに、それは何度も繰り返された。
キキッ、バシャッ、キキッ、バシャッ。
しかし、高田さんは一向に気にする様子もなく平然としている。
信じられない、きったなーい!!
私がぼう然とダッシュボードの水たまりを凝視していたら、高田さんに気づかれた。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ、別に……」
乗せてもらってケチをつけるわけにもいかない。私は言葉を濁して目を逸らした。
少し走ったところで、信号が赤になった。高田さんは車を止めると、運転席のドアを開け、急いで外に走っていった。
何? 何が起きたの??
見ると、彼は自動販売機の前にいた。何かを買って信号が変わる前に、走って運転席に戻ってきた。
「はい、どうぞ」
彼は温かい缶コーヒーを私に手渡した。
いつまでも握っていたい温かさなのに、私の心は凍りついた。
ちがーう!! 欲しくて見ていたわけじゃないっっ!!
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私の母もコーラが大好きです。
駅のホームなどで飲んでいる人がいると、じっと見ているので恥ずかしくなります。
でも、メアドにcolaは入っていませんね。
今度勧めてみます
でそのもらったコーヒーはありがたく、飲んだんでしょうね?
初めて、ブログなるものにコメントさせていただきます。
どきどきです。
何だか、内容に対しては。。。いつも読みやすく、楽しみです
でわ、心臓が飛び出ないうちに~失礼します。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
すみませんごあいさつおくれてしまって。へへへ
まさにトミーリージョーンズですね。高田さん。
おもろいおっさんだこと。
自分もコーヒーは好きですが、ここまでは・・・なれない。てかなりたくない?(笑)
十二指腸潰瘍やってからコーヒー控えるようにしてます。おいしいんですけどね
体に気をつけて飲まれるようお伝えくださいませ
とんでもない勘違いとはいえ、ご好意ですもの。
顔が引きつっていたと思いますが、「ありがとうございます…」とお礼も言って。
「別にアタシはいりませんから」な~んて反応は子供じみていますよね。
ゆっちんさん、まだ心臓がバクバクしちゃってますか?
中国のことわざに「万事起頭難」というものがあるそうです。
何事も最初は難しいという意味になります。
慣れれば余裕ですよ! またよろしくお願いします。
早速お仕事でしたか? 家族サービスというか、社長サービスもあるから大変ですよね。
高田家にはまだまだ面白いエピソードがあるんですよ。
そのひとつ、奥様も旧姓高田なんです。つまり、結婚式は新郎が高田○○、新婦も高田△△となり、同じ苗字同士がくっついています。
同じ苗字は結婚できないというジンクスを見事に打ち破りました!!
って、離婚していないだろうなぁ…。
今日は夫とふたりで笑いながら読みましたよ~
うちの夫も缶コーヒー&コーラ好きですよ
どこかに出かけると、必ずと言っていいほど
買って飲む~
しっかし、そんなにバシャバシャこぼれるなんて
高田さんの運転はよっぽど荒いんでしょうか?
それともコーヒーが並々と入っていたのかしらん?
砂希さんが無事で何よりです(笑)
加えてコーヒーもほとんど口をつけていない状態だったようです。
ここには書きませんでしたが、彼は運転の合間にこぼれた缶コーヒーに手を伸ばし、普通に飲んでいました。
何も感じないのっ
確かに缶コーヒーは男性というイメージがあります
てか、女性はホットのお茶が大半です
私は会社勤めのころは
缶コーヒー4、5本飲んでましたが
今は無理して起きなくてもいいので
飲みませんね
職場に来るとしゃきっとするので(笑)