自宅から2kmほど離れた場所に、シネマコンプレックスがある。
たいていの映画は、ここで上映されるので便利だ。しかし、土日やレディースデーには長蛇の列ができ、チケットを買うまでに時間がかかる。
私は待たされるのがイヤだ。チケットは2日前から購入できるから、なるべく前日までに買うようにしている。
「ねえ、今度の日曜日、『君に届け』見に行かない?」
その日、部活が休みの娘が誘ってきた。映画は『告白』以来、見ていない。たまには映画館に足を運ぶのもよさそうだ。私は二つ返事で承諾した。
日曜日の映画なら、土曜日にチケットを買おう。娘は留守だが、私ひとりで行けばいい。夕方、紫外線が弱くなった頃に出掛ければ、日焼けもしないし窓口も空いている。
「『君に届け』の割引券があるよ」
コミックを買ったとき、中に挟まっていたチラシに、「一律200円割引券」というものがついていたそうだ。
一般なら、入場料1800円だから、わずか11%の割引きに過ぎないが、小中学生の入場料1000円に対しては、20%の割引きとなる。あながちバカにできない。
2人分で400円も安くなることを考えると、「一枚でお一人様の割引き」なのも頷ける。
大して見たい映画でもないので、安いに越したことはない。私は割引券2枚をしっかとバッグに入れ、昨日の夕方、チケットを買いに出掛けた。
「おかえり~、買ってきたよ!」
部活から帰った娘に、鼻高々でチケットを見せた。しかし、娘は「ハッ」と息を呑み、目をまん丸にしている。
「2枚買っちゃったの?」
「うん。何で?」
「ミキは、前売り持ってるって言ったじゃない」
「ええっ、聞いてないよ!!」
何と、娘は、自分の分だけ前売り券を買っていたのだった……。
知っているだろうと思っていた娘と、すっかり忘れていた私の行き違いである。先ほどまで膨らんでいた「お得感」が、見る見るうちにしぼんでいく。安くすんだと思っていたのに、実は高くついていたのだ。
しかし、ここで挫けてはいけない。気を取り直して、娘にささやいた。
「誰か、友達に売ったら?」
「うん、そうする。明日みんなにメールしてみるよ」
映画館は、ティーンエイジャーの女の子で賑わっていた。男性はゼロである。母親とおぼしき女性も、私ともう一人くらいで、極端な年齢構成だ。スクリーンには、少女受けしそうな見栄えのする男女が、幼い恋愛を繰り広げている。
懐かしかったり、もどかしかったりと、自分の高校時代を思い出して見た。
スタッフロールが流れるや否や、行儀の悪い女の子集団がゾロゾロと去っていく。だが、このあと、また映像が流れるのだ。館内に照明がつくまで、席を立ってはいけない。
「面白かったね」
娘は満足そうだ。レストランに行き、そのままランチになだれ込んだ。
待ち時間に「誰か前売り券買って」とメールしたらしい。OKの返事を待っていたが、世の中、そんなに甘くない。
「ダメだよ、みんな、いらないって」
「値段は? 安くするって言ったの?」
「ううん」
小中学生の前売り券は800円である。700円くらいで交渉すれば、また違った結果になったかもしれないのだが……。
いやいや。ここはひとつ、一律200円割引きでどうだろう。
『君に届け』小中学生前売り券が1枚あります!
全国どこでも使えます!
600円でいかがですか~!?
早い者勝ちですよっ☆
楽しんでいただけましたか? クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
たいていの映画は、ここで上映されるので便利だ。しかし、土日やレディースデーには長蛇の列ができ、チケットを買うまでに時間がかかる。
私は待たされるのがイヤだ。チケットは2日前から購入できるから、なるべく前日までに買うようにしている。
「ねえ、今度の日曜日、『君に届け』見に行かない?」
その日、部活が休みの娘が誘ってきた。映画は『告白』以来、見ていない。たまには映画館に足を運ぶのもよさそうだ。私は二つ返事で承諾した。
日曜日の映画なら、土曜日にチケットを買おう。娘は留守だが、私ひとりで行けばいい。夕方、紫外線が弱くなった頃に出掛ければ、日焼けもしないし窓口も空いている。
「『君に届け』の割引券があるよ」
コミックを買ったとき、中に挟まっていたチラシに、「一律200円割引券」というものがついていたそうだ。
一般なら、入場料1800円だから、わずか11%の割引きに過ぎないが、小中学生の入場料1000円に対しては、20%の割引きとなる。あながちバカにできない。
2人分で400円も安くなることを考えると、「一枚でお一人様の割引き」なのも頷ける。
大して見たい映画でもないので、安いに越したことはない。私は割引券2枚をしっかとバッグに入れ、昨日の夕方、チケットを買いに出掛けた。
「おかえり~、買ってきたよ!」
部活から帰った娘に、鼻高々でチケットを見せた。しかし、娘は「ハッ」と息を呑み、目をまん丸にしている。
「2枚買っちゃったの?」
「うん。何で?」
「ミキは、前売り持ってるって言ったじゃない」
「ええっ、聞いてないよ!!」
何と、娘は、自分の分だけ前売り券を買っていたのだった……。
知っているだろうと思っていた娘と、すっかり忘れていた私の行き違いである。先ほどまで膨らんでいた「お得感」が、見る見るうちにしぼんでいく。安くすんだと思っていたのに、実は高くついていたのだ。
しかし、ここで挫けてはいけない。気を取り直して、娘にささやいた。
「誰か、友達に売ったら?」
「うん、そうする。明日みんなにメールしてみるよ」
映画館は、ティーンエイジャーの女の子で賑わっていた。男性はゼロである。母親とおぼしき女性も、私ともう一人くらいで、極端な年齢構成だ。スクリーンには、少女受けしそうな見栄えのする男女が、幼い恋愛を繰り広げている。
懐かしかったり、もどかしかったりと、自分の高校時代を思い出して見た。
スタッフロールが流れるや否や、行儀の悪い女の子集団がゾロゾロと去っていく。だが、このあと、また映像が流れるのだ。館内に照明がつくまで、席を立ってはいけない。
「面白かったね」
娘は満足そうだ。レストランに行き、そのままランチになだれ込んだ。
待ち時間に「誰か前売り券買って」とメールしたらしい。OKの返事を待っていたが、世の中、そんなに甘くない。
「ダメだよ、みんな、いらないって」
「値段は? 安くするって言ったの?」
「ううん」
小中学生の前売り券は800円である。700円くらいで交渉すれば、また違った結果になったかもしれないのだが……。
いやいや。ここはひとつ、一律200円割引きでどうだろう。
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