これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

火種キティちゃん

2009年01月22日 19時51分30秒 | エッセイ
 ついつい、出窓の張り出しに物を重ねる癖がある。通販のカタログ、本、郵便物などを片づけていると、小さな袋が見つかった。
 中には「木更津限定 あさりキティ」と書かれたボールペンが入っていた。
 私はため息をついた。またミキの仕業だ。

 小6の娘は、ご当地キティが大好きで、どこか出掛けるたびに「買って買って」とねだる。
 下田・金目鯛キティ、宇都宮・ギョーザキティ、日光・眠り猫キティ、箱根・寄木細工キティなどなど、数え上げたら切りがない。
 それなのに、手に入れた時点で満足してしまうようで、家に着いたら無頓着に放り出し、袋から出しもせずに知らん顔……。
 私は、床に転がったままの土産袋を見て、ずいぶん叱ったものだ。
「大事にしないのなら、もう買ってあげないよ!」
 しかし敵もさるもの。
「じゃあ、自分で買うからいいよ。お金あるし」
 生意気なことに、口ごたえで応戦する。
「まったく、可愛くない子になっちゃって。誰に似たんだろう」
 私がブツブツ文句を言うと、夫がこちらをチラリと見た。

 そんなやりとりが繰り返されてきたものだから、今日こそは厳しく言わなければと思ったわけだ。義母の部屋へ遊びに行ったミキが戻ってくると、私は早速ボールペンの入った土産袋を突きつけ言った。
「ほら、これ見てみなさい。またほっぽらかしてあったんだからね」
 ミキは一瞬「しまった」という顔をしたが、中を確認したとたん、大きな声で反論しはじめた。
「これ、ミキが移動教室のときに、お母さんにお土産で買ってあげたんじゃない!」
「え?」
「ひどいよ! 忘れたの?」
「……もらったっけ?」
「あげたよ!! 忘れたの? 何よ、こんなにホコリだらけにしちゃって。どうせまた、ブログ書くのに夢中になって、上の空で聞いてたんでしょ!」
 あああ、耳が痛い~。
「せっかく、ミキのお金で買ってあげたのに。もうあげないからね!」
 そっそれは、私が言うはずだったのに……。
 こてんぱんにやられて、私はすごすごと引き上げた。汚れた袋を開けて、あさりキティのボールペンを取り出してみる。キティとミミィの姉妹が、ピンクのあさりにちょこんと納まり、穏やかな顔でこちらを見ていた。

 メモ用紙に試し書きをしてみると、思いのほか書きづらい。わざわざミキの近くまで行き、余計なことをささやいた。
「これ、あさりが重くて書きにくい」
「あっそ。文句あるなら、使わなくていいよ」
 第二ラウンド開始である。
 また夫がこちらをチラリと見た。



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コメント (12)
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