これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

鉄男で山男がブルガリを

2009年01月04日 15時12分25秒 | エッセイ
 鉄道マニアの男性を「鉄男」と呼ぶらしい。
 姉の夫はまさに「鉄男」で、大手鉄道会社に勤めるエンジニアだ。
 ときどきは登山を楽しむ「山男」でもあるが、日焼けを嫌う姉は、日傘を差して山登りするわけにもいかず、決して一緒に行かないと聞く。
 その鉄男で山男の義兄が、新年会でおしゃれな焼き菓子をくれた。
「ハイ、これ……」
 手の平サイズの小さなお菓子を差し出され、私はお礼を言って受け取った。よく見ると、包装されたリボンには「BVLGARI」という文字が書かれていた。



 私はビックリして義兄に聞いた。
「え~、これブルガリじゃないですか!! すごーい! 珍しー!」
 義兄は少しだけ笑い、何もコメントせずに帰っていった。このあと、彼の実家の新年会に出るため、急いでいたのだ。
 姉と義兄がいなくなり、疑問ばかりが残された。

 何しろ、義兄はすこぶる地味な人だから、ブランド物に興味があるとは思えない。その義兄が、よりによってブルガリだ。プロ野球選手がユニフォーム姿で、ローファーを履いているような違和感を覚えた。
 よく見ると妹や母の分はなく、私だけがブルガリをもらったらしい。やや気まずくなり、娘にあげようと思って向きを変えたら、底に貼ってあるラベルが見えた。
「品名 パネトーネ   賞味期限 2009年1月2日」

 なんだよ、今日じゃないか!!

 ますます謎は深まるばかり。義兄は一体どうして、賞味期限の迫ったブルガリのパネトーネを私だけにくれたのだろう??
 いくら考えてもわからないので、我慢できずに姉にメールを送ってみた。

 さっきもらったブルガリのパネトーネは、どこで買ったのかな? お義兄さんに聞いてみてくれる?

 ほどなく姉から返信がきた。

 あれはね、この間、ブルガリ銀座タワーの「イルバール」ってバーで一緒に飲んだとき、お土産にもらったの。私はすぐに食べちゃったけど、あっちは食べてなかったみたい。
 でも、みんなが集まる場所に1つだけ持ってくるのはやめてほしいわね。

 最後の一文にふき出した。
 接待される側の仕事をしている姉は、やけに銀座に詳しい。子供のいない夫婦だから、たまには二人で豪勢にと、地味な義兄を連れ出したというわけか。それなら納得できる。
 そういえば、クリスマスにウチでパーティーをしたとき、姉夫婦も呼んだから、義兄はお礼のつもりで持ってきたのかもしれない。
 勉強ができてエリート街道を歩いてきた義兄だけれども、人づき合いのセンスに関しては平均点以下という気がした。

 ま、大事なのは気持ちだけどね!

 真相がわかって気分がスッキリした。せっかくのブルガリだから、賞味期限が切れないうちに娘と半分こして食べてみた。
 さて、そのお味は……。
 スポンジケーキをスケートリンクにして、レーズンとオレンジピールが仲良くアイスダンスをしているようなハーモニーだった。これは、なかなか。

 ごちそうさまでした。



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コメント (18)
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