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1994年~1995年 (戦略論 1994-1999(ハーバード・ビジネス・レビュー))

2010-08-22 12:56:01 | 本と雑誌

 「ハーバード・ビジネス・レビュー」は、ハーバード・ビジネススクールの機関誌で、数多くの著名な論文を掲載してきました。本書は、それらの中から「戦略」に関する論文をピックアップして採録したものです。

 ここでは、それらの論文の前半、1994年~1995年のものから、私の興味を惹いたくだりを覚えとして書き記しておきます。

 まずは、第1章、H.ミンツバーグ教授の1994年の論文「戦略プランニングと戦略思考は異なる」より。

 
(p14より引用) 日常に存在する微細な事柄に無関心であってはならないのだ。そのようなことにみずから触れながら、そのなかから戦略的なメッセージを抽出できる人こそ戦略家たりえる。大きな絵も精緻な筆使いで描かれているものだ。

 
 「真実は細部に宿る」、と同時に「ビッグピクチャ」を描くこととのバランスの重要性も指摘しています。

 第2章、J.バウアー教授・C.クリステンセン教授らによる1995年の論文は、ベストセラー「イノベーションのジレンマ」に先立ち主要な論点を開陳しています。
 本論文がショッキングであった点は、従来当然のこととして優良企業が重視していた教義の、それに内在している陥穽を明らかにしたことです。それは、「顧客の声に耳を傾けることの限界」の指摘でした。

 
(p31より引用) 顧客の声に耳を傾け、彼らが要求する性能を備えた製品を提供したが、これら顧客が無視した技術によって、手痛いダメージを被ることになった。

 
 ここでのポイントは「顧客の声」の意味するところです。ここにいう「顧客」は「既存顧客」であり、そのニーズは「現在の延長線上のもの」だということです。そこから導き出されるひとつの教訓を、著者たちはこう記しています。

 
(p40より引用) 既存顧客のニーズには合致しない破壊的技術の将来性に注意することで、次の波に乗ることができるというものだ。

 
 この指摘は、ドラッカーが、「ノンカスタマー(非顧客=現在顧客でない顧客)」に目を向けよと説いている点と同根のものです。

 第4章、D.コリス教授・C.モンゴメリー教授らによる1995年の論文「リソース・ベースト・ビューの競争戦略」は、従来のポーター教授の競争優位の論に代表される「外部環境」重視の考え方と、プラハラッド教授らによるコア・コンピタンス論等の「企業内部」に競争優位を求める考え方とを結びつけるものだと説明されています。
 その際の留意点として1点、テイクノートです。

 
(p122より引用) 自社の重要資源を評価するに当たっては、外部の客観データに基づいて判断するよう、肝に銘じなければならない。しかし、コア・コンピタンスは直感的に判断されやすく、正しい答えに到達するうえで欠かせない綿密な調査や詳細な分析を怠る傾向が見られる。

 
 内部的視点のみで採用される安易な「コア・コンピタンス」論に対する重要な警鐘です。
 
 

戦略論 1994-1999 戦略論 1994-1999
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2010-05-14

 
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