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1998年~1999年 (戦略論 1994-1999(ハーバード・ビジネス・レビュー))

2010-08-26 21:47:06 | 本と雑誌

 「ハーバード・ビジネス・レビュー」からの「戦略」に関する論文のピックアップ。後半、1998年~1999年のものから、私の興味を惹いたくだりを覚えとして書き記しておきます。

 まずは第7章、M.グールド氏らの1998年の論文「シナジー幻想の罠」。この論文は、シナジー追求の流れに対して一歩立ち止まってみる冷静な視点を提起しています。

 
(p287より引用) 我々は「シナジーに懐疑的すぎる」と非難されることもある。・・・そのとおりだ。我々は、経営者が介入する場合、もっと慎重に機会を選択すべきだと考えている。あまりに多くの経営者が簡単にシナジーを実現できると考え、コラボレーションや共同作業を何の疑いもなく理想的な状態だと思い込んでいるからだ。

 
 そして、経営者がこのような考え方に陥る原因として、著者たちは以下のようなバイアスの存在を挙げています。

 
(p262より引用) 経営陣はシナジーの実現こそみずからの責務だと信じているため、四つの偏見に陥りやすい。第一は「シナジー・バイアス」でシナジーの効果を過大評価し、それにかかるコストを過小評価する傾向である。第二は「ペアレンティング・バイアス」で、自分が事業ユニットを協力するようおだてたり、反対にせっついたりしてやらないと、シナジーを実現できないという思い込みである。これに付随してもう一つ現れるのが第三の「スキル・バイアス」で、シナジーの実現に必要なノウハウはすべて社内調達できるという思い込みである。最後は「楽観バイアス」で、シナジーのもたらす潜在利益にばかり目がいき、機会コストなどのマイナス面を看過する傾向である。

 
 冷静に試算した際のメリットが小さいのであれば、シナジー追求には慎重になるべきだというアドバイスです。この指摘は私自身にも大きな反省を促すものですね。

 さて、最終の第8章は、D.サル教授の 1999年の論文「なぜ成功企業ほど低迷していくのか」。「成功体験の陥穽」をテーマにした論文です。

 
(p303より引用) リーディング・カンパニーにその成功の秘訣を尋ねると、口を揃えて、「他社と違う斬新な手法、たとえば戦略フレームワークや事業プロセス、リレーションシップ、価値観などを独自に組み合わせた結果だ」と主張している。・・・
 そのうち、この成功システムは硬直化し始める。・・・そして、ひとたび市場環境が変わると、ほかならぬ「成功のセオリー」が、皮肉なことに、その企業の首を絞めることになる。

 
 経営判断の拠り所だった「戦略フレームワーク」は「判断を曇らせる色眼鏡」に、効率化された「業務プロセス」は「マンネリズム」に、従業員・顧客・サプライヤとの良好な「リレーションシップ」は「しがらみ」に、事業ベクトルを合わせるための「価値観」は「教条主義」に一転してしまうのです。

 こういった成功体験の問題点の指摘も簡明で分りやすいのですが、その陥穽に陥らないようにする対策も現実的で、むしろそちらの方が新たな気づきになりました。

 
(p316より引用) もっとも、その愚かさから目が覚めても、早計に行動を起こしてはいけない。・・・何もかもいっきに変えてしまうと、かえって弊害が大きいと言うのだ。・・・ショック療法は、一歩誤れば致命的な副作用を生みかねない。

 
(p319より引用) それよりも、伝統と資産を大切にするほうが賢明である。改革の処方箋として、旧来の戦略のフレームワークや業務プロセス、リレーションシップ、価値観などを問い直すような号令をかけつつも、過去の素晴らしい遺産はそのまま活用すべきなのだ。

 
 サル教授は、「最大の敵は無為無策」という先入観は捨て去るべきだと説いています。

 
(p315より引用) やみくもに行動を起こしても、問題を解決できるわけではない。むしろ、むやみに動くと、かえって泥沼にはまることが多い。「どうしたものか」と浮き足立つのではなく、「何が問題だろうか」と冷静に分析することが大切だ。そうすれば、判断を狂わせている根源が見えてくる。

 
 まさに基本的動作です。
 
 

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