ちょっと旬は過ぎているのですが、久しぶりのウェルチ本です。
以前Blogで知り合ったtakekuraさんは、留学時代、本著出版直後のウェルチ氏に会ったそうです。
さて、この本ですが、ウェルチ氏がGEを辞めた後、世界各地での講演等で多く質問されたことを材料に、氏の経営の勘所を分かりやすく披瀝しているものです。
数々のおなじみのウェルチ氏の打ち手が登場しています。
まずは(あまり耳障りのいい単語ではありませんが、)「選別」です。
(p51より引用) 私の提唱するバリューで実際すごい効果を上げたものといえば、なんといっても選別だ。
よく知られているように、ウェルチ流の人事政策は、トップ20%、ミドル70%、ボトム10%を選別し、ボトム10%の社員を退職させるというものです。
ある時、この施策に対して、「この施策が有効なのはアメリカだけだ、他の国ではカルチャーが違うので機能しない」といった意見が出されました。それに対してウェルチ氏は、以下のようにコメントします。
(p64より引用) 選別のシステムを説明し、率直に評価する人事考課制度とリンクさせると、日本だって、オハイオ州と同じようにうまくいったのだ。
ウェルチ氏はサラッと言いますが、この前提がなかなか機能しないのです。
難しいところは、「選別そのもの」ではないのです。「選別」の前工程である「評価」が難しいのです。
ウェルチ自身も、各々の会社における人事評価制度の充実度について機会ごとに尋ねています。そして彼自身も、「(きちんとできていると思っているのは)よくて聴衆の20%、平均で10%くらいしかいなくて、有意義な評価システムができあがっている会社はごくごくわずかしかない」ということは認識しているのです。
さて、「選別」が有効に機能するための肝となる「評価システム」ですが、ウェルチは、よい評価システムのポイントとして、以下の点を挙げています。
- 明確ですっきりしていること
- 個人の成果に直接関連する、事前に合意を得た基準で評価すること
- マネージャーが部下に対して、インフォーマルな評価に加え、正式な人事考課面談を定期的に行うこと
さらに、この3点に加えて、最も重要なこととして、「それらのポイントが誠実に行われているかどうかを常にモニターしなくてはならない」と指摘しています。
誰もが納得する評価システムの構築は難しいものです。
システムそのものに加え、納得のプロセスとしてのコミュニケーションの深さ・真摯さが不可欠です。
さらに、何よりも大切なことは、一人一人のマネージャが「人事・育成」が自らの最重要業務だと認識して取り組むことだと思います。
(p142より引用) 会社は建物でも、機械でも、技術でもない。会社は人だ。
人を管理する以上に重要な仕事はあるだろうか?